ポリオ根絶を目指して~生ワクチンと不活化ワクチン~


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最近では風疹の流行がクローズアップされています。

同じワクチンでもポリオという名前は聞いたことがあるでしょうか。

実は人類とポリオはとても長い闘いがあり、ワクチンの普及によっていポリオ根絶まであと少しというところまできています。

残念ながら、今問題になっている、風疹はまだ根絶には程遠いのが現状です。

まだまだ流行は収まっていないので、妊娠を希望する女性やそのパートナーは風疹ワクチンの接種をおススメします。

風疹に関しては、詳しくは下記の記事をご参照ください。

マスクで予防を!!妊婦さんの風疹回避の重要性について。

2018年8月27日

今回はポリオについてのお話です。

薬剤師目線:ポリオ根絶に向けて

ポリオの根絶、と聞いて某人気アニメキャラクターを思い出す方は記憶力がすごいと思います。

実は2005年に、未来の世界のネコ型ロボットがポリオ根絶に向けてCMを行っていました。

今でもまだ見ることができるので、ご興味ある方はこちらを。

ポリオ根絶まであと少しなんです!

と強く宣言する印象的なCM。

その後、十数年が経ちましたが、ポリオは世界から根絶されたのでしょうか。

結論としては、残念ながら2018年の現時点では根絶にいたっておりません。

ポリオ(急性灰白髄炎)

ポリオ(急性灰白髄炎)は、脊髄性小児まひとも呼ばれ、ポリオウイルスによって発生する病気です。

感染経路は、手洗いが不十分な時などに、ポリオウイルスに感染した患者の便中のウイルスを経口摂取する経口感染が主体です。

体内に入ったポリオウイルスはのどや腸管で増殖し、リンパや血液の流れに乗って神経細胞に到達します。

神経細胞内で増殖する過程で、体を動かす運動神経細胞を特異的に傷害するのです。

典型的な症状としては、数日間の発熱や倦怠感の後に、突然筋力低下が出現します。

ポリオウイルス

ポリオウイルスは脊髄、特に腰髄を傷害する頻度が高く、下肢まひの患者が多いと言われています。

傷害を受けた神経細胞は元に戻らないため、まひは回復せず、生涯にわたって残ります。

生涯治らない症状を、不可逆的といいますが、ポリオのまひは不可逆的な症状で、これが問題視され、ワクチン開発に至りました。

実際の症状

症状の程度は様々です。急速に呼吸筋のまひが進行して死に至ったり、まひと筋肉の萎縮が強く歩行ができなくなったりする重症例がある一方で、注意して診察しないとまひに気づかない軽症例も存在します。

これは、病変の及ぶ神経細胞の数によると考えられています。

また、感染者の90%以上は感染しても症状が出ない場合(不顕性感染)もあり、まひ性ポリオになる患者の割合は数百人に一人とされています。

好発年齢

発病しやすい年齢は5歳以下で、一般には小児まひと呼ばれ、恐れられてきました。

19世紀後半から20世紀前半にかけて欧州や米国で数万人規模の大流行が起きました。

日本にも1950年代終盤にポリオ流行の大きな波が押し寄せ、1960年には患者数が5千人を超え、史上最悪の年といわれました。

ポリオは社会的大問題となり、テレビでは毎日、その日に判明した新規患者数を定時のニュースで流していました。

ワクチン開発~生ワクチン(OPV)と不活化ワクチン(IPV)~

日本でも大流行した翌年の1961年、日本はソ連(当時)とカナダから弱毒化経口生ワクチン(OPV)を緊急輸入し、全国の小児に一斉投与しました。

その効果は絶大で、流行は瞬く間に終息しました。

生ワクチンのとは病原体を殺さずに精製した、という意味です。

ワクチンの種類などに関しての詳細は下記の記事もご参照ください。

ワクチンのポイントと注意点〜不活化ワクチンと生ワクチン、トキソイド〜

2018年11月22日

ポリオワクチンの登場は1950年代半ばで、当初は、死んだ病原体やその成分のみを使用した不活化ワクチン(IPV)が支持されました。

しかし、OPV の方が IPVに比べ優れた集団免疫効果を発揮しました。

集団免疫効果とは、集団における大多数がワクチンの予防接種を受けた場合、その中で感染 者が現れてもワクチン未接種者への感染拡大が抑制されることです。

ポリオ弱毒化経口生ワクチン

生ワクチン(OPV)は安価で、輸送面にも優れ、投与も口からであり簡便であることから、1960年代以降、世界中に普及しました。

日本では1964 年から国産OPVの定期接種(当時は、生後3カ月以上4歳未満に、41日以上間隔をあけて2回接種)が開始され、80 年を最後に野生型ポリオの発症は見られません。

野生型とはワクチンを原因とするものではない、という意味です。

2017 年時点で残された野生型ポリオの流行国はパキスタン、アフガニスタン、ナイジェリアのみとなりました。

生ワクチンの影響

日本で野生型ポリオの発症は見られなくなりました。

ところが、OPVでは、250万~500万接種に1回の割合で自然のポリオと同じようなまひ症状(ワクチン関連まひ性ポリオ感染症=VAPP)を示すことがあります。

OPVの高い予防効果はこれまで何よりの恩恵だったのですが、野生型ポリオ感染症が見られなくなった先進国などではより安全なワクチンが求められるようになり、90 年代終わりごろから先進国を中心にVAPP発症のリスクがない不活化ワクチン(IPV) への転換が進められました。

ポリオワクチンの定期接種

日本では他の先進国に10年ほど遅れて 2012年9月、定期接種のポリオワクチンがOPVからIPVへ切り替わりました。

現在、IPV は生後3カ月から接種可能であり、3~8週間間隔で3回、3回目の約1年後(6 カ月後から接種可能)に4 回目を接種します。

接種スケジュールなどの詳細はこちらをご参照ください。ポリオ以外のワクチンも記載されています。

IPVの普及によってポリオ根絶への道は最終段階に入ったといえるのではないかと思います。

ただ、海外から日本への渡航者が感染していて、日本国内で感染が発生する可能性はまだあります。

ポリオウイルスの根絶が確実となるまでは、各国でワクチン接種による免疫維持の努力は続けていかなければなりません。

まとめ

予防接種の健康被害が社会問題化したことから、1975年~77年生まれの人では接種率が低下しました。

ポリオウイルスに対する抗体保有率は約40~60%と、他の世代(80%以上)に比べ低いと言われています。

ポリオワクチンの接種歴が母子手帳で確認できない人でも、抗体の有無は簡単な血液検査で調べられますし、予防接種自体も可能です。

風疹が話題になっている今、風疹以外の抗体があるかないか今一度確かめてもいいのかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!