風邪に抗菌薬は効かない。飲む必要がない薬はやめましょう!


スポンサーリンク

世界的にも、問題となっている「抗菌薬の適正使用」。

漢字ばかりで難しそうではありますが、簡単に言うと

必要なときに効果のある薬を必要な分の量使いましょう!!

ということです。

適正という言葉はよく使われますが、何事も適正というのは難しいものです。

中でも抗菌薬。
これについては感染症の専門家がまだ日本に少ないこともありますが、それ以上に全世界で多様されていて、問題となっています。

「抗菌薬の適正使用」=薬を適正に使用する

薬剤師としては当たり前のことのように聞こえますが、今回の抗菌薬に至ってはガイドラインなどあるものの、実際に適正に使用するのは困難です。

抗菌薬は当然ながら細菌という微生物を殺します。そのため細菌感染症の治療に使われます。

いやいや当たり前でしょと思う方もいるかもしれませんが、現実には細菌感染症以外にも使われていて、それが昨今話題の薬剤耐性菌にも関係するため政府が対策に乗り出しています。

そう。それが薬剤耐性アクションプラン。

AMRなんて言葉も聞いたことがあるかもしれません。薬剤耐性の英語の略です。

今回は以下の内容について書いていきます。

薬剤師目線:薬剤耐性について

WHOが問題視してから、世界中で対策が始まった薬剤耐性について。

厚生労働省も2020年までの目標を決めて、薬剤耐性(AMR)アクションプランと銘打って対策やキャンペーンを実施しています。

なんでそこまで問題視されたかは、こちらをご参照ください。

2013年の時点で、このまま何も対策を取らないと、薬剤耐性による死亡者数が現在志望者数No.1のがんを超えると予想されたからです。

「個人や社会において、抗菌薬の使用増加は耐性菌の増加と関連」するといわれています。

そこで我々医療者が取り組むものとしては、抗菌薬の適正使用

そう、抗菌薬の不適切な処方を減らすことです。

不適切な処方が特に多いと言われているのが、風邪への抗菌薬です。

風邪に抗菌薬?

抗菌薬の不適切な使用。その一つが「予防のため」。

風邪の原因の9割はウイルスです。

そのため、抗菌薬は効きません

しかし、細菌感染症かわからないけど、風邪をこじらせて肺炎になるといけないと、予防のために「念のため」抗菌薬が多く処方されています。

しかし、風邪に対して抗菌薬を投与してもしなくても臨床的な転帰は変わらない。

さらには、抗菌薬の有無で風邪後の細菌感染合併症は変わらない。

と言われています。

ですが、実際には多く処方されている。抗菌薬。

中でも第3世代セフェム系内服抗菌薬は多用されています。

第3世代セフェム系内服抗菌薬について

抗菌薬の種類はたくさんありますが、中でも第3世代セフェム系薬は多いです。

 

風邪への使用は不適切であるばかりか、第3世代セフェム系内服抗菌薬はバイオアベイラビリティ(BA)がとても悪いです。

バイオアベイラビリティとは、口から飲んだ薬がどれくらい体の中に吸収されて効果を発揮するかということを、数値化したものです。

バイオアベイラビリティをBAと略しますが、BA=50%の薬は、

飲んだ量の半分だけ体に吸収されて、効果を発揮するという意味です。

50%。。

この数値皆さん、どうですか。

半分も吸収されていると考えるか、
半分しか吸収されていないと考えるか。

そこで代表的な抗菌薬のBAを表にしてみました。

この表に示すように、経口の第3世代セフェム系内服抗菌薬のBAは50%以下です。

吸収されにくい薬剤の効果がイマイチなのは言うまでもありません。

イマイチなだけならまだしも、抗菌薬には偽膜性腸炎という副作用もあります。

副作用という観点では、興味深い報告もあります。

生後2歳までに抗菌薬使用歴があると、5歳時にアレルギー疾患があるリスクが高い可能性があるとの論文が昨年発表されました。
詳細はこちらをご参照ください。
https://www.ncchd.go.jp/press/2018/antibiotic-use.html

これは第54回日本小児アレルギー学会学術大会で優秀演題賞を受賞した発表です。

子供の風邪。

特に親御さんは薬が欲しいと言ってくる場合も少なくないと思います。

自分も親としては、子供の辛い所はみたくない。
薬で早く治るなら、薬を!!!と思いがちですが。。。

脅すつもりではないですが、抗生剤にも副作用やリスクがあることをきちんと説明して、抗生剤の処方希望を無くすことも今後は薬剤師として重要な役割かもしれません。

さらには一般名で語尾にピボキシルがついているものは、低カルニチン血症による低血糖の副作用も報告されています。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)という、薬の情報を集約して発信している団体。

薬の説明書である添付文書の作成などに関わっている場所です。

そのPMDAから4年前ですが、適正使用の通知も出ています。

https://www.pmda.go.jp/files/000143929.pdf

体内のカルニチンが低下することで血糖が下がります。

薬剤師として、少し専門的な話をすると。

機序としては、カルニチンが低下することで脂肪酸β酸化が行われなくなり、糖新生も行えないため、低血糖発作が起きるというものです。

そしてこの、ピボキシル基。

オラペネムにもついているんです。

一般名テビペネム・ピボキシルです。
経口で唯一のカルバペネム系薬。

吸収率は50~70%程度と言われているので、第3世代セフェムよりはいいとおもいますが、私自身オラペネムを使用する機会は全くないと考えます。

というのもカルバペネム系薬は最後の切り札的な位置づけと考えています。

それなのに、外来などで多用されカルバペネム耐性菌が増えてしまうと、いざ重症感染症で入院となった際に、使用できる抗菌薬が限定されてしまうからです。

むしろ使える抗菌薬がない場合もあるかもしれません。

これからの未来に使用できる抗菌薬を残すためにも「抗菌薬適正使用」はとても重要です。

まとめ

・薬剤耐性対策は世界的な問題で、日本でも対策を講じないと大変なことになる。

・風邪に抗菌薬は効かない。抗菌薬を使用する前に、経時的な診察にて観察することも重要

・抗菌薬にも副作用やリスクは存在する。本当に必要な症例に使用しないと、将来使える抗菌薬がなくなってしまうかもしれない。

風邪に対しては、対症療法でと説明をされると

「効き目がよくないけどとりあえず、または少ない。。」

みたいなイメージがあるかもしれません。

そのような誤解を招かないためにも、医療者としての説明は、

「現在出ている症状について、効く薬を使っていきましょう。」

と伝えることも抗菌薬適正使用推進になるかもしれません。


スポンサーリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!