癌と仕事
今や2人に1人が「がん」になると言われている時代。
最近では樹木希林(きき きりん)さんが全身がん、山本“KID”徳郁(やまもと“キッド”のりふみ)が消化器系のがんで亡くなりました。
お悔み申し上げます。
樹木希林さんの全身がんは医療用語ではなく、おそらく全身にがんが転移した状態をいったことと言われています。
また、山本“KID”徳郁さんは消化器系のがんと言われていますが、詳細は不明です。
しかし、がんが見つかった時点でステージⅣということでしたので、全身のどこかに転移はあったものと思われます。
お二人に共通していることが、樹木希林さんは亡くなる直前まで女優業を。
山本“KID”徳郁さんは、体調が悪くなってからは静養していたものの、総合格闘技からレスリングへと転向しオリンピック出場も目指していました。
そう、お二人とも仕事を行いながらがんと向きあっていました。
働くこと。
仕事が全てではないとも言いますが、食べていくためにお金は必要ですし、仕事のやりがいは生きる力を与えてくれます。
がんにかかってかかるお金については、次の記事もご覧ください。
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最近ではフリーランスという言葉もだいぶ普及していて、好きな事を仕事にしている方も多い現状があります。
仕事の意味はいろいろあると思いますが、がんと診断されたらどうすればいいのか。
どのように仕事と向きあっていけばいいのか。
その考え方を紹介します。
癌と診断されてすること
いきなりがんと診断されて冷静になれる人はいないと思います。
しかし、考えなければいけないことはたくさんあるので、まずは落ち着くことが大事です。
そして、落ち着いてきたら情報を整理してみてください。
- 治療に関すること
- 現在の仕事への希望や思い
- 職場の制度
- 社会環境に関すること
です。
そして、整理するために確認をしましょう。
医療機関に確認する5ポイント
- 治療中働くことはできるのか
- 今まで通り働けるのか
- 制限はあるのか
- 治療した際の副作用の対処法
- 他の治療法について
自分で考えるべき5ポイント
- 治療内容が仕事のスケジュールに影響するか
- 働き方を変えられるか、周りに同じような人がいるか
- 仕事を続けるために、見直せるところがあるか(仕事の量、ペース配分など)
- 働く権利と休む権利があること
- 仕事は精神的・経済的にどの程度大切か
職場に確認すべき5ポイント
- 私傷病休暇制度があるか
- 時短制度、フレックス勤務が可能か
- パートタイムなどへの変更が可能か
- 在宅勤務ができるか
- 職場に休憩室や医務室はあるか、利用できるか
癌と仕事:利用できる制度について
職場の就業規則や制度に関すること
職場の規則や制度などは、正直なところ普段確認したことがある人は少ないと思います。
ですので、そこは専門的な人事担当に問い合わせてみましょう。
がんだということを言いたくないという気持ちもわかりますが、時短や休暇をもらうためには申告したほうが取りやすいです。
入院の際に使える一般的な制度としては、年次有給休暇があります。
さらに私傷病給食制度がある場合は、それが利用できます。
職場によってはリフレッシュ休暇や積立休暇などもあります。
これを確認しておくと、治療や通院だけでなく、復職のスケジュールも具体的に考えることができようになります。
公的制度について
ご自身が加入している健康保険を再度確認してください。
また、どのような手続きが必要かも整理することが大切です。
がんなどの重い病気にかかった時に利用できる公的制度として、高額療養費や疾病手当金があります。
高額療養費
高額な医療費の負担を軽減する方法として、高額療養費の限度額適用認定証があります。
健康保険窓口で事前に申請すると、医療機関での窓口の支払いが一定以上増えずに済むという制度です。
事前に申請していなくても、後で払い戻し可能ですがかなりの大金になるため、事前申請をおススメします。
疾病手当金
国民健康保険以外の健康保険の場合は、疾病手当金という制度があります。
治療によって休んだことで減額された給料をカバーしてくれる制度です。
カバーしてくれる期間は、支給開始から最長で1年半です。
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癌治療を受けるに当たり確認しておくこと
医師に対していろいろ聞くことができない、聞きにくいという方は多いと思いますが、そこは遠慮せず。
日々進化している医療の中では、さまざまな選択肢もあり、それによってその後の見通しや働き方が変わってきます。
将来像をイメージしやすくするためにも、治療内容や副作用、後遺症について聞き、さらに一歩進んで副作用・後遺症はどの程度の期間で発生し、どんな対処法があるかまで聞くようにしましょう。
担当医に確認しておくこと
治療について
- 治療のスケジュール、頻度など
- 副作用とその期間、注意点
- 他の診療科の受診の必要性とその頻度
休職した場合は、復職のタイミングについてもおおよその時期を確認しましょう。
また、診断書に記入してもらう内容についても確認し、個人的に加入している保険がある場合には、保険会社に記入が必要な事項の確認も行いましょう。
担当医へ伝えること
自身が治療に対してどのような医師があるのかと、仕事に対してどのような希望を持っているかを伝えましょう。
実際の働き方(人前に出ることが多い、デスクワークが多いなど)についても、情報提供しましょう。
癌治療中の職場への伝え方
職場へ伝えることで、制度などは利用しやすい状況になりますが、必ずしもいい方向には進まず、働きずらい環境になる可能性もあります。
企業などは安全配慮の義務があります。
職場へは病名よりも、配慮してほしいことを伝えましょう。
伝えるべきタイミング
正解はありませんが、タイミングと内容は次のように整理されます。
治療前
- 休暇を必要とする期間
- 治療や検査のスケジュール
- 配慮事項
治療中
- 休暇期間
- お見舞いなどの可否
- 万が一の時の連絡先、手段
復職前
- 復職可能な時期、手続き
- 配慮事項の確認
- 病名を公表する範囲
復職後
- 勤務時間の調整
- 業務量の調整
癌治療で休職している間にできること
休職中もできる範囲内で、職場に状況や今後の見通しを定期的に報告しましょう。
ちょっとしたコミュニケーションも大切で、復職に向けて生活習慣を整えながら無理のない範囲で行いましょう。
休職期間が長い場合は、模擬出勤(出勤時間に起きて、外へ出る。無理のない範囲内で家の外で時間を過ごすなど)を行い体力の回復状況の確認もいいかもしれません。
そして、復職に向けて書類等の準備をしましょう。
復職をして、仕事と治療を無理せず行いたい
復職直後は頑張りすぎてしまいがちです。
まずは無理をせず、時間は短くとも継続的に働けるようにしましょう。
また、フレックス勤務や時短勤務、在宅勤務制度などがあれば有効活用することも重要です。
使える制度がないときは人事部と相談するのも一つの手です。
働くことが全てではありません。
今の時代、フリーランスという考え方もあったり働き方は多種多様です。
がん治療は長く続くこともあり、その都度考え方や価値観が変動します。
そのため、急いで決断せずに負担を軽減しつつ現在の生活や、仕事を長く続けられるように臨床心理士や緩和ケアチームと相談することもいい手段かもしれません。
癌と仕事
実際のがん治療において、利用できる制度や考え方についてまとめました。
一言でがんと言っても、部位や進行の度合いによって違いもあります。
今回の内容が全てではありませんし、生活環境や職場環境によっては実現が不可能なこともあるかと思います。
治療方法や制度もどんどん変化していく中で、この記事ががんになった際や、がん患者の家族としてサポートする際に、参考になれば幸いです。