昨年のインフルエンザに学ぶ、【10の重要ポイント】


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薬剤師目線:インフルエンザについて

そろそろ夏も終わり、秋から冬にかけて流行するインフルエンザ
2017年、The Lancetでのインフルエンザセミナーのまとめについてです。
かなり有名な国際学会ですが、医療関係者はもちろん、それ以外の方にも参考になるポイントがありました。
有名な医師が専門的な説明をしてはいますが、ここでは、簡潔に噛み砕いて記載します。

インフルエンザの重要ポイント

重要な項目として、10点あります。
  • 世界的流行を起こすのはインフルエンザA、インフルエンザBが起こす可能性は低い。
  • 昨年の流行はインフルエンザAのH3N2とH1N1。特にH3N2は死亡率が高い。
  • 2峰性発熱(一度解熱後の再発熱)はインフルエンザ後細菌性肺炎疑った方がいい。
  • インフルエンザの平均再生産数は1.281人がインフルエンザになると1.28人にうつす)と言われている。
  • 医療者は、インフルエンザ診察時はサージカルマスク着けることは必須。気管支鏡検査時ではN95まで使用すべき
  • ウイルス排出は発症初期12日がピーク、この時期に検査を行うことがベスト。
  • タミフル、リレンザ、ラピアクタは発症48時間以内が効果的、健康人で症状を1日未満短縮。
  • タミフル、リレンザ、ラピアクタは重症患者で肺炎になるリスク、入院期間を減らす。
  • 予防に最も効果的なのはワクチン!65歳以上、妊婦、小児、免疫不全、医療者で推奨!
  • ワクチン株と流行株が一致すればワクチン有効率は50-60

ワクチンの重要性 

インフルエンザ予防に最も効果があるのはワクチンです。
かつて日本では、インフルエンザに対し、1960年代から1980年代後半まで小中学校で強制的にインフルエンザのワクチン接種が行われていました。
しかし副反応の事例にマスコミ、市民が過剰反応し、1987年以降、任意接種となりました。
どこかで聞いたような流れですね。。。。。
このような日本の過去の事例に関して、米国の研究者によってある論文が発表されました。
2001年のThe New England Journal of Medicineという海外の有名な論文です
この論文には日本人の共同研究者の名前もあります。
論文というと難しい話になると思うので、要点をまとめると、
 
 次の3つです。
  1. 日本でインフルエンザワクチン接種は1962-1987年まで学校で強制的に行われた。
  2. 1987年の中止により日本の全死亡率及び老人の肺炎死亡率が上昇した。
  3. ワクチン強制接種は免疫により老人死亡率を抑制していた。
つまり、小中学生がワクチン接種によりインフルエンザにならなかった。
それにより老人もインフルエンザにはかからなかった。
そしてこれにより。老人の肺炎死亡を抑制していた。
という内容です。
 
2001年に論文は発表となりました。通常ではインフルエンザワクチンの必要性が議論されてもいいはずです。
しかし、マスコミはこの論文を完全に黙殺し、一切話題にはなりませんでした。

重要ポイントの解説

1.世界的流行を起こすのはインフルエンザAでありBは起こさない。

 インフルエンザは過去100年に4つのpandemics世界的大流行)を起こしました。
なおendemicepidemicpandemic等の言葉の定義は次の通りです。
  • Endemic : 風土病。特定の地域で発症する病気
  • Epidemic : 流行病。地域で一時期に多数の発症
  • Pandemic : 世界的流行病。国中または世界中で発症
 インフルエンザABepidemic (流行病)を起こしますが、Aは散発的にpandemic(世界的流行)を起こします。
驚くべきことに歴史的にインフルエンザBは、世界的流行(pandemic)は起こさないことです。
 
過去、世界的流行には下記4回がありました。いずれもインフルエンザAです。
  • 1918年 H1N1 Spanish influenza, 世界で20004500万人死亡。1977年再発生したが pandemicにならなかった。
  • 1957年 H2N2 Asian influenza
  • 1968年 H3N2 Hong Kong influenza:中でも罹患(インフルエンザにかかる)率、死亡率が最も高い。
  • 2009年 H1N1 swine influenza

2.昨年の流行はインフルエンザAのH3N2とH1N1。特にH3N2は死亡率が高い

現在、世界で流行しているのは、1968年のH3N2 influenza Aと、2009年にpandemicを起こしたH1N1 swine(豚) influenza Aで、Influenza Bとともに流行しています。
インフルエンザ株の記号の意味は次の通りです。
【ウイルスのタイプ(AB/最初に分離された場所/株の番号/年号/HANAの亜型】
 
A/シンガポール/GP1908/2015(H1N1)pdm09
A/香港/4801/2014H3N2
B/プーケット/3073/2013(山形系統)
B/テキサス/2/2013(ビクトリア系統)
  

3.2峰性発熱はインフルエンザ後細菌性肺炎疑った方がいい。

2峰性発熱とは、一度解熱したあとに再度発熱することです。
インフルエンザと診断された患者、もしくはインフルエンザを疑う患者がそのような発熱を示した場合、インフルエンザの後の細菌性肺炎を疑い、抗生剤の使用を考える必要があるようです。


4.インフルエンザの平均再生産数は1.28。(1人がインフルエンザになると1.28人にうつす)

インフルエンザの流行は平均再生産数(1人が平均何人に感染させるか)1.28で、発病率は10-20%だそうです。
つまり、インフルエンザ患者1人が平均1.28人に感染させるという意味です。
これ実際どれくらいすごい、やばいんだろうと思いませんか。
わかりにくいので、参考までに最近話題になった麻疹についてみてみると。
 
麻疹は1人いると、16人から21人に感染するのです。
 
麻疹のほかにもムンプス、百日咳の感染力はすごいんです。
そう、やばいんです。
麻疹患者が1人いると麻疹や水痘は空気感染します。
空中に漂っていますから近づくだけで感染するのです。
インフルエンザは、人口の50-67%が免疫を持っていないと、流行を抑えられません。
ワクチン接種がとても重要です。
 

5.医療者はインフルエンザ診察時はサージカルマスク着けることは必須。気管支鏡検査の場合はN95マスク

 インフルエンザウイルスはヒトヒト感染が基本です。。
感染は空気感染、飛沫感染、接触感染の3つによります。
くしゃみや咳で直径0.1100の感染粒子が排出されて飛沫感染が起こります。
 
この飛沫は急速に乾燥して5以下になり数分から数時間空中を漂います。
これを吸入して感染するのが空気感染(air transmission)です。
結核、麻疹、水痘は空気感染で、くしゃみ、咳をされなくても部屋に
入っただけで感染します。
 
インフルエンザは空気感染も起こり飛行機内で数時間換気システムが壊れ53人中、38人(78%)が発症した報告もあります。
 
空気感染で有名なのは、特に結核、麻疹、水痘です。
医者の間で覚え方は「ケツに麻酔(結、麻、水)」というらしいです。
下品ですが、一発で覚えられるかと。
但し、結核は空気感染だけですが、麻疹と水痘は飛沫感染、接触感染も起こしえます。
 
結核は空気感染なので、個室隔離が必要です。
患者にはサージカルマスク、医療者はN95マスクを着けて入室します。
しかし、飛沫感染や接触感染はないので、ゴム手袋や、ゴーグル、ガウンテクニックは不要といわれています。
 
くしゃみ、咳で出た大きな粒子は、周囲2,3mに付着し、インフルエンザは接触感染も起こします。ウイルスは手の表面でも短時間残存します。
周囲のすべすべした表面なら48時間位感染力があるそうです。
 
通常、インフルエンザ患者のケアでは医療者にサージカルマスク着用を推奨しています。
換気がよければサージカルマスクで伝染はたいてい防げるそうです
インフルエンザ患者に接する時は、サージカルマスクを着けましょう。
気管支鏡、挿管では医療者はN95マスクが必要です。病院内限定での話にはなりますが
 

6.ウイルス排出は発症初期の12日がピーク、この時期に検査することが重要。

 インフルエンザの症状は、潜伏期1-2日で、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、倦怠感(malaise)、食欲不振があります。
発熱が最も重要な症状で、最初の24時間で最高41度にもなります。
発熱などの全身症状は典型的には3日続きますが8日まで長引くことがあります。
 
呼吸器症状としては、乾性咳嗽、鼻汁、咽頭痛。
眼科症状には、羞明、結膜炎、流涙、眼球運動痛があります。
熱が治まっても咳、倦怠感は2週間続くことがあります。
 
小児では成人より発熱は高いことがあり熱性けいれんも起こります
小児ではふくらはぎの激しい筋肉痛や、筋炎を起こしやすいとのことです。
 
インフルエンザの身体所見は顔面紅潮、粘膜発赤、透明鼻汁、結膜充血、頸部リンパ節腫脹があります。
 
インフルエンザの診断はその症状の多彩さから、症状からの診断は困難です。
流行していて発熱と咳があり見た目が重ければ疑います。
ウイルス排出(viral shedding)は典型的には潜伏期から始まり、発症の最初の
1-2日にピークがあり減少し1週で消失、臨床症状の激しさとよく相関します。
無症候性の場合、ウイルス排出はよくわからないそうです。
 
インフルエンザテストはウイルス排出の多い初期に検査を行います。(経験者はわかるあの鼻の奥までキットをつっこむあれです)
感度は59-93%といわれています。
インフルエンザで肺炎も起こりますが、筋炎、横紋筋融解も稀におこり、歩行困難、腎不全に至り4-6週続くとのことです。
  

7.タミフル、リレンザ、ラピアクタは発症48時間以内が効果的、健康人で症状を1日未満短縮。

抗ウイルス薬には5種類あります。
タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビル、そしてゾフルーザ。
  
2007-2008年に発生したInfluenza A  H1N1に対してタミフル耐性株が出現しました。
タミフル、リレンザ、ラピアクタは発症48時間以内の早期投与が一番効果があります。
そしておそらく、ゾフルーザも。
研究ではこれにより健康成人で臨床症状は1日未満短縮します。
「えっ?」と思いませんか。
そう、基本的にインフルエンザは薬を使わずともヒトの免疫で治るといわれています。
本当の意味で抗インフルエンザ薬が必要な患者は限られているといわれています。
日本はタミフルの最大消費国です。
抗インフルエンザ薬も適正使用が重要ですね。

8.タミフル、リレンザ、ラピアクタは重症で肺炎になるリスクと入院期間を減らす。

 上に書いた限られている患者。それが重症患者です。
重症患者においては、薬を使わなかった時と比べて肺炎になるリスクが下がり、入院期間も短縮したという報告があります。
 
つまりタミフル、リレンザ、ラピアクタは、健康成人では1日未満症状を減少させるに過ぎない。
しかし、入院するような重症患者では、肺炎と入院期間短縮には効果がある。
ということです。

9.予防に最も効果のあるのはワクチン!65歳以上、妊婦、小児、免疫不全で推奨!

 インフルエンザ予防に最も効果のあるのはワクチン接種であり、医療機関ではワクチンの接種率を100%に近づけようと日々努力しています。
なかなか理解が得られない部分もありますが、ワクチンは特にハイリスクグループである65歳以上、免疫不全、小児、
妊婦、医療者で推奨されます。
 
ワクチンは日本でも6ヶ月未満では認可されていませんのでそのような子供がいる母親のワクチン接種が乳児の予防につながります。
しかし母親は副作用を恐れて接種したがらない現状もあります。
特に妊婦さん。
いろいろな情報があり、妊婦さんなのにワクチンを副作用の怖さから接種しない方がいます。
妊婦のワクチン接種で母体、胎児で副作用は増加しません。
胎児の不育や流産とも関係がないこともわかっています。
つまり、妊婦への接種を推奨しましょう。

10.ワクチン株と流行株が一致すればワクチン有効率は50-60

ワクチン株と流行株が一致していれば有効率は50-60だそうです。
ワクチンの効果は100%ではありません。
こう書くと「それなら意味ないじゃん」といわれるかもしれませんが、すべての薬において効果が100%の薬はありません。
ですが、だからといって風邪のときの解熱剤などを服用しないことはないと思います。
それと同じで、ワクチンも防げるのであればという考えで接種を考えるべきです。

まとめ

  • 世界的流行を起こすのはインフルエンザA、インフルエンザBが起こす可能性は低い。
  • 昨年の流行はインフルエンザAのH3N2とH1N1。特にH3N2は死亡率が高い。
  • 2峰性発熱(一度解熱後の再発熱)はインフルエンザ後細菌性肺炎疑った方がいい。
  • インフルエンザの平均再生産数は1.281人がインフルエンザになると1.28人にうつす)と言われている。
  • 医療者は、インフルエンザ診察時はサージカルマスク着けることは必須。気管支鏡検査時ではN95まで使用すべき
  • ウイルス排出は発症初期12日がピーク、この時期に検査を行うことがベスト。
  • タミフル、リレンザ、ラピアクタは発症48時間以内が効果的、健康人で症状を1日未満短縮。
  • タミフル、リレンザ、ラピアクタは重症患者で肺炎になるリスク、入院期間を減らす。
  • 予防に最も効果的なのはワクチン!65歳以上、妊婦、小児、免疫不全、医療者で推奨!
  • ワクチン株と流行株が一致すればワクチン有効率は50-60

以上の重要ポイントを頭にいれて、今年のインフルエンザの対策につなげられたらいいなと思います。

もちろん、手洗いと咳エチケットも重要ですよ。

最後まで、おつきあいいただきありがとうございました。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!