大流行中の風疹:ワクチンは実は供給不足になる計算:早期のワクチン接種が必要です。


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薬剤師目線:風疹ワクチンが一部定期接種化したが、国内での供給量は不足している!?

まだまだ流行の収まらない風疹。

対策の一つとして風疹の流行拡大を防ぐため、成人男性の一定層を対象にワクチンが定期接種化されることとなりました。

しかし自治体での実施は、早くても夏以降になる予定。

それだけでなく、国内の製薬会社による供給量は、目標達成に必要な本数を大きく下回っています。

風疹対策の対象者は300万人!

懸念されていた事態が起きてしまいました。

2019年に入り、先天性風疹症候群(CRS)の届け出が埼玉県にあったことが厚労省の報告で明らかになりました。

風疹ウイルスに感染した妊婦から胎児も感染し、障害が起きる先天性風疹症候群。

国内での確認は先の流行(2014年)以来のことです。

昨年は首都圏を中心として 2,917人の患者が報告されました。

この事態を受け厚労省は昨年末、今年1月から2022年3月までの約3年間、今年40-57歳になる成人男性の抗体検査とワクチン接種費用を原則無料とする方針を発表しました。

厳密な接種対象者は、1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性約1610万人です。

その世代の男性は、風疹の抗体保有率が約80%と低く、他の年代に比べて風疹に罹りやすいことが分かっているためです。 これを、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックまでに85%へ、2021年度末までに90%以上へと、引き上げを目指すというもの。

実際に接種が必要なのはそのうち2割程度と言われ、3 年間で最大300万人程度と予測されています。

不足する風疹ワクチン:対象者は300万人以上、供給は100万本以下

ワクチン接種がなかなか進まない問題点はもちろんありますが根本的な問題は、風疹ワクチンの供給量の不足です。

一般社団法人日本ワクチン産業協会が毎年発行しているワクチンの基礎2018年版冊子によれば、

2016 年の

  • 麻疹風疹混合 (MR)ワクチンの生産量は、271万4千本
  • 同じく風疹ワクチンは17万8千本

両方を合わせても、 供給量は年間約289万本です。

子供への風疹予防の定期接種は、1歳と就学前1年間の2回。

毎年、100万人弱の赤ちゃんが誕生すると考えると、2 期分で約200万本使われる計算になります。

そうすると、単純計算で大人に使えるのは残りの89万本です。

対象年齢の成人男性のうち抗体検査が陰性の人だけに接種するとしても、必要な本数は300万本以上。

これでは積極的なワクチン接種が始まっても供給不足になってしまいます。

風疹ワクチン不足を回避する方法:海外からの輸入について

現在、風疹含有ワクチンは国内3社(化血研、阪大、北里)が製造しています。

しかし今回の必要量は、現実的とは言えない数字であり、一気に倍近く生産量を増やせるような大きな工場を持つ会社は国内にはありません。

絶対量から言えば、いずれ供給不足に陥ることは必至です。

その供給不足を回避するための現実的な施策とは、足りない分を海外から輸入することです。

実際、国内での不足を補うために海外からワクチンの緊急輸入が行われたことが、2000年代に入 って1度だけあります。

そうそれは2009年に起きた新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)の時です。

ところが年が明けた1月、承認審査を簡略化した薬事法上の特例承認が初適用された頃には、すでにパンデミックは急速に終息へと向かっていました。

そのため結局、輸入されたワクチンは大量に余ってしまい、破棄するしかなかったそうです。

こうした経験もあることから現時点では海外メーカーのワクチン輸入については、動きはもちろん話すら出ていません。

風疹緊急対策のインチキ

医療経済2019年1月1日号に掲載された論説風疹緊急対策のインチキでは、厚労省は、

「もし2020年7月までに500万人程度が抗体検査を受ければ、おそらく100万人程度が陰性となってワクチンを接種することになる。
そうなれば対象世代の抗体陽性率80%に5%程度上乗せして85%と集団免疫を獲得できる」

という考えのようです。

要するに、本来は接種を受けるべき300万人分が揃わなくても、2020年7月までに100万本確保できればなんとか集団免疫は維持できる、というのです。

これを見て安心できるかというとそうではありません。

この80%や85%という数字の出し方に、インチキがあるというのです。

かなり専門的な話になりますが、ざっくり言えば、陽性と判断する基準が甘いのです。

この80%は、感染拡大を防ぐには不十分な免疫の付き方の人(かかってしまうが重症化しない人)も含んでの数字。

もし陽性の基準を厳しくすれば、今回抗体検査と予防接種が無償化される世代の成人男性では、陽性率は70%台になるともいわれています。

まとめ

風疹の流行が長引くほど、悲しい思いをする患者さんは増えてしまいます。

今であればワクチンの備蓄はまだ十分にあります。

妊娠を希望している女性やそのパートナー

そして今年40~57歳になる成人男性は抗体価チェックやワクチン接種を早めに行うことが重要です。

2012~2013年の全国的流行では、結果的に45例の先天性風疹症候群が確認されました。

今回の流行でも、すでに障害を持って生まれた赤ちゃんが報告されています。

早めのワクチン接種がおすすめです。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!