師走に入り、一段と寒くなってきて冬本番。
寒さとともに、冬季の感染症の流行期もやってきます。
冬に流行する感染症の代表格である
- インフルエンザ
- ノロウイルス
今回はこの2大冬季感染症について、医療・介護施設と家庭での対策についてまとめました。
薬剤師目線:冬の感染症対策について
感染症の一番の問題は、ヒトからヒトへうつることだと思います(専門用語では伝播といいます)。
医療・介護施設でも家庭でもヒトからヒトへの感染は容易に起こり、時に医療・介護施設などでは面会制限や施設の閉鎖まで大きな問題となることがあります。
介護施設に関しては、現役の介護師さんのひまわりさんの記事が参考になります。ぜひご覧ください!
家庭では閉鎖空間の中で、かなり濃厚接触をするためヒトからヒトへうつりやすい状態でもあります。
インフルエンザ
インフルエンザの一般的な流行は、例年1月末ごろから3月上旬にかけてピークを迎えるといわれています。
インフルエンザについては、他の記事でも触れていますのでご興味があればご参照ください。
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年によって流行が早かったり、遅かったりしますが基本的にはインフルエンザA型が最初に流行し、後にインフルエンザB型が流行してくることが多いという特徴があります。
そのため、人によっては
「1年に2回インフルエンザにかかった」
なんて人も周りにいるかもしれません。
今年のインフルエンザのシーズンは、新薬であるゾフルーザの登場により治療薬の選択の幅が広がりました。
ゾフルーザの詳細は、下記の記事もご参照ください。
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基本的には、咳などによる飛沫感染によってヒトからヒトへうつりますが、感染者が触れたドアノブなどからうつる、接触感染もあります。
ノロウイルス
ノロウイルスは通常10月から2月ごろにかけて感染のシーズンが続きます。
ウイルスは、牡蠣やアサリなどの二枚貝に蓄積されたものを食べることによってヒトに感染します。
ただし、ノロウイルスの怖いところは少ないウイルス量でも感染が成立してしまうため、感染者の嘔吐物や排泄物からうつる二次感染のケースが非常に多い感染症です。
感染してしまうと、激しい下痢や嘔吐、腹痛があり、38度以上の発熱も伴います。
しかし、インフルエンザと違ってノロウイルスは食品関係の勤務者や小児、高齢者など一定の基準でないと検査を行いません。
基本的には他の胃腸炎と同様に診療されます。
感染者は症状が回復しても、その後1週間から1か月間、排泄物とともにウイルスが体外に出るといわれています。
医療・介護施設の感染症対策
医療施設といっても、病院や特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など様々な施設があります。
ですが、基本的な感染症対策としてやることに差はあまりありません。
ここでは、どの施設でも行える対策について広く記載します。
季節性の感染症への対策は、
- 流行前
- 流行期
- 流行後
のそれぞれに分けて対策を組む必要があります。
各施設において、流行前に実施しておくべき主な対策は3つです。
- 職員に対する感染対策の注意喚起、対応策の再確認
- インフルエンザワクチンの接種
- 必要物品の確認
職員に対する感染対策の注意喚起、対応策の再確認
冬の感染症対策として、職員への注意喚起や対応策の再確認を実施するのは、流行前の9~10月から始めるべきといわれています。
流行期になってから対策しても感染した患者や利用者への対応で手いっぱいになり、対処が遅れがちになってしまいます。
患者はもちろん職員を守るためにも事前の準備が必要です。
流行前に確認すべき対応策は、手指衛生などの基本的なこと(標準予防策)に加えて、かぜ症状の患者や利用者、面会者が来院した際の対応や、ノロウイルスを発症した患者が施設内で嘔吐した場合の対処法などが挙げられます。
事前に施設にあったマニ ュアルを作っておけば共有もしやすいと思います。
流行前のシミュレーション実施が効果的
ノロウイルスの感染者への備えとしては、嘔吐物処理セットの設置と使い方の確認があります。
できれば全職員で模擬吐物と処理セットを用いて練習しておくと、有事の時に迅速な対応もできると思います。
感染源の吐物を迅速に処理し、換気しながら次亜塩素酸ナトリウムで消毒する必要があります。
また、全ての職員に出勤可否のルールを徹底することも重要です。
37℃以上の発熱がある場合など、かぜ症状の有無を報告する体制を施設内で築き、難しいかもしれませんが、感染症を発症した職員が気兼ねなく休める環境をつくることも重要です。
個人の責任感から職員が無理して出勤することで、感染が拡大することもあります。
インフルエンザワクチンの接種
医療施設で働く医療関係者のワクチン接種は欠かせないものとなっています。
日本環境感染学会による医療関係者のためのワクチンGL第2版では、原則として毎年1回のインフルエンザワクチン接種が推奨されています。
必要物品の確認
流行前に準備する必要物品には、
- 咳症状がある患者や利用者、面会者にマスク着用を求める掲示物
- 職員や患者、利用者が着用するマスク、手指消毒剤、手袋
などがあります。
マスクは、近隣地域の感染症の発生動向調査などでインフルエンザの流行開始と報告された頃から終息まで着用し続けるとより予防効果が期待できます。
全職員が1日に1~2枚利用すると考えて、備蓄や供給ルートを確保することも大切です。
冬季は乾燥しやすいため加湿器を用いている医療機関もあるが、その場合はレジオネラ菌や緑膿菌の発生を防ぐため、水をためるタンクやフィルターを毎日洗い、乾燥させなければならない。
それができない場合は、患者や利用者の免疫状態を考慮して、加湿器の利用は避けることも考える必要があります。
職員発症時の対応
インフルエンザ発症時
職員が発症した場合は接触状況の確認が重要です。
事前に上記の対策を十分にしても、職員がインフルエンザに罹患することはあります。
発症した職員が気付かず患者や利用者と接していた場合は、接触状況とマスク着用の有無を確認する必要があります。
飛沫感染で広がるため、マスクを着用していれば感染拡大のリスクは低いと判断することができます。
糖尿病患者や免疫抑制剤服用中など感染リスクの高い患者には事情を説明し、抗インフルエンザ薬の予防内服を行うことを考える必要もあるかもしれません。
ノロウイルス感染時
ノロウイルスの感染経路は接触感染と飛沫感染が中心となります。
手指衛生を徹底すれば、基本的に患者や利用者への感染拡大のリスクは低いといわれています。
感染対策には感染経路を踏まえた対応が重要です。
家庭での感染対策
ここからは、家庭での感染対策についてです。
これは、なないろ日和という番組からの引用です。
感染対策といっても、家庭での対策のメインは予防するための部屋掃除が中心となります。
インフルエンザウイルスは室温20℃以下、湿度50%以下で活動が盛んになるといわれています。
外から持ち帰った潜在ウイルスが部屋のホコリに付着、ハウスダストで感染する危険もあります。
間違った掃除ではホコリは拭えません。
病気を予防する家庭内の環境を作るには、徹底的にホコリを除去することが必要です。
家の中の
- リビング
- トイレ
- 寝室
この3か所の掃除方法と部屋の環境づくりについて記載します。
リビング
リビングの基本的な掃除方法について。
冬季は掃除の時に窓を開けることはおススメしません。
なぜなら、外の汚れたものが入るのが理由です。
窓を開けるなら、掃除が終わった後がおススメです。
またエアコンの風でもホコリが舞うため掃除中はオフにすることがおススメです。
フローリングの掃除方法では、ウェットタイプのモップではウイルスや菌を塗り広げてしまうので、乾いたモップ・ドライシートの使用がおススメです。
また正しい拭き方としてモップの先頭が常に進む方向を向くこと、部屋の中央から端にかけて行うことが重要です。
掃除機で掃除をする場合は、ほこりが十分取れればモップなどは使用する必要はありません。
フローリングの白い汚れは人間の脂による汚れのことが多く、これには重曹水を用いるときれいに落とすことができます。
方法は、重曹水を床に吹きかけたら1分放置し、タオルに汚れを吸い付かせるように拭き取るというもの。
トイレ
実は部屋の中で一番ホコリが溜まる場所、それはトイレといわれています。
トイレットペーパーの繊維やチリ、衣類についたホコリ、ドアの隙間から侵入したホコリなどが理由です。
トイレ掃除する際は必ずゴム手袋を着用します。
トイレ掃除では順番が最も大事であり、最初に壁と床のホコリを取ります。
ガラス用のスクイージーを使って、 壁に当てて上から下に引いていきます。
床も壁と同じように行った後、続いて便器を掃除です。
便器に洗剤を噴霧して、2~3 分放置すると汚れを分解して落ちやすくなります。
ノロウイルスや胃腸炎の家族がいる場合、便器を直接磨くとブラシや容器が汚染されるため、ブラシにビニール袋を被せて使います。
掃除が終わったらブラシを抜き、袋を裏返して捨てます。
ホコリを溜めないこと、ブラシを汚さないことがトイレ掃除のポイント。
ノロウイルス対策としては、塩素系の漂白剤2mlを500~600mlの水で希釈し、便器、手すり、ドアノブなどを消毒します。
最後に掃除の後は手洗いを行いましょう。
寝室
寝室はトイレに次いでホコリが多いといわれています。
寝具は毎日取り替えるのが理想ですが、なかなかできないのも現状です。
取り替えられないときは枕周辺にタオルを敷き、毎日取り替えれば病気のリスクを軽減できます。
インフルエンザウイルスが活性化しにくいのは室温20℃以上、湿度50%以上の環境。
エアコンを使う場合はセットで加湿器を使用することが大切です。
湿度が上がりすぎるとカビやダニの温床となるので、湿度がコントロールできる加湿器がおススメです。
まとめ
医療施設と家庭での感染対策の方法について記載しました。
一つの考えとして、ご自身の施設やご家庭でアレンジしていただけると幸いです。
ちなみに、ウイルスの家庭での感染対策というと少し前に空間除菌という言葉がありました。
今でも発売はしているようですが、空間除菌で今回の感染症が予防できるか。
これに関しての詳細は、下記の記事をご参照ください。
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施設でも家庭でも感染症が拡大してからでは遅いです。
しっかりとした正しい知識を得て、感染症対策を行いましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
“冬の感染症対策:インフルエンザ、ノロウイルス~医療・介護施設から家庭まで~” への1件の返信