ワクチンのこれから:次世代ワクチン

病気の予防に重要なワクチン接種。

薬剤師の視点で世界のワクチン事情や新しいワクチン、また親の視点からワクチンについてきさいしていきます。

少し専門的な話になりますが、どうかお付き合いください。

病気の予防に重要なワクチンの知識入門

世界のワクチン5社と日本

現在、次世代ワクチン候補が続々と開発中されています。

米国研究製薬工業協会(PhRMA)によれば、米国で開発中のバイオ医薬品901剤(2011年)のうち、298剤はワクチン製剤であり、抗体医薬の300剤とほぼ同じ程度。

そのため、世界のワクチン市場規模は約2兆円(全医薬品の約 3%)から2023年には12兆円(1000億ドル)に成長すると見込まれています。

こんな内容ばかり書くとワクチンを金儲けのために、と言われてしまうかもしれませんが、そうではなくそれだけ必要とされているとご理解ください。

なお、2011年の世界市場はGSKやサノフィをはじめとする海外企業わずか5社で80%をシェアす
る独占状態であり、残念ながら国産ワクチンメーカーの存在は見る影もないのが実情です。

しかし、15年に開催された日本ワクチン学会のテーマは「オールジャパンでの新規ワクチン創製お
よび接種環境向上へむけて」
でありました。

日本がワクチン後進国(ワクチンギャップ)の段階からワクチン先進国へと舵を切ったターニングポイントでした。

次世代ワクチン開発のポイント

次世代ワクチン開発のポイントは以下の3つあります。

  1. 混合ワクチン
  2. 投与方法のイノベーション
  3. 製造法

1つ目は混合ワクチンについて

複数の感染症を予防(個人免疫)するとともに、接種率向上(集団免疫)を図ります。

そうすれば免疫不全や白血病などワクチン接種できない子どもたちも守ることができます。

また、通院回数が減るので母親の利便性が高まるばかりか、メーカーのコストも下がり、医療用廃棄物も減ります。

欧米(一部の途上国でさえも)は4~6種混合が主流となっています。

サノフィパスツールの5種混合 Penacel®(百日咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ、ヒブ)や6種混合(+B型肝炎)があれば母親も医師も非常に助かります。

あの複雑極まりない定期接種スケジュールをこなすのは一苦労だと思います。

経験したことある親御さんは、共感していただけるかと。

15年12月に発売された第一三共の百日せき、ジフテリア、破傷風及びポリオを予防する「スクエ
アキッズ(R)皮下注シリンジ
」は、DPT ワクチンとサノフィの不活化ポリオワクチン(ソークワクチン)をプレフィルドシリンジに充填した4種混合ワクチンです。

2つ目は投与方法のイノベーション(投与経路・デリバリー)。

(1)経鼻型・噴霧型ワクチン(粘膜免疫)

(2)針なしワクチンと皮内型ワクチン、経皮ワクチン

の2つが注目されています。

(1)は、既に米国で鼻腔噴霧インフルエンザ弱毒生ワクチン(メドイミューン社/英アストラゼネカ)
として使用が開始されています。

第一三共は15年9月、同剤の国内ライセンス契約を締結しました。

一方、国立感染症研究所は安全性が高い経鼻不活化インフルエンザワクチン(新型インフルエンザ)を開発中。

生ワクチンの適応とならない乳児や高齢者も使えます

粘膜ワクチンは体液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導できるため、感染症予防のための次世代ワクチンとして期待されています。

(2)では、米国のPharmaJet社の「針なしインフルエンザワクチン」(18 歳から 64 歳まで)の評価が高いです。

Safe(安全)Easy(簡単)Cost-Effective(コスト効率の高い)Comfortable(苦痛がない)の4つのメリットがあるといわれています。

一方、国内では第一三共とテルモが開発した皮内投与型インフルエンザワクチンがあります。

メリットは2点。

1つは、痛みが少ないこと。
皮下組織の末梢血管及び神経に対するリスクを低減されました。

もう1つは皮下や筋肉投与より免疫効果が高いこと。
皮膚上層部には樹状細胞が多いため、皮内用なら効率的抗原が送達され、従来の皮下に比べ有効性が高いといわれています。

3つ目は、製造法。

日本のワクチンは製造に時間がかかるといわれている鶏卵培養ですが、世界では臨機応変に生産
でできる細胞培養が主流です。
卵アレルギーがある場合。。といわれるのもこのためです。

日本でもパンデミックインフルエンザに備え、乳濁細胞培養インフルエンザHAワクチン(プロトタイプ)筋中用(武田薬品など)が承認されました。

水痘多価ワクチン(国産の次世代高付加価値ワクチン)

最後に、メーカーのワクチン開発では子を持つ母親の視点がますます重要になります。

その理由は二つあります。

一つは、乳児や子どもにとってワクチンがない感染症がまだたくさんあることです。

  • りんご病(伝染性紅斑)
  • 手足口病
  • ヘルパンギーナRSウイルス感染症
  • 突発性発疹
  • 乳児ボツリヌス症

あげるだけでもきりがありません。

もう一つの理由は、副反応を過剰に恐れているワクチン嫌いの母親は世界中にいることです。

裏返せば、日本を含む世界のワクチンメーカー(特に独占5社)にとって、最大の脅威は

母親の厳しい目―副反応(訴訟)や供給不足―であるともいえます。

その供給不足が日本で起きました。

15年12月時点で、化血研が製造するワクチン(日本脳炎、A型肝炎、B型肝炎)が不足しました。

同社のワクチン10製品と血液製剤12製品の不正製造が発覚して厚労省が行政処分(出荷自粛)されたためです。

ワクチンを製造/供給するには時間がかかる(鶏卵培養の場合)。

そのため、臨機応変に製造できる細胞培養が必要なのです。

子を持つ母親の視点

複数の感染症を予防できる水痘多価ワクチン(おたふくかぜ、麻疹、風疹抗原遺伝子含む)は、わが
国の期待の星になる可能性を秘めています。

言い換えれば、1 種類の生ワクチン接種で複数のウイルス抗原に対する免疫能が誘導され複数のウイルス感染に対する防御効果が期待できるワクチンです。

このワクチンは国が推進する次世代・感染症ワクチン・イノベーションプロジェクトが取り組む次世代高付加価値型ワクチンの 1 つで、世界から評価されている阪大微研(以下、ビケン)が開発した岡株水痘ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)をベースとした組換え多価ワクチン。

水痘ワクチンゲノムのクローン化を世界で初めて大腸菌内で行い、生ワクチンとして最適なベクターを選出した。

たしかに1回接種で終生免疫が獲得できる優れものだが、コスト高と組み換えウイルスの安全
性(倫理問題)の解決が今後の課題です。

子宮頸がんの予防には、ワクチンと検診の両方が必要

子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルスです。

性交渉を全くしない女性がいるとするなら、ワクチン接種や検診は子宮頸がんだけを考えれば必要ないのかもしれませんが、実際にそのような女性はなかなかいません。

今までに子宮頸がんワクチンについて、このブログの中でも触れてきました。

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ワクチン自体にも日本では9価のものが未承認であることや、副反応が少なからず起きてしまうといった解決すべき問題はまだ残っていますが、がんの予防としてのワクチンの必要性は変わりません。

国によっては、ワクチン接種を女性に限らず男性にも推奨している国もあります。

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しかし、ワクチンだけ接種していれば絶対子宮頸がんにならないわけではありません。

ワクチン接種とともに検診も受けることが重要と言われています。

がん検診の必要な年齢と利益

20 歳代では子宮頸がんの罹患率や死亡率が低く、子宮頸がん検診から得られる利益は相対的に小さいといわれています。

世界各国で子宮頸がん検診が行われていますが、各国の事情を反映して検診の開始年齢は違いがあります。

ですが共通して言えることは、最近ではどの国においても検診開始年齢が引き上げられているということです。

たとえばオーストラリアでは18歳から25歳に、ニュージーランドやスコットランドでは20歳から25歳に、それぞれ引き上げられました。

理由はいくつか考えられますが、一つはがん検診の利益と害について理解が進んだことがあるといわれています。

死亡率は低いとはいえ25歳未満の女性が子宮頸がんで亡くなることもあります。

がん検診とワクチン接種の必要性

検診自体の必ずしも無害なわけではありませんが、検診の害を容認し日本やアメリカ合衆国のように20~21歳から検診を開始するという方針も間違いではありません。

とくに日本では若い世代の子宮頸がん死が増加傾向にあるからなおさらです。

がん死を防ごうとすると検診の害が増え、検診の害を抑えようとすると検診で防げたかもしれないがん死が生じます。
ここにはジレンマがあります。

HPV ワクチンはジレンマを軽くできます。

残念ながら現在のワクチンは高リスクタイプのHPVが対象で、すべてのタイプのHPVの予防はできませんので、HPVワクチンを接種していても検診は必要です。

HPVワクチンを接種することで、子宮頸がんの罹患率・死亡率の減少が期待でき、検診開始年齢を引き上げることができます。

子宮頸がんの前がん病変

HPV ワクチンが前がん病変を減らすことは複数の研究で示されています。

検診で前がん病変が発見されば円錐切除術といった治療が必要になります。

進行した子宮頸がんの治療と比べると侵襲性は小さいですが、それでも治療自体が体の負担になりますし、早産や流産のリスクを増やします。

ワクチンが進行した子宮頸がんを減らすことはまだ証明されていませんが、前がん病変の治療に伴う負担やリスクを減らせることは証明されたといってもいいのかもしれません。

ワクチンと検診はセット

たまに

ワクチンを接種してもがん検診が必要ならワクチンは意味がない。検診だけやっていればいい

という意見がありますが、これには大きな誤解があることがわかると思います。

検診をするからワクチンはいらない

というのは、

シートベルトをするからエアバッグはいらない

というようなもの。

検診とワクチンの併用が子宮頸がん予防の両輪で、国際標準です。

検診にむけて

しかし、いきなり検診といっても様々な医療機関から自分にとって都合のいい検診先を見つけることは困難です。

特に子宮頸がんの検診が必要な年代の方々は、時間を作るのが難しいことも事実です。

インターネットを用いると色々なクリニックや病院が出てきますが、それらを網羅して予約できるサイトがあります。

ここでは子宮頸がんだけでなく、全身検索してくれる医療機関もあり、自分のニーズに合った検査が行えます。

かかりつけなどがある場合は別ですが、決まった場所がない場合などに活用いただければ幸いです。

はしか(麻疹)が全国で拡大中:ワクチン接種が重要

年明けから麻疹が全国的に拡大しています。

麻疹、いわゆる「はしか」と呼ばれるもの。

昨年から風疹の流行については、メディアなどでも取り上げられ今後ワクチンの助成制度が開始となる予定ですが、風疹だけでなく麻疹も急増しています。

過去の風疹については、下記の記事をご参照ください。

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麻疹(はしか)が全国的に拡大

国立感染症研究所の最新の集計では三重や大阪を中心に148人の感染者が報告され、既に昨年1年間の患者数の半数を超えています。

これは過去10年の間で最多ペースとなっています。

同じ空間に短い間いるだけで空気感染するなど、極めて感染力が強いのが特徴の麻疹。

集会や百貨店での集団感染も起きたほか、患者が新幹線で長距離を移動したことも発覚しました。

全国に広がる懸念もあり、 専門家はワクチン接種の徹底を呼び掛け

三重県の事例

津市では、昨年末開催の宗教団体の研修会に参加した10~20代の間で感染が広がり、三重県内で今年約50人の患者が報告されました。

そして三重県内ではなく、和歌山や愛知、岐阜にも飛び火しました。

この団体はワクチンを含めた医薬品利用に慎重で、参加した49人中24人が感染、そのうち20人はワクチンを接種していませんでした。

大阪市の事例

百貨店「あべのハルカス近鉄本店」では2月から、従業員や利用客約20人に感染が広がっています。

2月のバレンタインのシーズンで特設会場の販売者が感染していたことで、更なる拡大が危惧されていました。

さらに女性患者が8日と10日に新大阪―東京間の東海道新幹線を利用しており、車内で他の人にうつした可能性が指摘されています。

麻疹(はしか)

はしかは発熱やせき、発疹など風邪のような症状で見逃されやすい病気ですが、3割が肺炎や脳炎などの合併症を起こして最終的には死亡することもあります。

1 度感染すると免疫ができますが、感染経験がない人はマスクや手洗いでは予防が不十分であり感染する危険性があります。

唯一の予防法はワクチン接種

現在は1歳と小学校入学前の2回が定期接種化されていますが、20代後半~40代の年齢の人は感染を経験した人が少なくワクチン接種の機会は1回だけだったため免疫が不十分であり感染リスクが高いはざま世代と言われています。

国立感染症研究所が12日に発表した集計では、

  • 三重県49人
  • 大阪府43人

以上のほか、愛知、東京など 19の都道府県で報告されました。

患者の大半はワクチン未接種、または接種歴が不明の人たちです。

自分が過去にはしかにかかったことはありますか?

この問いに自信をもって答えられる人は、少ないと思います。

過去にかかったと思っていても他の病気だった可能性もあり、油断はできません。

接種記録がない場合、特に年齢が若い人ほど予防接種を積極的に行うことが重要です。

[aside type=”warning”]麻疹(はしか)
感染後約10日で発熱やせき、鼻水など風邪のような症状が現れた後、発疹や3 度以上の高熱が出る。
3割は肺炎や脳炎などの合併症になり、千人に1人の割合で死亡することがある。
1978 年から定期接種が始まり、予防接種を1 回することで95%、2回で99%以上の免疫を獲得できる。
現在は1歳と小学校入学前1年間の計2回に接種機会がある。
感染を経験した人が少なく、ワクチン接種機会が 1 回だった20代後半~40代は、感染リスクが高いとされる。[/aside]

世界の麻疹(はしか)の流行状況

世界の麻疹(はしか)の感染者は23万人とも言われています。

WHOの情報では、1980年に麻疹(はしか)は世界で年間約260万人の死者を出していました。

ワクチン普及に伴い感染者も減少し、16年には全世界の死者数が初めて10万人を切りました。

しかし現在は増加傾向。

WHOは2018年、世界のはしか感染者数が少なくとも22万9千人に上り17年より倍増しそうだと発表。

19年もこの傾向が続く可能性があると警告しました。

実際には感染が報告されない例も多いため、世界の感染者の実数は200万人以上と推計されています。

まとめ

今回は年明けから急増している麻疹(はしか)について記載しました。

はしかは高熱や発疹が特徴で、空気感染で広がります。

短時間でもはしかの患者と接触することで容易にうつる感染症です。

防ぐには予防接種が最も有効です。

はざま世代の方は、今のうちに積極的にワクチン接種を行っておいたほうがいいかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

大流行中の風疹:ワクチンは実は供給不足になる計算:早期のワクチン接種が必要です。

薬剤師目線:風疹ワクチンが一部定期接種化したが、国内での供給量は不足している!?

まだまだ流行の収まらない風疹。

対策の一つとして風疹の流行拡大を防ぐため、成人男性の一定層を対象にワクチンが定期接種化されることとなりました。

しかし自治体での実施は、早くても夏以降になる予定。

それだけでなく、国内の製薬会社による供給量は、目標達成に必要な本数を大きく下回っています。

風疹対策の対象者は300万人!

懸念されていた事態が起きてしまいました。

2019年に入り、先天性風疹症候群(CRS)の届け出が埼玉県にあったことが厚労省の報告で明らかになりました。

風疹ウイルスに感染した妊婦から胎児も感染し、障害が起きる先天性風疹症候群。

国内での確認は先の流行(2014年)以来のことです。

昨年は首都圏を中心として 2,917人の患者が報告されました。

この事態を受け厚労省は昨年末、今年1月から2022年3月までの約3年間、今年40-57歳になる成人男性の抗体検査とワクチン接種費用を原則無料とする方針を発表しました。

厳密な接種対象者は、1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性約1610万人です。

その世代の男性は、風疹の抗体保有率が約80%と低く、他の年代に比べて風疹に罹りやすいことが分かっているためです。 これを、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックまでに85%へ、2021年度末までに90%以上へと、引き上げを目指すというもの。

実際に接種が必要なのはそのうち2割程度と言われ、3 年間で最大300万人程度と予測されています。

不足する風疹ワクチン:対象者は300万人以上、供給は100万本以下

ワクチン接種がなかなか進まない問題点はもちろんありますが根本的な問題は、風疹ワクチンの供給量の不足です。

一般社団法人日本ワクチン産業協会が毎年発行しているワクチンの基礎2018年版冊子によれば、

2016 年の

  • 麻疹風疹混合 (MR)ワクチンの生産量は、271万4千本
  • 同じく風疹ワクチンは17万8千本

両方を合わせても、 供給量は年間約289万本です。

子供への風疹予防の定期接種は、1歳と就学前1年間の2回。

毎年、100万人弱の赤ちゃんが誕生すると考えると、2 期分で約200万本使われる計算になります。

そうすると、単純計算で大人に使えるのは残りの89万本です。

対象年齢の成人男性のうち抗体検査が陰性の人だけに接種するとしても、必要な本数は300万本以上。

これでは積極的なワクチン接種が始まっても供給不足になってしまいます。

風疹ワクチン不足を回避する方法:海外からの輸入について

現在、風疹含有ワクチンは国内3社(化血研、阪大、北里)が製造しています。

しかし今回の必要量は、現実的とは言えない数字であり、一気に倍近く生産量を増やせるような大きな工場を持つ会社は国内にはありません。

絶対量から言えば、いずれ供給不足に陥ることは必至です。

その供給不足を回避するための現実的な施策とは、足りない分を海外から輸入することです。

実際、国内での不足を補うために海外からワクチンの緊急輸入が行われたことが、2000年代に入 って1度だけあります。

そうそれは2009年に起きた新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)の時です。

ところが年が明けた1月、承認審査を簡略化した薬事法上の特例承認が初適用された頃には、すでにパンデミックは急速に終息へと向かっていました。

そのため結局、輸入されたワクチンは大量に余ってしまい、破棄するしかなかったそうです。

こうした経験もあることから現時点では海外メーカーのワクチン輸入については、動きはもちろん話すら出ていません。

風疹緊急対策のインチキ

医療経済2019年1月1日号に掲載された論説風疹緊急対策のインチキでは、厚労省は、

「もし2020年7月までに500万人程度が抗体検査を受ければ、おそらく100万人程度が陰性となってワクチンを接種することになる。
そうなれば対象世代の抗体陽性率80%に5%程度上乗せして85%と集団免疫を獲得できる」

という考えのようです。

要するに、本来は接種を受けるべき300万人分が揃わなくても、2020年7月までに100万本確保できればなんとか集団免疫は維持できる、というのです。

これを見て安心できるかというとそうではありません。

この80%や85%という数字の出し方に、インチキがあるというのです。

かなり専門的な話になりますが、ざっくり言えば、陽性と判断する基準が甘いのです。

この80%は、感染拡大を防ぐには不十分な免疫の付き方の人(かかってしまうが重症化しない人)も含んでの数字。

もし陽性の基準を厳しくすれば、今回抗体検査と予防接種が無償化される世代の成人男性では、陽性率は70%台になるともいわれています。

まとめ

風疹の流行が長引くほど、悲しい思いをする患者さんは増えてしまいます。

今であればワクチンの備蓄はまだ十分にあります。

妊娠を希望している女性やそのパートナー

そして今年40~57歳になる成人男性は抗体価チェックやワクチン接種を早めに行うことが重要です。

2012~2013年の全国的流行では、結果的に45例の先天性風疹症候群が確認されました。

今回の流行でも、すでに障害を持って生まれた赤ちゃんが報告されています。

早めのワクチン接種がおすすめです。

予防に大切なワクチン:新たなワクチンの開発~一つのタンパクで二つのワクチン効果~

薬剤師目線:病気の予防の一つとして重要なワクチン

現在でも様々なワクチンが保険適応となり、定期接種や任意接種の違いはあるものの病気の予防に多大なる貢献をしています。

ワクチンには生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドなどの種類があり、接種間隔などが違います。

ワクチンの違いについては、下の記事で記載していますのでぜひご参照ください。

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そして、基礎研究者、臨床医、製造・開発研究者、疫学研究者の多様な分野の研究者が集まり、ワクチンの開発や臨床への対応を目的として活動を行っている日本ワクチン学会

毎年行われている学術集会にて、新しいワクチンについてのシンポジウムがありました。

今までのワクチンは基本1対1のワクチン効果があります。
要するにインフルエンザワクチンはインフルエンザに効果が、麻疹風疹ワクチンはそれぞれ麻疹と風疹にワクチン効果があります。

細かくインフルエンザの型などの違いはあるものの、病原体1つに対して1つのワクチンです。

今回研究の成果が報告されたワクチンは、1つのワクチンで2つのワクチン効果があるというもの。

ウェルシュ菌毒素ベロ毒素の両方に効果のあるワクチンについてです。

2 つのワクチン効果発揮する蛋白作製

第22回日本ワクチン学会学術集会(会長・森康子神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス分野教授)が2018年12月8、9日、神戸市内で開かれ8日にシンポジウム 1「新規ワクチン」がありました。

そこで発表された内容は、一つのワクチンがウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両受容体に結合するというもの。

病原・共生微生物のユニークな機能を用いた新規ワクチン・アジュバント開発の新展開

での発表です。

ウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両方の受容体に結合する蛋白を作製。

有効性が確認されたと報告されました。

ひとつの蛋白でふたつのワクチン効果が得られるとまとめています。

製造の観点からも有利、実用化に向け研究

研究のきっかけは少し難しい話になりますが、

腸管に多数存在するIgA抗体産生細胞の中に、高いIgA抗体産生能力を持つCD11b陽性IgA細胞を発見したことです。

難しい話はさておき、腸管出血性大腸菌 O157 やウェルシュ菌による細菌性食中毒は年間 2000~3000 人が発症するといわれています。

治療法やワクチンは現時点では存在しません。

ウェルシュ菌は、食品を介して経口感染し腸管内で増殖、エンテロトキシン(CPE)という毒素を産生することで食中毒を引き起こします。

研究では、毒性部位を除いたベロ毒素の受容体結合部位であるVT2BとC-CPEを結合させた蛋白を作製。

このVT2B-C-CPEに毒性はなく、ウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両方の受容体に結合し、ウェルシュ菌毒素に対する中和抗体が誘導されたとのこと。

さらに、ウェルシュ菌毒素は高カリウム血症を起こしますが、VT2B-C-CPEを投与したマウスはウェルシュ菌毒素を注射しても、中和抗体があるので正常なままだったと結論づけています。

ベロ毒素の代わりにコレラ毒素抗原と融合したCTB-C-CPEも作製し、マウスに投与後、それぞれの毒素を注射しても下痢の症状を抑えることができたと説明。

これまでの多価ワクチンは別々のものを作って混合するタイプがほとんどでした。

四種混合や三種混合ワクチンと呼ばれるものがそれです。

今回の方法では、ひとつの蛋白でふたつのワクチン効果が得られます。

製造の観点からも優れており、今後は実用化に向けた研究が行われるようです。

まとめ

今回は現在行われているワクチン研究の話について、記載しました。

普段あまり、研究が身近でない人にもワクチンや薬が世の中に出るまでの流れを少しでも伝えられたらと思います。

今回の記事が何年後かに、ついにあの記事のワクチンが出たのか!!

と言われるのもそう遠くないかもしれません。

腸管出血性大腸菌もウェルシュ菌も、悩まされる病原体の一つです。

予防としてのワクチンが開発されれば、苦しむ患者さんも少なくなるかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんだけではない!!

MRICという情報サイトから配信されたメールマガジンにて取り上げられた内容です。

ヒトパピローマウイルス:HPVといいますが、ワクチン接種後の副反応の問題で日本では接種率が格段に下がりました。

マスコミの過剰報道の影響ももちろんありますが、医療者側も健康被害を訴える患者に対してきちんと向き合わなかったことが、この問題を大きく、また長期化させることとなったと思います。

ワクチンと神経症状などの副反応との因果関係(直接の関連性)は、現時点では否定されています

医療者も医療を受ける側も正しく理解したうえで、医薬品を使用することが一番大切と思い、今回まとめました。

世界で広がるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種

イギリス政府は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が関連するがんを予防するために12~13歳の男児に HPVワクチンを接種することを決定した、と発表しました。

米国、ブラジル、カナダ、オーストラリアなど世界20カ国では、すでに男児への接種が推奨されています。

今回の発表により、イギリスも男女ともにHPVワクチン接種を推奨する国の一つに仲間入りしたことになります。

日本の女性での接種率が上昇しないとは反対に。

実際のところ、

「結局、HPV ワクチンって打った方がいいの?」

というのが素直なところだと思います。

結論からは、副反応との因果関係は証明されていないことや、子宮頸がんを防ぐことができる現時点で唯一の方法でもあるため、私からは断然推奨します。

こちらの記事も参照ください。

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ヒトパピローマウイルス(HPV)

最近、小学生の女の子がいる保護者は気になっている話題ではないでしょうか。

しかし実際のところ、HPV ワクチンの未接種、子宮頸がん検診にそもそも行ったことがない、または診療時間中に仕事または学校を休んでまで検査に行けない、などという女性が多いのが現状だと思います。

今回はHPVワクチンについて、世界における研究結果の紹介です。

はじめに、皆さんはHPVが男女問わず感染するということを聞いたことがありますか。

ウォマック・アーミー・メディカル・センターによる調査では、2013年から14年において、米国を代表する 18~59歳の男性1868人のうち、半数近い45%がHPV感染、25%が高リスクHPV感染を認めたと報告しています。

実は、性交渉の経験のあるヒトなら、誰でも一度はHPVに感染すると言われているのです。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の型

HPV には、100種類以上の型があります。

がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あり、このうち、HPV16 型と18型の 2種類が、子宮頸がんの原因の7割を占めているといわれています。

HPV 感染したからといってすぐがんになるわけではなく、初期に感染した場合の多くは免疫力によって排除されます。

しかし、持続感染してしまうとがんになるのです。

最も一般的なのは、子宮頸がんです。

子宮頸がんのほぼ100%は高リスク型HPVが原因です。

子宮頸がんの疫学

子宮頸がんは、20代後半から40代前半の女性が発症しやすく、日本では毎年1万人が罹患(病気にかかり)し、約3000人が死亡していると推定されています。

母親が幼い子供を残して亡くなっていることから、「マザーキラー」とも呼ばれています。 ところが、子宮頸がんだけでなく、ほかのがんも、HPV感染が関連していることがわかってきました。

中咽頭がんはその一つです。

中咽頭がん

オーラルセックスを介して、喉の粘膜細胞に感染したHPVが周辺の細胞をがん化させるのです。

アメリカ疾病管理センター(CDC)が2011年から14 年のデータ解析を行ったところ、口腔部のHPVの罹患率は、18~69 歳の成人で7.3%であり、男性で11.5%、女性で3.3%でした。

また。高リスク型の口腔部HPVの罹患率は、18~69 歳の成人で4.0%であり、男性で 6.8%、女性で1.2%でした。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで行われた2010 年から 12 年 の調査によると、イギリスにおけるオーラルセックスの頻度は、25 歳から34歳の女性では79.7%、 男性では 80.0%。

かの有名なNature誌においては、オーラルセックスを介することによって、HPV 陽性の頭頸部がんが近年急増しており、1985年の16%から 2025 年には90%にまで 達すると推定されているとのこと。

ほかにも、膣がんや外陰がん、肛門がんや陰茎がんも HPV 感染が関連していることがわかってきました。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン

HPV ワクチンを接種することは、パートナーへHPVを感染させないだけでなく、男性も HPV感染による頭頸部がんや肛門がんのHPVに関連したがんを予防できるメリットがあるのです。

HPVワクチンの有効性は、世界的にみとめられています。

そして、副反応で話題となった神経障害などとのワクチンの関連性も証明されていません。

2018 年5月、イギリスに本部のある非営利組織コクランは、様々な臨床試験の評価結果として「子宮頸がんの前段階の予防効果には高い確実性がある」との見解を公表しました。

2016 年に米国疾病予防管理センターは、米国でHPVワクチン接種開始から6年間で、米国の若年女性のHPV感染率が大幅に低下したことを報告しています。

実際のデータとしては、14~19歳の女性は64%、20~24歳の女性は 34%もHPV感染率が低下したというもの。

ワクチンの副反応

ワクチン接種による副反応は様々なメカニズムで起こっている可能性があって、明快な答えは出ていません。

実際、WHO は2017年に複合性局所疼痛症候群・体位性頻脈症候群は, 承認前後の報告でワクチン接種との直接の関連を認めなかったと副反応について声明を出しています。

また、 日本産科婦人科学会は、HPVワクチンの接種勧奨が中止され5年間が経過した間に、国内外において、数多くの研究がなされ、ワクチンの有効性と安全性を示す科学的なエビデンスが、数多く示されたとの見解を 2018 年6月に出しています。

日本のHPVワクチン接種の現状

日本は、平成6~11年度生まれの女子のHPVワクチン接種率が70%程度であるに対して、平成25年6月の接種の積極的勧奨中止などの影響により、平成12年度以降生まれの女子では接種率が劇的に低下してしまいました。

なんと平成14年度以降生まれの女子では1%未満の接種率となっています。

一方、米国疾病管理予防センター(CDC)の2013年の発表によると、13歳から17歳の女性への接種率は2012年では33.4%。

欧州における接種率は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の2012 年の報告書によると、 イギリス80%、イタリア65%、フランス24%、ポルトガル84%と日本に比べると高い接種率が並んでいます。

今の状態が続くと国際社会において日本だけが、子宮頸がんの発生率が増加するのではないかと懸念されているのです。

そしてこのままではワクチン接種の重要性や必要性が判明したころには、時すでに遅しのような状態になってしまいます。

世界的には接種して当たり前だ、という意識が強いHPVワクチン。

自分だけではなく、愛するパートナーや子供を守るために、今一度、HPV ワクチンについてしっかりとした情報をもとに理解する必要があると思います。

ノーベル医学生理学賞受賞者からのメッセージ

m3.comからの引用です。

このサイトは医療情報全般を網羅、薬剤師はもちろん医療従事者であれば登録していて損はないサイト内容となっています。

2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授は、現地時間の12月8日13時半より、ストックホルム市内のホテルにてノーベル・スピーチ後、初となる記者会見を開きました。

会見の最後にNHKの記者が、子宮頸がんワクチン問題を含む日本の医療政策における課題に関するコメントを求められると本庶氏は、

「NHKさんがこの問題を取り上げることは非常にいいことだと思う。マスコミはきちんとした報道をしていただきたい」

と述べました。

また、

[aside type=”boader”]
「子宮頸がんワクチンの副作用というのは一切証明されていない。
日本でもいろいろな調査をやっているが、因果関係があるという結果は全く得られていない。
厚労省からの(積極的接種)勧奨から外されて以来、接種率は70%から1%以下になった。
世界で日本だけ若い女性の子宮頸がんの 罹患率が増えている。
一人の女性の人生を考えた場合、これは大変大きな問題だ。
マスコミはワク チンによる被害を強く信じる一部の人たちの科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」 [/aside]

と続けました。

医学や科学の問題について論じる際にマスコミ関係者に注意してほしい点として、

[aside type=”boader”]
「科学では『ない』ということは証明できない。
これは文系の人でも覚えておいてほしいが、科学では『ある』ものが証明できないことはない。
『証明できない』ということは、科学的に見れば、子宮頸がんワクチンが危険だとは言えないという意味だ」
と述べ、
「なぜこれを報道しないのか。先日学会でも講演し たが、ルワンダなど(リソースの少ない国)でもワクチンを導入して子宮頸がんが減っている」[/aside]
とコメントしました。

[aside type=”boader”]
「このことに関し、はっきり言ってマスコミの責任は大きいと思う。
大キャンペーンをやったのは、 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞。メジャーなところが全部やった。
そしてNHKも責任の一端があると思う。
今からでも遅くないから、きちんと報道してほしい。
実害が生じている」 [/aside]
と述べ、主要報道機関が誤った情報を広げたことにより、日本人女性が必要なワクチンの接種を差し控えている現状について警鐘を鳴らしたといわれています。

本庶氏は10月5日に藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)で行われたノーベル賞受賞決定後の初講演でも子宮頸がんワクチン問題について取り上げ、

「国際的にみても恥ずかしい状況」

とコメント。

10月11日には根本厚労大臣を訪問し、子宮頸がんワクチンの積極的接種の勧奨再開の要請を行った。

しかし、12月11 日現在、この問題に触れたメディアはありません。

まとめ

冒頭にも書きましたが、現に症状があって日常生活がままならない健康被害にあった患者がいるのも事実です。

その現状を受け止め、健康被害に対する対応を真摯に行えば、日本のワクチン接種率は今後上昇してくるのではと思います。

ちなみに、子宮頸がんワクチンで今一番有効とされるのは9価のHPVワクチンである「ガーシダル9」です。

9価とう数字は大きい方がさまざまなHPVの型をカバーすることができます。

しかし、日本で承認されているガーダシルは4価のもの。

本当の意味で国民の健康を考えるのであれば、ガーダシル9を承認して日本国内でも適応内で使用するという動きも、HPVワクチン接種率上昇には必要だと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ポリオ根絶を目指して~生ワクチンと不活化ワクチン~

最近では風疹の流行がクローズアップされています。

同じワクチンでもポリオという名前は聞いたことがあるでしょうか。

実は人類とポリオはとても長い闘いがあり、ワクチンの普及によっていポリオ根絶まであと少しというところまできています。

残念ながら、今問題になっている、風疹はまだ根絶には程遠いのが現状です。

まだまだ流行は収まっていないので、妊娠を希望する女性やそのパートナーは風疹ワクチンの接種をおススメします。

風疹に関しては、詳しくは下記の記事をご参照ください。

[kanren postid=”27″]

今回はポリオについてのお話です。

薬剤師目線:ポリオ根絶に向けて

ポリオの根絶、と聞いて某人気アニメキャラクターを思い出す方は記憶力がすごいと思います。

実は2005年に、未来の世界のネコ型ロボットがポリオ根絶に向けてCMを行っていました。

今でもまだ見ることができるので、ご興味ある方はこちらを。

ポリオ根絶まであと少しなんです!

と強く宣言する印象的なCM。

その後、十数年が経ちましたが、ポリオは世界から根絶されたのでしょうか。

結論としては、残念ながら2018年の現時点では根絶にいたっておりません。

ポリオ(急性灰白髄炎)

ポリオ(急性灰白髄炎)は、脊髄性小児まひとも呼ばれ、ポリオウイルスによって発生する病気です。

感染経路は、手洗いが不十分な時などに、ポリオウイルスに感染した患者の便中のウイルスを経口摂取する経口感染が主体です。

体内に入ったポリオウイルスはのどや腸管で増殖し、リンパや血液の流れに乗って神経細胞に到達します。

神経細胞内で増殖する過程で、体を動かす運動神経細胞を特異的に傷害するのです。

典型的な症状としては、数日間の発熱や倦怠感の後に、突然筋力低下が出現します。

ポリオウイルス

ポリオウイルスは脊髄、特に腰髄を傷害する頻度が高く、下肢まひの患者が多いと言われています。

傷害を受けた神経細胞は元に戻らないため、まひは回復せず、生涯にわたって残ります。

生涯治らない症状を、不可逆的といいますが、ポリオのまひは不可逆的な症状で、これが問題視され、ワクチン開発に至りました。

実際の症状

症状の程度は様々です。急速に呼吸筋のまひが進行して死に至ったり、まひと筋肉の萎縮が強く歩行ができなくなったりする重症例がある一方で、注意して診察しないとまひに気づかない軽症例も存在します。

これは、病変の及ぶ神経細胞の数によると考えられています。

また、感染者の90%以上は感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)もあり、まひ性ポリオになる患者の割合は数百人に一人とされています。

好発年齢

発病しやすい年齢は5歳以下で、一般には小児まひと呼ばれ、恐れられてきました。

19世紀後半から20世紀前半にかけて欧州や米国で数万人規模の大流行が起きました。

日本にも1950年代終盤にポリオ流行の大きな波が押し寄せ、1960年には患者数が5千人を超え、史上最悪の年といわれました。

ポリオは社会的大問題となり、テレビでは毎日、その日に判明した新規患者数を定時のニュースで流していました。

ワクチン開発~生ワクチン(OPV)と不活化ワクチン(IPV)~

日本でも大流行した翌年の1961年、日本はソ連(当時)とカナダから弱毒化経口生ワクチン(OPV)を緊急輸入し、全国の小児に一斉投与しました。

その効果は絶大で、流行は瞬く間に終息しました。

生ワクチンのとは病原体を殺さずに精製した、という意味です。

ワクチンの種類などに関しての詳細は下記の記事もご参照ください。

[kanren postid=”531″]

ポリオワクチンの登場は1950年代半ばで、当初は、死んだ病原体やその成分のみを使用した不活化ワクチン(IPV)が支持されました。

しかし、OPV の方が IPVに比べ優れた集団免疫効果を発揮しました。

集団免疫効果とは、集団における大多数がワクチンの予防接種を受けた場合、その中で感染 者が現れてもワクチン未接種者への感染拡大が抑制されることです。

ポリオ弱毒化経口生ワクチン

生ワクチン(OPV)は安価で、輸送面にも優れ、投与も口からであり簡便であることから、1960年代以降、世界中に普及しました。

日本では1964 年から国産OPVの定期接種(当時は、生後3カ月以上4歳未満に、41日以上間隔をあけて2回接種)が開始され、80 年を最後に野生型ポリオの発症は見られません。

野生型とはワクチンを原因とするものではない、という意味です。

2017 年時点で残された野生型ポリオの流行国はパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアのみとなりました。

生ワクチンの影響

日本で野生型ポリオの発症は見られなくなりました。

ところが、OPVでは、250万~500万接種に1回の割合で自然のポリオと同じようなまひ症状(ワクチン関連まひ性ポリオ感染症=VAPP)を示すことがあります。

OPVの高い予防効果はこれまで何よりの恩恵だったのですが、野生型ポリオ感染症が見られなくなった先進国などではより安全なワクチンが求められるようになり、90 年代終わりごろから先進国を中心にVAPP発症のリスクがない不活化ワクチン(IPV) への転換が進められました。

ポリオワクチンの定期接種

日本では他の先進国に10年ほど遅れて 2012年9月、定期接種のポリオワクチンがOPVからIPVへ切り替わりました。

現在、IPV は生後3カ月から接種可能であり、3~8週間間隔で3回、3回目の約1年後(6 カ月後から接種可能)に4 回目を接種します。

接種スケジュールなどの詳細はこちらをご参照ください。ポリオ以外のワクチンも記載されています。

IPVの普及によってポリオ根絶への道は最終段階に入ったといえるのではないかと思います。

ただ、海外から日本への渡航者が感染していて、日本国内で感染が発生する可能性はまだあります。

ポリオウイルスの根絶が確実となるまでは、各国でワクチン接種による免疫維持の努力は続けていかなければなりません。

まとめ

予防接種の健康被害が社会問題化したことから、1975年~77年生まれの人では接種率が低下しました。

ポリオウイルスに対する抗体保有率は約40~60%と、他の世代(80%以上)に比べ低いと言われています。

ポリオワクチンの接種歴が母子手帳で確認できない人でも、抗体の有無は簡単な血液検査で調べられますし、予防接種自体も可能です。

風疹が話題になっている今、風疹以外の抗体があるかないか今一度確かめてもいいのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ワクチンのポイントと注意点〜不活化ワクチンと生ワクチン、トキソイド〜

インフルエンザが流行する冬。

予防するためにワクチンを打っている人も多いのではないでしょうか。

また、生まれたばかりのお子さんをお持ちの方もワクチンはとても身近なものになっていると思います。

予防医学の中でも重要な役割を持つ、ワクチン

ですが、実はワクチンにも分類や特徴があります。

今回は、ワクチンのポイントと注意点について書いていきます。

薬剤師目線:ワクチンの種類について

ワクチンと一言でいっても種類は種類は下記の3種類です。

  • 不活化ワクチン
  • 生ワクチン
  • トキソイド

です。

不活化ワクチンと生ワクチンに関しては、対象がそれぞれウイルス細菌の二つに分かれます。

分かりやすく表にまとめるとこのようになります。

ワクチンの種類 病原体 
不活化ワクチン ウイルス ポリオ、日本脳炎、インフルエンザ、B型肝炎など 
細菌 百日せき、肺炎球菌

ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型(ヒブ)など 

生ワクチン ウイルス はしか(麻しん)、風しん、おたふくかぜ、

みずぼうそう(水痘)、ロタなど 

細菌 結核(BCG) 
トキソイド 毒素 ジフテリア、破傷風 

不活化ワクチン

不活化ワクチンは、病原性を消失させたり毒素を無毒化したもののことです。

体の中で病原体が増えることはなく、発熱などの副反応が少ないといわれています。

生ワクチン

生ワクチンは、病原性を弱めたウイルスや細菌を接種し、それらが体の中で増えることによって免疫力をつけることができます。

自然感染に近い状態で免疫がつきます。

トキソイド

トキソイドは、強い毒素を産生する細菌の毒素だけを取り出して無毒化し、ワクチンにしたもののことです。

細菌に感染したときに、毒素による発病を防ぐことができます。

ワクチンで防げる病気:VPD

ワクチンで防げる病気のことをVPDといいます。

VPDとは、

・Vaccine:ワクチン

・Preventable:防ぐことができる

・Diseases:病気

の略です。

そのまんまといった感じですが、予防接種によって防げる病気のことです。

  • 【定期接種】と【任意接種】があり、任意接種の助成の範囲は自治体によって様々ですが、最近は子どもだけでなく高齢者にも定期接種の対象が広がっています
  • 子どもには複数のワクチンを同時接種することが主流となり、有効性や副反応に問題はなく、同時接種できるワクチンに制限はないといわれたいます。

ワクチンのまとめ

ポイント

  1. ワクチン接種は集団免疫の獲得や発症・重症化の予防に効果があります。
  2. ただワクチンの効果は100%ではないため、日常においての手洗いやうがい、咳エチケットが重要です。

注意点

  1. 妊婦への生ワクチンの接種は絶対にダメです。
  2. 授乳中の女性へのワクチン接種なら生ワクチンも可能。だけど、乳児に対する効果は期待できないので、乳児は別に接種が必要。
  3. ワクチン接種後は接種部位をもまない。皮下出血を起こすことがあります。

インフルエンザワクチン

いままで、3価だったインフルエンザワクチンが2015年の接種から4価になりました。

途中から接種の費用が少し高くなったと感じませんでしたか?

今までのワクチンはA型が2種類とB型が1種類であったのに対し、

2015年からはA型もB型も2種類ずつの、4種類のウイルスの型に対応できるようになりました。

ポイント

  1. インフルエンザワクチンは、毎年接種する必要があります。
    • ワクチンの効果が接種後2週間から5か月程度であるためです。
  2. 流行前に計画的な接種が必要です。
    • 特に13歳未満のこどもは1~4週間の間隔を空けて2回接種が必要なためです。

注意点

  1. 卵アレルギーがある場合には注意が必要
    • ワクチンの製造過程で培養するときに孵化鶏卵を使用しているからです。
  2. 副反応は約10%の人にみられます。
    • かゆみや倦怠感など長期化する場合は受診をおススメします。

妊婦へのインフルエンザワクチンの接種は強く勧められています。

なぜなら、

  • 安全性の面で胎児への影響がない
  • 妊婦がインフルエンザにかかると、合併症の危険性が増加するから
  • 妊婦がインフルエンザにかかっても、インフルエンザ治療薬は使用しにくい

ただ、妊娠の初期(妊娠3か月未満)の妊婦は自然流産が起こりやすい時期でもあるので、流産があってもワクチン接種とは関係ないことを、医療者側も十分に説明する必要があります。

まとめ

ワクチンの種類から今の季節話題のインフルエンザワクチンのポイントについて、記載しました。

反ワクチン派なんていう言葉もありますが、予防医学の中でワクチン接種はとても重要です。

こどもは接種の回数が多くなりますが、それでも同時接種などが導入されできる限り防げる病気は防ぐような傾向になってきています。

しっかりワクチンを接種して、予防しましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

糖尿病患者に、すべてのワクチン接種が必要な理由とは?〜感染症予防や合併症対策に効果的〜

生活習慣病はさまざまなものがありますが、

その代表格と言ってもいい、糖尿病

糖尿病には合併症も多く、

  • 腎不全
  • 動脈硬化
  • 末梢神経障害
  • 網膜症(失明)
  • 骨粗しょう症

上記のような合併が代表的なものとして挙げられます。

今回はm3.comという医療情報サイトから話題を抽出。

薬剤師や医療関係者なら登録まだの人は有益な情報たくさんなので、おススメです。

では、今回は糖尿病の患者にフォーカスを当て、

ワクチン接種の必要性について、

書いていきます!

糖尿病患者は全てのワクチン接種を!と、

専門家達は強く推奨しています。

薬剤師目線:糖尿病患者は感染症にかかりやすい?

そもそも、糖尿病患者は血糖コントロールが不良な状態が続くと免疫機能が低下するため、

様々な感染症にかかりやすくなると言われています。

そのため、アメリカにおいて糖尿病患者は、

一般的に推奨される予防接種を全て受けるべきだと強調しています。

糖尿病患者は高血糖状態が長く続くことで免疫力が低下し、

インフルエンザや肺炎、 B 型肝炎、破傷風、帯状疱疹などにかかりやすく、

また、深刻な合併症リスクも高まるといわれています。

糖尿病の患者こそワクチン接種を!

糖尿病の専門家であるアメリカの大学准教授は、

インフルエンザや肺炎、 B 型肝炎、破傷風、帯状疱疹などの感染症は、

ワクチンを接種することで予防できるとし、

全ての糖尿病患者は自分がどのワクチンを接種する必要があるかを知り、未接種のワクチンや再接種が必要なワクチンがないかどうかを医師に相談 すべきだ」と話しています。

糖尿病患者に勧められるワクチンについて

インフルエンザワクチン

季節性インフルエンザの予防にはワクチン接種が最も有効です。

糖尿病患者によくみられるインフルエンザの合併症には、

  • 血糖値の上昇
  • 肺炎
  • 気管支炎
  • 副鼻腔炎
  • 中耳炎

などがあります。

三種混合ワクチン(Tdap)

百日咳、ジフテリア、破傷風という深刻な感染症を予防するワクチンです。

三種混合ワクチンは10 年ごとに接種が必要とされています。
これ、実はあまり知られていません。

なお、日本国内では四種混合ワクチン(DPT-IPV;百日 咳、ジフテリア、破傷風、ポリオ)に含まれています。

妊婦さんへのTdapの接種も今後勧めらていくと思われます。
赤ちゃんを守るために。

妊婦さんへのワクチンを含め、その他食品などの安全性については、以下の記事もご覧ください。

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帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹ワクチンは、帯状疱疹を予防するだけではありません。

帯状疱疹や皮膚症状が消失した後に痛みが残る帯状疱疹後神経痛(PHN)、

これを発症するリスクを低減することもできます。

ワクチン未接種者では、

「帯状疱疹やPHNは高齢になるほど症状が深刻になる」

と言われているため、糖尿病患者だけでなく
50 歳以上の場合は帯状疱疹ワクチン接種をおススメします。

肺炎球菌ワクチン

糖尿病患者は肺炎球菌感染による死亡リスクが高いことがわかっています。

肺炎球菌って何?

と思うかもしれませんが、

肺炎球菌は脳の中に感染すると細菌性髄膜炎を引き起こし、
耳に感染すると中耳炎、
肺に感染すると肺炎、
血液中に入り込むと菌血症

を引き起こします。

糖尿病患者は、肺炎球菌ワクチンを65歳になる前に1回、

65歳以降にさらに2回接種することをおススメします。

B 型肝炎ワクチン

B 型肝炎は血糖測定器や指先の穿刺針といった治療器具を共用することで感染するといわれています。

ある研究によると医療従事者(病院で働いている人)は、

B型肝炎に知らないうちに感染する危険性があるとも言われています。

そのため、病院へ就職する場合はB型肝炎に対する抗体価(B型肝炎に対抗する力の値)を確認、

抗体価が低い場合は、ワクチンを接種してから就職します。

医療資格を有する場合は、学生実習などで病院を訪れるときのも

その抗体価が必要とされているので、現在の医療系大学生は抗体価を実習前に確認されます。

そして、糖尿病患者にとってもB型肝炎ワクチンの接種は非常に重要とされています。

なお、接種は60歳未満で推奨されていますが、60 歳以上の場合でも医師に相談することをおススメします。

まとめ

糖尿病患者へのワクチン接種について、まとめました。

ワクチンは病気の予防に多大な効果を示します。

最近では、子供のワクチン接種プログラムや地域の助成なども充実してきているため、
昔に比べて予防できる病気が増えてきています。

糖尿病の患者さんは、リスクがあることを認識してワクチン接種、

今一度考えてみてはいかがでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございます。

髄膜炎菌の怖さとワクチンの必要な集団について。

薬剤師目線:髄膜炎菌について

2017年の夏、ある大学の学生寮に入っていた10代の学生が髄膜炎菌に感染して、亡くなりました。

国内ではまれな病気ですので、原因菌もあまり聞き慣れない名前だと思います。
しかし、この髄膜炎菌によって引き起こされる侵襲性髄膜炎菌感染症は、命に関わる非常に危険な感染症の一つです。

今回は、その髄膜炎菌とワクチンの必要性についてです。

ワクチンに関しては、以下の記事も参考にしてみてください。

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潜伏期間と初期症状

平均的な潜伏期間は4日間。
初期症状は発熱、頭痛、吐き気など通常の風邪と似ています。

一方で、症状の進行は非常に速く、発症から半日ほどで、血液の中に菌が増殖する菌血症となり、さらに脳脊髄液の中に菌が侵入して髄膜炎を引き起こすと言われています。

髄膜炎

髄膜炎になると、不機嫌で感情が高ぶった状態から、眠りがちになり、意識障害へと進展します。

また、首の後ろ部分である項部の硬直がみられます場合もあります。

これは、髄膜の炎症によって、後頭部から首の筋肉が反射的に緊張し、首が前に曲がらなくなる症状です。
風邪症状にプラスしてこの症状があったら、注意が必要かもしれません。

その後、菌血症の進行によ り、血圧低下、副腎出血、多臓器不全(敗血症)を起こすことが知られています。

治療

治療としては、一刻も早くペニシリン系やセフェム系の抗生物質を静脈注射で開始することです。

抗生物質による治療の効果が出れば、2 週間前後で髄膜炎症状は軽くなります。

しかし早期から、高熱、けいれん、意識障害、血圧低下、全身の出血をきたす劇症型で発症し、 重篤な経過で、集中治療が必要な状態となることもあります。

このような経過から、発熱、せき、鼻水などの風邪症状に加えて、急激な頭痛、吐き気、意識障害、項部硬直の症状が現れた場合、髄膜炎菌などによる髄膜炎の可能性がありますので、できる限り早急に医療機関を受診することをお勧めします。

日本の現状

日本国内での最近の侵襲性髄膜炎菌感染症の患者発生は、

2013年 23 人
▽14 年 37 人
▽15 年 34 人
▽16 年 43 人
▽17 年 23 人
となっています。

死亡率は 15%と非常に高く、救命されても脳障害や難聴、身体障害などの後遺症が残ることがあります。

病原体である髄膜炎菌は、患者だけでなく健常者の鼻咽頭からも分離されます。その割合は世界的には5~20%程度で、国内では 0.4%です。

感染経路は、くしゃみ、せきなどによる飛沫感染で、鼻やのどの粘膜から感染します。

体力が低下している場合や、免疫系の病気がある場合は、気道の粘膜から血液、脳脊髄液に菌が侵入して、重篤な症状を引き起こします

国立感染症研究所の患者発生動向(13年4月~17年10月)によると、発症のピークは、4歳までの乳幼児と15 歳~19 歳、40~70 代前半にみられました。

10 代後半での患者発生が多いのは、学生寮やクラブ活動の合宿など、狭い空間での共同生活により感染リスクが高まることが要因と考えられ ています。

ワクチンについて

髄膜炎菌に対してはワクチンが開発されています。

欧米では、11歳~14歳前後での予防接種が定期化されている国が多く、最大の流行地域であるアフリカでは、21カ国、2億8千万人を超える人々にワクチンが接種されています。

日本では 2015年から、任意で髄膜炎菌に対するワクチンの接種を受けることが可能となりました。

費用は、一部の患者(発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬である「エクリズマブ」の投与対象者)を除いて、全額自己負担です。

対象は2歳以上で、接種可能な医療機関はインターネットで検索することができます。

まとめ

髄膜炎菌による感染症。

怖い病気ではありますが、頻度は多くはありません。

しかし、伝播しやすいうえに、感染すると重篤化する病気なので、

  • 海外に渡航する前
  • 進学に伴って共同生活の機会が多くなる

以上のような場合は、髄膜炎菌の予防接種をぜひ検討してもいいのかもしれません。