新年明けて寒暖差の激しい日が続いています。
暖かくなったと思ったら、雪が降るほどさむくなったり。
昨年のインフルエンザシーズンは1999年の統計調査開始以来、最大のインフルエンザの流行を記録。
今年もそれを上回るほどの流行が話題になっています。
今回はインフルエンザの中でもその検査に注目して記載していきます。
目次
薬剤師目線:インフルエンザの検査は信用できるのか。痛くて辛い検査の詳細を説明します。
インフルエンザ検査の重要性と信頼性
インフルエンザかどうか、検査してください
と、クリニックや病院を受診される方はたくさんいます。
すぐに結果がわかるものの、鼻の中に綿棒を入れ、鼻の粘液をとってインフルエンザかどうかを判定する迅速検査は、痛くて辛い検査です。
カナダのモントリオール大学の報告によると、
感度(インフルエンザに罹患している人の中で、検査が陽性である人の割合)は62%、
特異度(インフルエンザに罹患していない人の中で、検査が陰性である人の割合)98%。
実は、陽性が出ればインフルエンザであると確定できるのですが、陰性であったとしても、インフルエンザではない、とは言い切れない検査なのです。
インフルエンザの検査、結論から言ってしまうと実は、
陽性が出ればインフルエンザは確定できるのですが、陰性であったとしてもインフルエンザではない、とは言い切れない検査なのです。
インフルエンザワクチンとインフルエンザ治療薬
そもそもインフルエンザの感染や重症化を予防するための予防接種をされた方はどれほどいるでしょうか。
また、今年のインフルエンザで話題になったのは新しい抗インフルエンザ薬である、
ゾフルーザ
実際にこの薬を処方された方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。
従来よりも多くのゾフルーザが処方されているとの見方もあります。
ゾフルーザは、たった1 回服用するだけでよく、ウイルスの減少効果はタミフルよりも早いなどのメリットもありますが、最近ではゾフルーザ耐性株の存在が報告されたりもしています。
ゾフルーザについての詳細は以下の記事をご参照ください。
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販売開始から1年も経たずに耐性が報告された背景としては、使いすぎもあるのかもしれません。
インフルエンザ
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染しておこる感染症です。
咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状の他に、38 度以上の高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの全身の症状がみられます。
稀にではありますが、子供では急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人は肺炎を合併するなど、重症化することもあります。
風邪とは違う?インフルエンザ
そもそも風邪とは違うのですか?
という声も多く聞かれます。
俗に言う風邪はかぜ症候群と呼ばれ、ライノウイルスやコロナウイルス、RS ウイルスやアデノウイルスなどが主な原因ウイルスとなります。
インフルエンザも同じウイルスが原因ではありますが、風邪の場合、インフルエンザほど高熱にはならず、咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状が中心で、重症化することはあまりありません。
インフルエンザウイルス
インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があります。
そのうち、ヒトに感染し流行を引き起こすのはA 型とB 型です。
インフルエンザの流行には季節性があり、日本では、毎年12月から3 月にかけて流行します。
では、どうして毎年流行するのでしょうか?
インフルエンザが流行する理由
インフルエンザウイルスには、型だけでなく、株とよばれるさらに細かな分類があります。
インフルエンザウイルスの表面の突起物であるHAと呼ばれる構造の違いを分類したものです。
私たちのカラダの免疫システムは、このHAの構造を記憶しているのです。
しかしながら、HA の遺伝子は毎年のように変異を起こします。
そうすることでインフルエンザウイルスは、我々の免疫システムから逃れ、毎年流行し続けているのです。
こうしたことから、予防接種をすることがインフルエンザの一番の対策となります。
アメリカのFDAでも、
FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、年に1度の予防接種の代わりにあるものはない
と述べています。
インフルエンザワクチン
インフルエンザワクチンは、現在、A型とB型ともに2種類の株、つまり4 種類の株に対応できるように作られています。
その際、WHOを中心として、どの株が流行するかが予想されており、これまでに予想が外れてワクチンが効かなかったという事態はほとんど生じていません。
また、インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンであり、病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となります。
そのため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まります。
インフルエンザワクチンの場合、3カ月程度しか効果は持続しないため、流行のシーズン前に接種する必要があります。
インフルエンザワクチンの有効性
米国疾病管理センター(CDC)のインフルエンザワクチンの有効性の報告によると、
65歳未満の健常者ではインフルエンザの発症が70~90%減少、
65歳以上の老人施設に入居されていない高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院が30~70%減少、
老人施設に入居されている方は、インフルエンザの発症が30~40%減少、
肺炎やインフルエンザによる入院が50~60%減少、
死亡リスクが80%減少したといいます。
また、1歳から15歳の子供にも、インフルエンザの上気道症状に対して77%から91%有効であったとのことでした。
インフルエンザになってしまったら
インフルエンザの予防には、日々の手洗いうがいと予防接種が欠かせませんが、インフルエンザに感染してしまった場合、どうすればいいのでしょうか。
こまめに水分を摂って、ウイルスの侵入経路である喉を潤し、よく休んで体力を回復させ、ウイルスを増殖させないようにし、軽いうちに自力で抑え込むことが大切です。
併せて大切なのが、人にうつさない行動をとる、つまり自宅で休養することです。
アメリカのCDC は、65歳未満のハイリスクでない成人は、検査も治療も必要としません、と言います。
インフルエンザが疑われるときは、息が苦しい、意識がおかしいといった状況でない限り、早期の受診を促すのではなく自宅療養でいい、ということです。
ほとんどの人は、抗インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、5 日から7 日ほどで軽快します。
喉が痛い、熱が出た、節々が痛い、体がだるい……そういった症状が出たら、何かしらのウイル
スが体に侵入して闘っているということを意味します。
それが、インフルエンザウイルスなのか、風邪のウイルスなのか(場合によっては細菌感染もあります)、軽症の場合、区別はつきません。
まとめ
インフルエンザに限らず検査はほとんどの検査において、100%の信頼性があるものはありません。
インフルエンザの流行も下火になってきましたが、これからはインフルエンザB型が流行する時期です。
咳エチケットなどの予防も重要ですが、体調が悪いときは無理せずしっかり休むことも重要です。
最後に、インフルエンザについての興味深い知識を一つ。
ニューヨークにあるコロンビア大学が1975年から2008年にかけて40カ国78都市で調査した結果、
インフルエンザウイルスは、乾燥していて寒い気候を好むだけでなく、湿度が高くて雨が多い気候も好むこと
がわかっています。
実際に、一年を通して気温が高い東南アジアでは、雨季にインフルエンザが流行しているのです。
日本でも東南アジアと同様に、亜熱帯に属している沖縄では夏にもインフルエンザが流行しています。
温暖化が進めば、今後本州でも夏にインフルエンザが流行する、なんてこともあるかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。