心臓の薬:ニトロの使い方~誤解ではなく正しく理解を~


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循環器の病気によく使われるニトログリセリン。

通称、ニトロと呼ばれています。

インターネットに、

「ニトログリセリンは作れますか?」

という質問がありました。

ベストアンサーは、

「濃硝酸と濃硫酸を1:3に混ぜたものにグリセリンを冷やしながら加えればできます」

です。

生化学系の研究室であれば、容易に手に入るもの。

もし研究をしたければ、薬学部へどうぞ。

薬剤師を目指して、薬学部へ。入学後、就職後のお金事情まで。

2018年9月10日

実際に研究室で作成したものが、医薬品に。
これは薬学部の醍醐味でもあります。

少し話がそれましたが、今日はニトロのお話です。

薬剤師目線:ニトログリセリン(ニトロ)の誤解

処方する医師も調剤する薬剤師も、大半は

ニトロは冠動脈狭窄を開く

と思っています。

実はこれ誤解なんです。

ニトロの主なターゲットは静脈です。

正確な作用は、

静脈に血管内ボリュームを引き取る
→心臓の仕事が減って
→心筋虚血の緩和

上記が、抗狭心作用の主な理由です。

薬としてのニトログリセリン(ニトロ)

爆発するニトロと実体は同じです。
爆発物は危険ですが、使い方によっては薬にもなるんですね。

ニトロの歴史は古く、19 世紀末には狭心症の治療に使われていました。

やがて、一硝酸イソソルビドや二硝酸イソソルビドなども開発されました。
これらをまとめて硝酸薬といいます。

日本では1953年にニトログリセリン舌下錠が発売開始。

空気に触れると徐々に効かなくなるという欠点がありました。

そこで 88 年から、口腔内で溶けやすく、失活しにくい現在使用されているニトロペン舌下錠 0.3mg が使われるようになりました。

意外な服用方法~なぜなめるのか~

ニトログリセリン(ニトロ)は飲むと正確な効果が発揮されません。

実際にニトロを飲むと体内では、

ニトログリセリンを飲む

→消化管で吸収

→肝臓で壊される

→効かない

というように飲んでしまうと効果がほとんどなくなってしまいます。
また、飲むことで即効性も失われます。

だから、ニトログリセリンは

飲んだらいけない

のです。

ちなみにニトログリセリン以外の硝酸薬では、この問題はありません。

なぜニトロで血管が開くのか

硝酸薬は血管拡張のスター的存在である、

一酸化窒素・エヌオー(NO)

を産生します。

内皮で作られたNOも硝酸薬のNOも、複数の経路で

細胞内 Ca2+濃度低下

→血管拡張

を促します。

なかでも大事なのは、

サイクリックGMP合成を亢進させること。

どんな病気、どんな時に使用するか

硝酸薬は冠動脈疾患だけでなく、

  • 心不全
  • 高血圧

の急性治療にも使います。

特に静注薬はかなり安いので、よく使用されています。

血管内ボリュームを静脈スペースに移動しやすくするのが硝酸薬の仕事です。

利尿薬ではダメか

血管内ボリュームを静脈スペースに移動するのであれば、

利尿薬で水をくみ出せばいいんのでは?

と思った方。ごもっともです。

しかし、利尿薬は大事なときには効きにくい。
また、時間がかかることや、電解質の変動もマイナス面として働きます。

水分過剰のときに、問題をストレートに解決してくれるところは長所。
患者さんごとの使い分けが重要です。

なぜ動脈への効果は少ないのか

静脈への作用は説明しましたが、では動脈へは作用しないのか。

動脈は酸素が豊富です。

NOは酸素が豊富にある環境では、NO2やHb-NO (ニトロソヘモグロビン) に形を変えてしまいます。

NOでいればこそ活躍できますが、動脈ではその姿でとどまれない
→硝酸薬は動脈では活躍しにくいのです。

なぜ静注を使うのか

即効性のある経口の硝酸薬は、実は血圧の急落の副作用のため心筋梗塞で使いにくい現状がありました。

静注硝酸薬が登場すると、

  • 細かい調節が可能
  • 心筋保護という概念に最適

ということで、心筋梗塞にも硝酸薬は使われるようになりました。

今は心筋梗塞でもステントをすぐに入れるので、静注硝酸薬の活躍のチャンスは減少しています。

硝酸薬の時代は終わったのか

虚血やニトロという言葉はすでに

昔の名前

になりつつあります。

心不全にはまだ登場の余地は残っています。

日本ではヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)の使用が多いですが、海外ではまだ硝酸薬がメイン。

高血圧の緊急症でも使えます。

お値段以上の働きをするニトロ。
お値段以上、○○○と同じですね。

経口薬の今後、未来があるか

少し古いデータですが、海外では心筋梗塞後の5分の1に硝酸薬が投与されていました(GRACE 試験、2010年)。

しかし、心筋梗塞後に経口硝酸薬を続けても死亡率は下がりません。

心筋梗塞の再発は、硝酸薬ありで16%、なしだと39%。
逆に不安定狭心症は硝酸薬が使われている方に多かったのです。

結果としては、冠動脈のイベントは総数としては減らない。
しかし硝酸薬は

心筋梗塞の手前の不安定狭心症で踏ん張らせてくれるのではないか

という解釈もあります。

あまり登場する機会の減ってきた硝酸薬。

今後の価値についての議論は、まだまだ続きそうです。

まとめ

硝酸薬である、ニトロについて記載しました。

ニトロの作用の仕方(作用機序)については、医療者も意外と誤解していることも少なくありません。

硝酸薬には、舌下錠としてのニトロ以外にも貼付剤などもあり、利便性は高い薬剤です。

患者さんに合った、適材適所で薬を適正使用していきたいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!