様々な新しい薬や検査、医療技術が進歩することは喜ばしいことですが、その反面どんどん増えていく医療保険の費用。
これから高齢化社会が進む中、さらに深刻な状況になることは言うまでもありません。
増え続ける医療保険の費用の問題を解決するために、国は今後市販薬でも代替が可能なものの自己負担額が増えるかもしれません。
市販薬と同じような類似薬の患者負担額が上がるかもしれない
厚労省はドラックストアなどで医師の処方せんなしでも買える市販薬に似たような類似薬の患者負担の引き上げを検討しています。
現状、処方せんでもらえる一部の湿布や漢方薬は定率の1~3割負担です。
しかし、漢方や湿布などは処方せんがなくても買える薬です。
そのような薬に対しては、一定額を上乗せする案が浮上しています。
がんなど重症向けで増える高額薬は保険の対象に加えていくようです。
市販薬があるのに病院で処方される薬は年5千億円を超える
厚労省が今回の検討対象にするのは、処方箋なしで買える市販薬に類似した医療用医薬品です。
具体的には一部の湿布やビタミン剤、漢方薬、皮膚保湿剤などが含まれるのではないかと言われています。
現状は、患者の自己負担は現役世代なら原則3割、75歳以上で現役並みの所得がなければ1割で済みます。
残りの9割から7割は健康保険からの給付や税で賄われています。
患者としては市販薬より安価に入手でき、安易な受診につながりやすいとも言われていて、何より医療保険の費用の増大の問題の一つとも言われています。
日本経済新聞の調査では市販薬と同じ成分を含む医薬品の処方額は2016年度で5469億円にも及んだとのこと。
これには、一般用医薬品と処方せん医薬品の価格の差も問題の一つです。
実際、ある湿布薬は医療機関なら3割負担で96円ですが、同じ有効成分を含む市販薬は2551円と10倍以上の差がついています。
これだけの価格差が大きな問題とされていて、こうした薬については保険から外したほうがいいとの意見があります。
その一方で、厚労省は保険適用を維持する上で保険の重点を重症者向けに置く方が適切との見方がつよまっています。
定率負担に定額負担を上乗せ
これからは今までの1~3割の定率負担はそのままで、1回500円といった定額負担を上乗せする案があるようです。
現状の保険薬局で500円の定額負担を求めると、全体で年1000億円の削減につながると言われています。
それ以外にも、患者の自己負担率を現状から引き上げる案もあるようです。
しかしながら、薬の患者負担の見直しや保険外しは過去に何度も議論されてきましたが、実現には至っていません。
公的医療保険の給付範囲の縮小は国民皆保険を崩壊させる危険性があるとして日本医師会などの反対がかなり大きかったことが原因です。
病気によっては、受診を控えるようになれば重症化を招くおそれもあることも事実です。
高額の医薬品が次々と登場
高額薬の相次ぐ登場で公的医療保険を巡る状況は変わりつつあります。
2019年5月に白血病治療薬キムリアの公定価格が3349万円に決まりました。
一つの薬を一回使うだけでこの値段です。
乳幼児の難病治療薬ゾルゲンスマは1億円を超える可能性があり、今後早ければ年内にも保険適用が承認される予定です。
これだけ高額の医薬品が販売されると、医療保険制度を継続することが困難な状況になる危険性もあります。
これまで反対してきた日本医師会なども何が何でも(市販品類似薬を)保険適用という時代ではなくなっていくのではないか。
財政との見合いで考えなければならないとしていますを
海外の医療保険制度
フランスは薬剤の種類に応じて自己負担割合を変えています。
たとえば抗がん剤など代替のきかない高額医薬品の自己負担はゼロです。
しかし、他の薬は有効性などに応じて自己負担割合が100%、85%、70%、35%と分かれています。
重症患者ほど給付が手厚い制度といえるのではないでしょうか。
患者が保険薬局で受け取る薬剤費だけで2016年度は5兆5千億円にもなり、医療費全体が42兆1千億円でありその全体の13%を占めます。
まだ決定したわけではありませんが、今後の医療保険制度や自己負担額については、まだまだ目が離せません。