梅毒の感染が拡大中:自分は大丈夫は危ない!!


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あまり触れられることの少ない、性感染症(性病)。

昔に流行した梅毒による感染が、今になって問題視されています。

梅毒自体は抗生剤の効く感染症ですが、自分は大丈夫といって検査などを行わず知らぬ間に感染が拡大しているのが現状です。

また、梅毒と混合しやすいのが尖圭コンジローマです。

梅毒と同様の性感染症(性病)の一つですが、梅毒は原因が梅毒トレポネーマであるのに対し、尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)が原因です。

HPVに関しては、下記の記事で詳細に記載してありますので、併せてご参照ください。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんだけではない!!

2018年12月17日

薬剤師目線:梅毒について

20代女性は5年で14倍、男性は20~50代で4倍という脅威の数字。

梅毒の流行が大変なことになっています。

国立感染症研究所の発表によると、2018年第44週(10月29日~11月4日)、医療機関から届け出があった梅毒の累積患者数は5811例

このまま行けば年内に6000例超えはほぼ確実とみられている。

梅毒の届け出数は、2014年頃から急激に増加し始めて、昨年は年間報告数が44年ぶりに5000例を超えたことが話題になりました。

ニュースなどでも取り上げられたため、見た記憶がある方もいるのではないでしょうか。

特に増加が著しいのは20代の女性で、2013年~17年の5年間で、20~24歳では40例から551例で約14倍、25~29歳では33例から418例で約13倍に増えています。

一方男性は全体的に女性よりも患者数が多く、25~54歳まででは728例から2877例で約4倍

特に45~49歳では91例から484例で5倍以上に増えていると言われています。
厚労省『性感染症報告数 年齢(5 歳階級)別にみた性感染症(STD) 報告数の年次推移

梅毒大流行の理由:外国人旅行者が引き金に!?

大流行の理由として2016年には、

性行為の低年齢化

コンドームを使わずに性行為を行う人が増えていること
が挙げられていました。

身を守るすべを知らない若者の実態が反映されている
との考察が主流を占めていました。

しかし本当の原因はそれだけでしょうか。

以前から性行為は低年齢化していましたし、コンドームを使わない性行為もしかり。

1940年代のペニシリンの普及以降、劇的に減少していた発症数が2013年あたりから急増に転じたのには、 それ以外にも理由があるといわれています。

理由として注目されているのが訪日外国人旅行者の急増です。

2013年には初めて1000万人を超え、 2015 年には約1974万人と前年比47.1%も増加。

2016 年には約2404万人に達し、わずか3年で2.3倍にも伸びています。

しっかりした調査が行われていないので断定はできないが、関係はかなり深いとみている専門家も多いのが現状です。

例えば、訪日外国人数第 1 位の中国では、日本以上のペースで梅毒の感染が拡大しており、中国 の全体人口が日本の10倍なのに対して梅毒患者数は300倍だといわれています。

訪日数2位の韓国も近年、梅毒やHIVなどの性感染症が急増しています。

外国人の患者が来日し、性風俗産業で働く若い女性に感染させている可能性は十分に考えられます。

2014年以降に患者が急増したある地方都市の調査では、2017年に異性間性交渉で感染した男性のうち 71.2%が過去数ヵ月以内に風俗店を利用しており、女性の25.9%はCSW(コマーシャルセックスワーカー:性労働者)が占めていたというデータがあります。

訪日外国人⇒20代風俗嬢⇒大人の男性たち

という図式です。

大人の男性たちの先では、30~40代の女性たちにもじわじわと拡大が広がっています。

しかし決して外国人は来るなという短絡的な結論ではこの問題は解決しません

国際化が進み、アジアはどんどん一体化しているということが背景にあります。

それはインフルエンザが冬の病気から通年の病気へと変化しつつあることにも関連があるともいわれています。

インフルエンザに関しては、下記の記事もご参照ください。

冬の感染症対策:インフルエンザ、ノロウイルス~医療・介護施設から家庭まで~

2018年12月20日

梅毒の感染対策

そもそも感染症対策は

どこの国に責任がある

という問題ではなく、こうしたグローバル化の進展を念頭に考えなければいけません。

ちなみに、風俗との関係が深そうだというと、自分は関係ないと思ってしまう人がいそうですが、その考えは実は甘かったりします。

感染拡大には、近年増えているSNSや出会い系アプリを通して知り合う交際も影響していると、 多くの専門家はみています。

なんとかしなければいけないのは事実ですが、対策がなかなか効果を発揮しないの背景には、医者にも患者にも

梅毒は過去の病気

という認識があるからです。

ほんの100年前の大正時代には、日本人成人男性の10人に1人は梅毒だったというデータがありますし、戦後間もない1949年には年間17万6000人余りの患者が発生したと報告されています。

特効薬である抗生物質ペニシリンの実用化と普及のおかげで、患者数は激減しましたが、かかる人が減れば当然、医者も梅毒の診断に疎くなるのは事実です。

梅毒は、

  • 視力低下(ぶどう膜炎)
  • 頭痛
  • 関節炎
  • 腎炎

など非常に多彩な症状をきたす一方で、全く症状がない時期もあるため偽装の達人と呼ばれるほど診断が難しいといわれています。

しかも症状がない期間も感染力はあります

患者は、自分では性病と気づかないまま、泌尿器科、皮膚科、産婦人科などを受診し、医者は医者で梅毒と見抜けず、根本的な治療を行わないまま患者を帰してしまうため、梅毒の感染拡大にぜ んぜんブレーキがかからない事態になっているのです。

梅毒感染:日本だけは大丈夫!?

日本だけは大丈夫

という正常性バイアスが危機を呼んでいます。

このような状況から日本医師会は2018年8月、会員に対して、日本性感染症学会と協力し梅毒診療ガイドのダイジェスト版を配布しました。

「全診療科の医師が、梅毒が増えていることを念頭において、非特異的な皮膚病変、あるいは皮膚以外でも説明がつかないような臓器病変を診たら、積極的に抗体検査を行って、梅毒の可能性を除外していくようにしてほしい」

と呼びかけています。

また検査を受けて陽性だった場合には、パートナーの受診を医療従事者が積極的に推奨することも重要だといわれています。

厚労省は、梅毒の発生動向をより詳細に把握することを目的として、来年をめどに届け出基準を改正する予定です。

すでに医療従事者の方の手元には新しい書式の案内が来ているのではないでしょうか。

新たな届出事項には、

  • 性風俗産業の従事歴・利用歴
  • 梅毒既往歴
  • 妊娠の有無

などが加えられています。

梅毒感染リスクの軽減

では、一般人はどうしたらいいのでしょうか。

梅毒はHIVなど他の性病と比べて非常に感染力が強く、たった 1 回の性交で感染する可能性は15~30%もあり、誰でも感染しうる病気です。

予防には、

  • 不特定多数の人との性行為を避けることと
  • 性行為の際は最初からコンドームをつけること

が推奨されていますが、感染リスクを減らせるだけで完璧ではありません。

予防よりもむしろ、感染が心配なときは検査を受け、陽性だったら確実に治療し、他人にうつさないようにすることが肝心だといわれていますが、
正直、実行する人は限りなく少数派と思われます。

というのも、例えば成人病予備軍とされる人たちは、どんなに健康のために生活習慣を改めましょと呼びかけても、なかなか生活を変えようとはしません。

人間は、無症状のまま差し迫る危機に対しては正常性バイアスが働いてしまう生き物だからです。

正常性バイアス
水害、地震、津波、火災などの危険が目の前に迫っていても、正常な日常生活の延長線上の出来事だと決めつけ、「自分は大丈夫」「まだ大丈夫」などと思い込んでしまう人間の心理的な傾向を指します。

風俗にハマっている男性陣は、たとえこの先、感染リスクがどれだけ叫ばれようとも、「自分だけは大丈夫」と油断し、妻や恋人に感染が拡がってしまうかもしれません。

海外での性感染症対策

中国では性病検査キットが大学の自動販売機で買えるというのです。

中国社会では梅毒だけでなく、性感染症はかなり大きな問題と捉えられていて、

  1. 本気で梅毒を封じ込めるには、性風俗産業でのキスとオーラルセックスの禁止、コンドーム使用の徹底、定期的な血液検査の実施が必要。
  2. 対策を徹底している業者には適応マークを発行し、利用者に安全を担保する。
  3. 利用者は、適応マークがある店以外には行かない。
  4. 昨今の風疹予防対策と同じように、感染が心配な人には検査を受ける際に助成金を出し、金銭的負担を軽減する。
  5. 検査で陽性となった人には、 治療費を補助する。
  6. すべての過程において、プライバシーが守られるよう情報管理を徹底させる。

という施策が行われています。

HIV 感染者とエイズ患者の増加が深刻化している中国
(HIV感染者は43万7377人、エイズ患者は32万1233人、あわせて75万8610人。エイズの死亡者は法定伝染病の中で最も多い) 。

学生の間でもHIV感染が増加傾向にある一方で、学生に対しては啓発活動による効果も表れやすいため、大学生は予防教育活動の重点対象になっているようです。

実際に2017年11月に、清華大学、北京大学、人民大学等、北京市にある大学11校に、HIV検査キットの購入できる自動販売機が置かれました。

特色としては医療施設での検査に比べ手軽で、プライバシーが保たれやすいことであります。

販売機の中には飲料やスナック菓子などとともに検査キットが並んでいるため、そこで何かを購入していても怪しまれることはありません。

販売機のタッチパネルを押してキットを選択し、スマホの電子決済で購入する。

学生にとってはコーラを買うのとまったく同じ動作で検査キットが購入できます。

実際はもっと費用はかかると思われますが、大学プロジェクト価格30元と印字されています。

30元は日本円で約500円弱なので、お手頃価格です。

またHIVは梅毒とセットで感染することが多いので、梅毒の検査も同時にできれば、梅毒の感染拡大防止にも役立つのではと注目されています。

日本では販売機ではまだ変えませんが、自宅でプライバシーを保ちつつ検査するキットがあります。

まとめ

日本ではまだまだ啓蒙や啓発が不足している性感染症

今回は梅毒を中心に記載しましたが、HIVなども問題となっています。

もし日本で、先ほどの中国の例と同じように東京大学や京都大学の構内に検査キットの自動販売機が置かれたら。。。

インパクトも啓蒙効果も相当なものになるのではないでしょうか。

明確な施策を行わないと、日本だけは大丈夫と国民みんなが正常性バイアスを働かせている間に、 梅毒感染がどんどん拡大していってしまうかもしれません。

性感染症は身近なものです。早期発見、早期治療が重要です。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


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    ABOUTこの記事をかいた人

    薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!