子供(小児)の感染症の流行:不顕性感染に注意が必要


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インフルエンザやノロウイルスが流行してくるこの時期。

特に子供の感染症については、親はもちろん学校や地域のコミュニティでも注意が必要です。

この記事の題名にもある不顕性感染という言葉はご存知でしょうか。

不顕性感染とは、日本救急医学会では以下のように定義されています。

不顕性感染(ふけんせいかんせん)
細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず,感染症状を発症していない状態をいう。
一般に感染しても必ず発症するとはいえず,大部分がこの不顕性感染となる。
感染症状は抗体陽性や遅延型過敏反応などで確認される。
不顕性感染の人はしばしば保菌者(キャリア)となり,病原体を排泄し感染源となる可能性が高いので疫学上問題となる。

かなり難しい単語も並んでいますが、要約すると、

あるウイルスや細菌に感染していても症状がない人のことです。

大人における不顕性感染が、子供に与える影響について昨年の小児感染症学会のシンポジウムで取り上げられました。

今回は、見逃されそうな子供(小児)の感染症対策についてです。

ちなみに、冬の感染症対策については以下の記事も参照してください。

冬の感染症対策:インフルエンザ、ノロウイルス~医療・介護施設から家庭まで~

2018年12月20日

薬剤師目線:ウイルス感染症と不顕性感染者対策について

昨年、第50回日本小児感染症学会総会・学術集会が11月10~11日、福岡市内で開かれました。

10日に行われたシンポジウムで、
ウイルス不顕性感染者が存在することの認識は進んでいるが対策は不十分であること。
さらに、手指衛生を含めた標準予防策やワクチン接種などの基本徹底が重要であることが発表されました。

インフルエンザウイルスの不顕性感染

インフルエンザの不顕性感染については、ある中学校での流行を例にとると、189人中100人が感染し、このうち無症状は71人で不顕性感染率は37.6%であったとのこと。

ウイルスの排泄期間が短く、ウイルス量も10分の1~100分の1と少なかったですが、感染を周囲に広げる可能性は十分あり、症状のある人だけの隔離では対策は不十分だと指摘されています。

ノロウイルスの不顕性感染

ノロウイルスの不顕性感染では、有症状者と不顕性感染者ではウイルス量の差がなく、微量でも感染するため、不顕性感染者でも注意が必要といわれています。

キャンプでは手洗い、使い捨て紙タオル、トイレを症状の有無で分ける対策で、伝播(ヒトからヒトへうつること)を84.8%減少させたとする報告もあります。

パレコウイルスの不顕性感染

パレコウイルス、正式にはヒトパレコウイルスといいますが、このウイルスでは成人の75%が不顕性感染をしているともいわれています。

感染症の症状がない人からもPCRという遺伝子を検出する検査によって、喉の奥や便からウイルスが検出されるようになり、一定の割合で不顕性感染者が存在し、流行開始や流行期間の延長に関与しているのではないか との見解が示されました。

成人に感染しても問題とならないウイルスですが、子供や特に新生児や乳児が感染すると重篤な状態に至ることもあります。

ヒトパレコウイルス(HPeV)とは

2014年にm3.comでも取り上げられた内容の一つに、

ヒトパレコウイルスに流行の兆しというものがありました。

胃腸炎や呼吸器疾患、新生児敗血症症候群との関連が取りざたされているヒトパレコウイルス(HPeV)の感染が急増しているとの調査結果が報告されていました。

この調査では、国立感染症研究所が病原性微生物検出情報として速報したものです。

この発表によると、2014 年3月と5月は新潟県新発田市でHPeV3型の感染がそれぞれ1人認めた程度であったのに対し、6月は4人、7月は同市に隣接する新潟市と長岡市で11人と増加していたというものです。

全てが生後3カ月未満の乳児(0カ月児5人、1カ月児8人、2カ月児4人)でした。

検査時の臨床診断名は敗血症で、発熱や頻脈、網状チアノーゼが目立ったといわれています。

日本国内で最近発生したHPeV3型の流行は2008年と2011年で、既にこの報告の3年前には今年の流行が予測されていました。

過去の流行は6-8月にピークを迎え、手掌や足底の紅斑を認めたとの報告が多数あったといわれています。

2014年は同じ日本海側の石川県でもHPeV3型の検出報告があり、HPeV3型の流行による患者数の増加に警戒が必要と言われていました。

そして生後3カ月未満で敗血症や髄膜脳炎を疑う患児では、HPeV3型の感染を鑑別に挙げて適切な検査を行うよう呼び掛けられていました。

小児科として重要なパレコウイルスA3

子供の感染症として重要なパレコウイルス。

主に腸管で増殖して糞口感染するものですが、 咽頭にもいるので飛沫感染もあるといわれています。

通常は無症状~軽症の呼吸器症状・胃腸炎ですが、新生児や早期乳児に敗血症や髄膜脳炎を起こす危険性があり、現時点で特異的治療法はありません。

2016年にパレコウイルスA3感染症に罹患した新生児や早期乳児の家族内の便を調べたところ、小児86%、成人36%でウイルス が検出されました。

そのうち、小児33%、成人75%が不顕性感染者だったという結果から、成人の不顕性感染が多く重要な感染源である可能性があるといわれています。

パレコウイルスへの対策

ワクチンは現時点ではなく、対策としては手指衛生と、症状がある期間における標準予防策と接触感染予防策しかないといわれています。

まとめ

あまりなじみのないパレコウイルスから身近なインフルエンザ、ノロウイルスについてまとめてみました。

特にパレコウイルスは成人では感染してもほとんど問題ないのに対し、新生児や乳児が感染すると危険があります。

なかなか聞きなれないウイルスですが、しっかりとした知識を得ることが重要です。

そして家などでできる対策としては、基本的な手洗いが中心となります。

医療関係者の中でも、

ウイルス不顕性感染者が存在することの認識は進んでいるが、対策は不十分。
手指衛生を含めた標準予防策やワクチン接種などの基本徹底が重要。

と言われています。

ご家庭でも、感染症に注意が必要なこの時期。

手指衛生の徹底をお願いします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!