漢方や薬膳を使って女性の健康をサポート

女性の健康をサポートする方法はさまざまありますが、漢方ハーブ薬膳などに日ごろから注目している女性は少なくないと思います。

薬草やハーブは女性の関心が高い一方で、健康被害の報告などもあり誤解されている部分もあります。

また、危険ドラッグなどの脱法ハーブと同じようなイメージを持たれることも多く、正しい知識の発信が必要です。

今回は、薬剤師の立場から女性の健康をサポートするために役立つ情報を記載していきます。

漢方の服用方法としては、食前が多くその理由や飲み方に関しては、こちらの記事を参照ください。

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漢方薬のエビデンス(治療の根拠)

もともと漢方は中国4000年の歴史などと言われたり、根拠となるものがあまりないというイメージがあると思います。

それでも最近は、日本東洋医学会から漢方治療エビデンスレポートが発表され、レベルの高い報告が積み重ねられています。

述語のイレウス(腸重積)の防止によく使用される、大建中湯はエビデンスに基づく漢方処方の一つです。

さらに大建中湯は多くの検討がされていて、大腸がん術後の投与で入院日数を減らし、医療費削減効果も認められています。

大腸がんだけでなく、女性の代表的ながんである乳がんでも十全大補湯はがん化学療法とホルモン療法との併用で、生存率が改善したという報告もあります。

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がんの治療に使用する注射薬(化学療法)による倦怠感や悪心、手足症候群にも漢方薬が有効とされていて、さらに今ではがんの支持療法に使われることもあります。

女性によく使われる漢方

病院内だけでなく、在宅やクリニックでも西洋薬と一緒に処方されることが多くなってきた漢方薬。

緩和ケアの分野では、芍薬甘草湯牛車腎気丸などが使われています。

鎮痛薬は腎臓に負担がかかるものもあり、漢方薬を使用することで腎機能が改善したという報告もあります。

漢方薬は痛みを取る効果だけでなく、痛み以外の症状も含めてしっかりと選ぶと痛み以外の不快な身体や精神状態を和らげて、生活の質を上げることもできます。

よく月経痛や更年期障害で使われる、

  • 当帰芍薬散
  • 桂枝茯苓丸
  • 加味逍遙散

これらの漢方はどれも月経痛と更年期障害に効果がありますが、それ以外の不快な状態に合わせて選ぶ必要があります。

そして、漢方薬の利点の一つとして、処方せんなしでもドラックストアなどて購入することができます。

漢方専門の薬局では、相談内容や症状に応じた漢方薬を提案してくれるところもあります。

更年期はがんの好発年齢でもあります。

漢方の相談から定期検診を勧められて、初期の段階でがんが見つかる、なんてこともあるかもしれません。

漢方に含まれる生薬ついて

婦人科でよく使われる、当帰芍薬散や十全大補湯の中には芍薬という生薬が含まれています。

この芍薬には、鎮痛・鎮痙・鎮静・抗炎症作用があります。

また、桂枝茯苓丸に含まれる生薬である桂枝には、血管拡張・抗炎症・散寒・鎮痛作用があり、生理痛や冷え性などの冷感がある人に効果があります。

同じように体を温める作用のある生姜は、漢方としてだけでなく食べ物として日頃から家庭薬膳として活用すると冷え性のある女性に効果的です。

薬膳:体質や目的に合わせた生薬や食べ物を使った健康料理

薬膳は、中国の伝統医学のもとに病気の予防と治療、健康増進、老化の防止を目的に季節や体質に合わせた生薬や食べ物を使って作られた健康料理のことです。

薬膳の中には、薬食同源という言葉があります。

こらは薬と食べ物がどちらも同じ健康を守る源であることを意味しています。

薬膳の根幹は中国にありますが、気候や風土は日本とは異なります。

そして、日本でも季節や地域によって気候風土が違うため中国の薬膳をそのまま日本に取り入れることが必ずしも正解ではありません。

薬膳の中で一番大切な考え方は、身土不二というものです。

いわゆる地産地消、

つまり地域で育ったものを食べることが体に良く、地域の気候風土に合った食事は健康を支える薬になるという考え方です。

この考え方は現代の家庭医学の参考にもなります。

薬膳の食性:食べ方の性質

五味

薬膳の考え方には五味という食べ物の区分があります。

  1. しおからい

この五つの味を含む食事は、五臓の体全体を養い、塩味に偏らない減塩食であり、甘味にも偏らない健康料理になります。

五性

五味以外にも食べ物の性質は、

に分類されます。

寒い冬は温熱性のネギや生姜、シナモン、南瓜、八角、ナツメ、酢などが勧められ、冷え性の女性の健康管理に役立ちます。

 

ロタワクチン定期接種への道:費用対効果の理由で値下げ

病気の予防として、重要なワクチン接種

ワクチン自体は20を超えるものが日本でも使えますが、定期接種となっているものはごく僅かです。

先進国の中でもワクチンに関しては日本は遅れていて、海外では国が費用を補助して当たり前に行えているワクチン接種が、少ししかできません。

これをワクチンギャップといいます。

それでも少しずつ日本でも定期接種のワクチンが増えてきています。

最近ではB型肝炎ワクチンが定期接種になりました。

そして、今度はロタワクチンが定期接種に向けて動き出したようです。

ロタワクチン定期接種化に向けて

厚労省は費用対効果を理由に、ロタワクチンの値下げを進める方針を示しました。

厚生科学審議会予防接種基本方針部会の中にあるワクチン評価に関する小委員会で、ロタウイルスワクチンの定期接種化に向けて、製薬企業のグラクソ・スミスクラインとMSDに希望小売価格の値下げを打診する方針を示しました。

ロタワクチンをお子さんに接種した方は分かると思いますが、ロタリックスやロタテックで接種の回数は違うものの、合計で約3万円弱かかります。

ちなみにロタワクチンは経口ワクチンであるため、赤ちゃんが泣いて吐き出したなんてことがあると言葉も出ません。。

私自身もなんとか飲み込んでくれと、子供を見つめていた記憶があります。

ロタワクチンの値下げ

この委員会での取りまとめでは、ロタウイルスワクチンの接種には現時点で約3万円が必要ですが、少なくとも4000円程度低下すれば費用対効果がよくなると指摘しました。

予防接種法の対象に加えて公費を使った定期接種にするには、リスクとベネフィットの観点からは問題ないという現状はありますが、費用対効果の観点では今のままでは課題があるとの考えです。

反ワクチンの方にもここは強調したいところです。

リスクとベネフィットでは問題ない!

今回の厚労省の示した考えに対して、企業がどの程度対応可能かの見解を問う文書が近日中に送られる予定です。

製薬企業には柔軟な対応を期待したいです。

ロタワクチン:ロタリックスとロタテック

今日本で発売されているロタワクチンは、ロタリックス(1万800円、2回接種)とのロタテック(6152円、3回接種)の2種類です。

それぞれ1回あたり約3930円の接種費用がかかるとされているため、窓口の負担としてはどちらのワクチンでも総額3万円程度となります。

今回のような値下げの打診は過去にもありました。

2012年に不活化ポリオワクチンであるイモバックスの値下げをサノフィに依頼したことがあります。

このときは海外との価格差の大きさを理由とした値下げの打診でしたが、サノフィは限定的な需要などを理由に値下げに応じませんでした。

今回は、ぜひとも企業には応じてもらいたいところです。

今後は、8月に開かれる予防接種基本方針部会に今回の取りまとめが報告される予定です。

値下げに対する企業の見解も返答され次第この部会に報告され、最終的に定期接種化するかどうかが議論されます。

まだまだ時間はかかりますが、なんとか定期接種になってほしいものです。

重大な副作用、副反応として添付文書追記

医薬品を使用する上で重要な添付文書。

これは言わば薬の説明書のようなもの。

よくゲーム機やおもちゃにも説明書がついてきますが、医薬品に関しては添付文書に載っている情報はとても重要です。

今回は薬剤師っぽく、最近添付文書が改訂された医薬品について記載していきます。

重大な副作用に追記を指示、添付文書改訂

ゼルヤンツ錠の重大な副作用に静脈血栓塞栓症が追加

厚生労働省医薬・生活衛生局は8月22日に新たな重大な副作用などが判明した医療用医薬品の添付文書を改訂するよう、日本製薬団体連合会に医薬安全対策課長通知で指示しました。

ファイザーのJAK阻害薬ゼルヤンツ錠(一般名:トファシチニブクエン酸塩)では、添付文書の重大な副作用に静脈血栓塞栓症を追記しました。

心血管系事象のリスク因子を有する患者にこの薬を投与する時に静脈血栓塞栓症が現れるおそれがあるというもの。

そのような患者には、他の治療法も考慮するよう求める内容にするようです。

今回の改訂の背景にあるものは、心血管系事象のリスク因子を有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象とした海外臨床試験(A3921133試験)です。

TNF阻害薬群と比較して、ゼルヤンツ10mg1日2回群で肺塞栓症及び死亡リスクが高い傾向が指摘されました。

これを踏まえて、今回の改訂になりました。

また、ゼルヤンツ以外にも重要な副作用の部分が改訂になった薬剤があります。

ゼルヤンツ含め、今回改訂となった薬のまとめです。

トファシチニブクエン酸塩(製品名:ゼルヤンツ錠)

重大な副作用に、静脈血栓塞栓症が追記されました。

また効能又は効果に関する注意に、心血管系事象のリスク因子を有する患者に本剤を投与する際に、他の治療法を考慮するような内容を効能共通で追記されました。

さらに特定の背景を有する患者に関する注意に、心血管系事象のリスク因子を有する患者の項が新たに設けられました。

そして、静脈血栓塞栓症の徴候及び症状の発現に関する注意及び他の治療法を考慮し、特に10 mg1日2回投与の必要性については慎重に判断する旨などが追記となったようです。

実際ゼルヤンツの使用した上での報告では、直近3年間の静脈血栓塞栓症関連症例は6例(死亡1例)でした。

その中で、医薬品と事象との因果関係が否定できない症例は0例。

医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は0例でした。

ドパミン受容体作動薬の重要な基本的注意に薬剤離脱症候群が追記

薬剤としては、たくさんあります。

  • ロピニロール塩酸塩
  • プラミペキソール塩酸塩水和物
  • タリペキソール塩酸塩
  • ロチゴチン
  • カベルゴリン
  • ブロモクリプチンメシル酸塩
  • ペルゴリドメシル酸塩
  • アポモルヒネ塩酸塩水和物

これらの薬剤の重要な基本的注意に、急激な減量または中止により薬剤離脱症候群が現れることがあることが追記されました。

また、その他の副作用に薬剤離脱症候群が追記。

異常が認められた場合は投与再開または減量前の投与量に戻すなど適切な処置を行うことと記載されています。

ちなみに直近3年間の薬剤離脱症候群の国内報告数はありません。

改訂となった理由です。

国内と海外の症例が集積したことと、ドパミン受容体作動薬における薬剤離脱症候群の想定されている機序を踏まえた結果、ドパミン受容体作動薬全体で薬剤離脱症候群について注意喚起を行うことが適切との考えに至ったようです。

カベルゴリン(製品名:カバサール錠など)の基本的注意も改訂

カバサール錠などの商品名で販売されている、パーキンソン病治療薬のカベルゴリン。

この薬剤に関しては、重要な基本的注意にトルコ鞍外に進展する高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者に対する髄液鼻漏に関する注意喚起についての記載が追記されました。

カベルゴリン服用中の高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者に視野障害などの異常が認められた場合は、減量や中止などの適切な処置を行う必要があるというもの。

ここは薬剤師の腕の見せ所かもしれません。

さらに慎重投与の部分に下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進展し、視力障害などの著明な高プロラクチン血性下垂体腺腫の患者に改められました。

ちなみに直近3年間の国内報告数は以下の通りです。

髄液鼻漏関連症例3例(死亡0例)であり、医薬品との因果関係が否定できない症例は3例。

視野障害の再発関連症例2例(死亡0例)であり、医薬品との因果関係が否定できない症例は1例です。

BCGワクチンの副反応に髄膜炎を追記

子を持つ親であれば経験のあるBCGワクチン。

この薬剤に関しても重大な副作用に追記がありました。

添付文書の重大な副反応の部分に全身播種性BCG感染症及び骨炎、骨髄炎、骨膜炎がBCG感染症と改められ、さらに髄膜炎があらわれることが追記されました。

ちなみに、直近3年間の国内報告数は結核性髄膜炎が1例(死亡0例)であり、医薬品との因果関係が否定できない症例は1例でした。

改訂とはなり髄膜炎は怖い感染症の一つではありますが、だからといってワクチンを接種しないというような誤った判断にならないように注意が必要です。

薬剤師としても正しい情報発信が大事ですね。

花粉症の正しい薬の使い方:薬剤師目線

寒さも収まり、暖かくなってくるとあの季節の到来です。

そう、くしゃみや鼻水に悩まされる花粉症!!

花粉症の時の正しい薬の使い方を薬剤師の視点から解説します。

実は花粉症患者が薬の使い方を間違えているかもしれません。

花粉症患者のうち8割の人は、1種類だけの薬では効果が不十分な可能性があります。

花粉症で薬が効かない理由

東京都ではスギ花粉は3月まで、ヒノキ花粉は5月のGWまで飛散するといわれています。

花粉症の人は数ヵ月にわたり、つらい日々が続きますよね。

私も今年ついに発症した様子で、目がかゆかったりくしゃみが出たりと大変です。

今年は例年よりも飛散量がやや多め、という報告もありそのせいで私も発症したのかもしれません。

花粉症対策の情報はメディアやインターネトなどで例年掲載され、実際に対策を行っている人は多いと思いますが、それでも花粉症の症状に苦しまされるのはなぜでしょうか?

花粉症の薬が効かない人は、処方と使い方が適切でない可能性が

マスクをつけて、室内に花粉を入れないように心掛け空気清浄機も使い、薬も飲んでいる。

それなのに花粉症の症状に苦しむのは、どうしてでしょうか?

[aside type=”warning”]
薬が効かない、効き目が不十分 [/aside]

という話をよくよく聞いてみると、たいていの人は薬が適切に処方されていない、あるいは薬を適切に使えていない場合がほとんどです。

もちろん両方に当てはまる方もかなりいるといわれています。

花粉症に対する薬としては、昨年4月に皮膚に貼る新しいタイプのアレルギー性鼻炎治療薬が発売されて、薬の選択肢が増えました。

上手に薬を使えばよほどの重症例を除いて、日常生活に支障が出ない程度まで効果を抑えることは可能です。

ただし、風邪薬とアレルギー性鼻炎薬の両方の側面を持っている市販薬は、長期的な服用はおすすめしません

市販薬には、眠気などの副作用や長期的に服用することのリスクが指摘されている第一世代の抗ヒスタミン薬が含まれています。

また、眠気を覚ます目的のカフェインなど様々な成分も含まれているからです。

長期的服用が、身体に何らかの悪影響を及ぼすかもしれません。

ちなみにここまでの話はごく軽症の場合についてです。

問題は花粉症患者の8割以上は、重症度でいうと中等症以上であるということです。

花粉症患者の 8 割以上は 2 種類以上の薬の併用が必要

私自身は軽症の部類に入るとは思いますが、およそ8割の花粉症患者が中等症とは驚きです。

2011年5月11~18日に「花粉症と思われる症状がある」などの条件に該当する3382人を対象にインターネット調査を行った結果から判明しました。

性別では関係なく、20歳以上では実に9割以上が中等症以上だったのです。

軽症であれば、1種類の花粉症の薬でも症状を抑えることは可能です。

軽症であれば、下記のようなサプリメントでも対処は可能かもしれません。

ところが、中等症以上の花粉症は1種類の薬では対処できません。

2種類以上は必要であり、そのためには市販薬では不可能であり、医療機関を受診しないと手に入れられません。

理想を言えば、自分の花粉症が軽症、中等症、重症・最重症のどれに該当するのかを知ると、より適切な薬を医師も処方できますし自分でも選びやすくなります。

ただそれを知らなくても、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが頻繁に起こるようなら、1 種類の薬で対処可能な軽症ではなく、2種類以上の薬が必要な中等症や重症と考えるべきです。

では、なぜ 2 種類以上の薬が必要なのか

花粉症の主な症状はくしゃみ、鼻水、鼻詰まりです。

くしゃみや鼻詰まりが特に苦しい人には、 抗ヒスタミン薬とともに鼻噴霧用ステロイド薬がよく効きます。

ステロイドと聞くと危険視して飲みたがらない人もいますが、鼻噴霧用ステロイド薬は非常に安全な薬なので安心して使うことができます。

また、鼻詰まりが特に苦しい人にはこれらの薬に加えて、ロイトコトリエン拮抗薬やプロスタグランジンD2・トロンボキサンA2拮抗薬がよく効きます。

抗ヒスタミン薬ひとつですべての症状に効く! というわけにはいきません。

なお、鼻炎用のスプレーが市販されていますが、これはステロイド薬ではなく当然ながら、処方する鼻噴霧用ステロイド薬とは全くの別物です。

そして鼻炎用のスプレーを花粉症に対して使用することはおすすめしません。

市販の鼻炎用のスプレーは血管収縮薬であり、長期的に使うと下鼻甲介腫脹という症状が起こりかえって鼻詰まりがひどくなるからです。

これを薬剤性鼻炎と呼んでいます。

症状がひどい時だけ飲むはダメです、継続使用しないと効き目は落ちます

花粉症に対して薬を適切に使えていないとはどういうことか考えてみましょう。

例えば、抗ヒスタミン薬と鼻噴霧用ステロイド薬を処方されたとしましょう。

その時の自分の行動を想像してみてください。

症状がひどい時だけ飲むということをしていませんか?

特に、鼻噴霧用ステロイド薬はそういう使い方をしている人が珍しくありません。

花粉症の治療薬は、花粉の飛散量が多い日も少ない日も関係なく毎日、決められた回数使用することが基本です。

花粉症の点眼薬も同様です。

1日4回点眼するとされている点眼薬を、1日2回しか使わないのは間違った使い方です。

花粉はシーズン期間中、飛散量は変化するものの毎日飛んでいます。

薬を今日飲んで明日は飲まないというやり方では、血中の薬物濃度が一定にならず、効き目も落ちるのです。

花粉症の薬だからといってその都度使用するのではなく、高血圧などの薬と同様指示された用法用量を守ることが重要です。

スギ花粉に反応する人は3月末まで、ヒノキ花粉にも反応する人は5月のゴールデンウイーク明けまで継続して飲む

継続することが、正しい花粉症対策の薬の使い方になります。

薬の止め時は、新聞やニュースの花粉情報で飛散量が少なくなっており、かつ、症状も落ち着いているタイミングです。

眠気が少ない薬を使っても、効果は低くならない

花粉症の薬を飲むと眠気に襲われ、仕事にならないという人もたくさんいます。

その時に考えてほしいのは、使っている抗ヒスタミン薬はどの世代のものかということです。

抗ヒスタミン薬は

  • 第一世代
  • 第二世代

とあり、第二世代はまた前期(鎮静性)と後期(非鎮静性)の 2 タイプに分かれます。

ヒスタミンは花粉症にとってはですが、脳にとってはなくてはならないものです。

ヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン薬は、どれくらい脳のヒスタミンを抑えるかによって眠気の程度が変わります。

第一世代の抗ヒスタミン薬は脳のヒスタミンを70~80%抑えるため、 眠気が強くなります。

しかし、第二世代後期(非鎮痛性)の抗ヒスタミン薬は20%以下に統一されています。

そのため眠気が少なくなります。

20%以下の中でも薬によっては0%に近かったり、10%程度だったり20%に近かったりするものがあります。

今使っている抗ヒスタミン薬がどの世代のものかをチェックし、第二世代後期のものであってもそれでも眠いという場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。

第二世代後期の中でもより眠気が少ない薬を紹介してくれるでしょう。
そもそもどの世代かわからない場合は、ぜひ薬剤師に尋ねてみてください。

薬の確認も重要ですが、眠気が本当に抗ヒスタミン薬によるものかは確認が必要

単なる寝不足かもしれませんし、睡眠環境が悪い、アルコール摂取による睡眠の質の低下、または睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が何度か停止する病気)をはじめとする何らかの病気が関係しているかもしれないからです。

眠気が少ない薬は、効果も低いように思っている方が中にはいるかもしれません。

かつてはそう言われた時もありました。

しかし今は違います

第二世代後期の薬は、眠気が少なく効果も高いといえます。

残念なのは、今でも第一世代の抗ヒスタミン薬を出している医師が思っている以上にいることです。

インターネットによる医師調査で明らかになった結果です。

[aside type=”warning”]注意

第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気や口の渇きといった副作用だけでなく、この薬の服用によって眠りの質を下げることが明らかになっています。
催眠作用を求めて第一世代を使う人もいると聞きますが、かえって眠りの質を下げることにつながるのでやめるべきだと思います。

[/aside]

貼るタイプ花粉症薬も登場

貼るタイプの花粉症の薬も登場し、夜に貼って朝の症状に備えることも可能となりました。

世界で初めての経皮吸収型アレルギー性鼻炎治療剤で、商品名はアレサガテープ(一般名:エメダスチンフマル酸塩貼付剤)です。

これまで抗ヒスタミン薬は飲む薬(経口薬)、点鼻薬しかありませんでした。

しかし飲むのが苦手な人や、飲み薬では服用を忘れてしまう人などがいます。

そこで開発・販売されたのが経皮吸収型、つまり貼るタイプの抗ヒスタミン薬です。

食事による投与タイミングの制限がないのも特徴の一つです。

アレルギー症状は一般的に朝出やすいと言われますが、夜から貼って朝の症状に備えるという使い方もできます。

今は成人に対してのみ承認が下りていますが、飲み薬を嫌がるお子さんにも使えるのではないかと、今後は臨床試験が行われる見通しです。

まとめ

花粉症の薬を適切に用いれば、症状はかなり抑えられます。

また、貼り薬も登場し治療の選択肢が増えました。

花粉症には手術や免疫療法などの手段もありますが、手術はハードルが高く、免疫療法は治療期間が年単位と長く、どれだけ効果を得られるかは人それぞれで治療が終わらないとそれが分かりません。

花粉症の現実的な治療としては、薬物治療が最も大切だと思います。

昔は花粉が飛散し始める2週間前から薬を服用しないと効かないとも言われていましたが、 今の薬は飛散してから服用しても効果があります。

それでも飛散量が少ないうちから飲み始めた方が、花粉症の症状で苦しむ期間は短いことは間違いありません。

まずは医療機関を受診し、どの症状に最も困っているかを伝えて薬を処方してもらいましょう。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

インフルエンザの治療に漢方薬は使えるのか:薬剤師目線で解説

ようやく流行のピークを越えたインフルエンザ。

しかし、まだまだ油断は禁物です。

これからはインフルエンザB型が流行する時期。

A型にかかった方もB型にかからないように注意が必要です。

今回は私のコミュニティでも話題になった

インフルエンザに対する漢方薬の効果について

薬剤師の目線で解説していきます。

インフルエンザそのものの特徴や、医薬品ゾフルーザに関しては以下の記事もご参照ください。

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インフルエンザの診断と検査結果

まず、インフルエンザ感染症の診断は、迅速診断キットによる検査結果に基づくことが多いと思われがちです。

しかし、検査結果が陰性でもインフルエンザを否定できないケース(偽陰性)は少なくありません。

そのため、検査陽性ならば抗インフルエンザ薬を処方し、陰性ならば処方しないという画一的な診療は、推奨されません。

時にインフルエンザ検査が陰性であっても、そのほかの情報からインフルエンザの疑いが高ければ抗インフルエンザ薬を医師は処方することができます。

神戸大学大の岩田健太郎先生によるインフルエンザ診療方針の試案では、

重症・ハイリスク患者においては、迅速診断キットの結果に関係なく抗ウイルス薬の使用を考慮するとされています。

重症でもハイリスクでもない患者では、抗ウイルス薬か漢方薬かを患者に選択してもらいます。

抗ウイルス薬を希望した場合、検査前確率が50%未満であれば検査を行い、それ以上であれば行わない。

つまり、流行状況や臨床症状から目前の患者が50%以上の確率でインフルエンザに罹患して いると考えられれば、検査なしで抗ウイルス薬を処方する。

また、漢方薬の処方に際しては、検査前確率に関わらず検査は行わないとされています。

検査が信用できるかについては、詳しくは以下の記事もご覧ください。

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インフルエンザ感染症に対する標準的な薬物療法は抗ウイルス薬だといえます。

今回は、インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性について考えていきます。

補中益気湯でインフルエンザ予防ができるのか?

インターネットでインフルエンザに対する漢方薬関連の情報を検索すると、

[box class=”red_box” title=””]補中益気湯でインフ ルエンザが予防できるかもしれない[/box]

といった内容の記事を発見することができます。

もちろん医療用の補中益気湯にはインフルエンザ予防の適応はありません。

しかし、この薬はOTC薬として一般のドラッグストアやネット販売でも購入可能となっています。

補中益気湯のインフルエンザ予防効果に関して報告はいくつかあります。

一つ目の報告はBMJ(英国医師会誌)に掲載された、英国におけるA/H1N12009(2009年に世界的に流行した新型インフルエンザ)の流行状況と死亡率に関する論文です。

子の論文では、病院職員358人を対象に、2009年9月7日より、補中益気湯を服用した179人と、服用しなかった179人(グループ 1)の2群を比較して、インフルエンザの発症数を検討しました。

その結果、補中益気湯を投与された職員のうち 14 人が1週間後に服用を中止し(グルー プ 2)、さらに治療開始 4 週後までに103人が中止(グループ 3)しており、8 週間にわたり服用を継続していたのは62人でした(グループ4)。

9月7日~11月2日までの8週において、迅速診断検査によって確認された A 型インフルエンザ感染は8人であり、そのうち7人は補中益気湯を一度も服用していなかったと報告されています。

また、 グループ1とグループ2~4を比較してインフルエンザ発症者を比較したところ、統計学的な差が示されています(P<0.05)。

しかし色々なバイアス(統計学的な偏り)を考えると、この結果のみで補中益気湯のインフルエンザ予防効果を論じることには無理があります。

そもそもこの報告には、

予防効果について検証されるべき

という記載はあっても、

予防効果がある

とは書かれていません。

[box class=”yellow_box” title=”結論”]補中益気湯には、インフルエンザウイルスの細胞内侵入を防ぐ可能性が示されているが、2019年1月末時点において補中益気湯のインフルエンザに対する人での有効性(予防もしくは治療効果) を検討した報告は見付けることはできませんでした。[/box]

麻黄湯ではインフルエンザ予防効果はあるのか?

医療用として用いられている麻黄湯は、キョウニン、マオウ、ケイヒ、カンゾウから構成される漢方薬です。

インフルエンザ感染初期の症状緩和に保険適用があります。

麻黄湯には基礎的研究において抗ウイルス作用が示されていて、インフルエンザ治療における有望な選択肢となる可能性があります。

麻黄湯に関する報告は5つあります。

小児を対象に発熱に対する有効性を検討した2つの研究では、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)と比較して、いずれも発熱持続時間が有意に短縮していた。

また、成人を対象に発熱に対する有効性を検討した3研究中2研究では、オセルタミビルと統計学的な有意差は認めなかった

一方、その他の1件の研究では、発熱期間がオセルタミビルと比較して麻黄湯で17時間ほど短いことが示されています。

タミフルなどと比較して効果に有意な差を認めないということは、抗ウイルス薬と麻黄湯がほぼ同等の効果を持つとも考えられます。

また、インフルエンザ感染症に対するアセトアミノフェン(カロナール他)の効果は限定的であり、早期に解熱を期待するのであれば、麻黄湯は有望な治療薬となり得るかもしれない。

実際のところ、インフルエンザに有効な漢方薬はないのか?

日本でインフルエンザ(流感)に保険適用がある漢方薬には、麻黄湯以外に柴胡桂枝湯、 竹じょ温胆湯があります。

しかし、論文や研究報告を検索しても、これら漢方薬のインフルエンザ感染症に対する有効性を検討したものを見付けることはできません。

インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性を検討した比較的規模の大きい研究は2011年に報告されています。

インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性を検討した質の高い報告であるこの研究は、15~69歳のインフルエンザ患者410人(平均19.3歳、男性60%)を対象としたもの。

被験者を、

[box class=”black_box” title=””]

  1. オセルタミビル 75mg1 日2回5日間の投与(102人)
  2. 麻杏甘石湯と銀翹散の併用 1日4回5日間の投与(103人)
  3. 麻杏甘石湯、銀翹散とオセルタミ ビルの併用投与(102人)
  4. 薬物の投与なし(103人)

[/box]

の4群に割り付け、解熱までの時間を比較しました。

その結果、解熱までの時間中央値は、治療なし群の26時間と比較して、オセルタミビル群で20時間、麻杏甘石湯と銀翹散併用で 16 時間、 オセルタミビル、麻杏甘石湯と銀翹散の併用で15時間という結果でした。

薬剤師目線で考える

研究の問題などを考えると、漢方薬の有効性は現時点では決して高いものではないという結論に至ります。

ただ、そもそも漢方薬はインフルエンザ症状という”現象”に対する治療であり、その治療対象はインフルエンザウイルスではありません。

もちろん、基礎的研究において抗ウイルス作用が示唆されている生薬成分もあるとは思いますが、それが臨床症状の改善をもたらすかどうかについての因果は現時点で証明されていないのです。

そして、“現象”に対する治療であれば、インフルエンザウイスルが存在するかどうかはどうでもよい問題でもあります。

このように記載すると無責任な気もしますが、このどうでもよさが、必要性の低い検査や不適切な抗ウイルス薬投与を減らすことにつながるかもしれません。

まとめ

インフルエンザの診断と治療薬の選択について記載しました。

色々な研究があり、白黒はっきりしないのが現状です。

まずできることは、

[aside type=”warning”]

  • 医療者は、インフルエンザの可能性は低いのに念のため抗インフルエンザ薬を処方しておくということをしない。
  • 患者としては、むやみに薬を希望しない

[/aside]

これらのことが抗インフルエンザ薬の適正使用につながるのではと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

かぜやインフル予防に補中益氣湯:受験期の子供にもおすすめの漢方薬:ストレスにも負けない

最近漢方を改めて勉強してみてとても興味深い薬だと、個人的に思いました。

以前紹介した内容は少し難しかったかもしれません。

しかし、きちんとした専門医や認定薬剤師に診てもらうことで改善することもあります。

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前回は糖尿病でしたが、今回や身近な風邪やインフルエンザについて。

今シーズンもインフルエンザが猛威をふるっています。

昨年よりも流行状況が上回っているとの結果もあり、注意が必要です。

風邪には葛根湯のイメージが強いとは思いますが、意外と知られていない漢方の一つ。

薬剤師目線:かぜを引かないからだ作り、ストレスに負けないこころ作りにおススメの補中益氣湯です。

氣の薬である補中益気湯

補中益氣湯は、13 世紀の中国で李東垣先生により考案されました。

戦乱の世にあった中国で、かぜを引いた兵隊を3日で最前線に戻すための薬を作るように皇帝から命じられた李先生が、命がけで生み出した薬です。

人参、黄耆、朮、陳皮、生姜などが含まれています。

加齢により氣を使い果たしたとき、私たちはこの世を去ることになります。

氣の異常には3つのパターンがあるといわれています。

  1. 氣虚=氣を体内に取り込めなかったり、使い過ぎたりすることで、氣が足りなくなる
  2. 氣うつ=ストレスにより氣の流れが詰まってしまう
  3. 氣逆=ストレスによりブチ切れてしまう

これが3 つのパターンです。

補中益氣湯の効能

  1. 氣虚に対する補氣作用=エネルギー補給
  2. 氣うつに対する理氣作用=ストレス発散・免疫力アップ

の2つとなります。

氣虚に対する補氣作用=エネルギー補給

代表的な構成生薬

・ 人参:朝鮮人参のことで、昔から不老長寿の薬として有名な生薬です。

・ 黄耆:からだの傷を修復し、エネルギー漏れを防ぎます。

人参でエネルギーを補いつつ、黄耆でからだの傷を修復し、エネルギー漏れを防ぎます。人参と 黄耆を合わせて参耆剤と呼びます。参耆剤はスーパー補剤として、癌患者や多忙な研修医など、からだにもこころにも無理がたたっている人をサポートします。 なお、参耆剤の仲間には、十全大補湯、人参養栄湯、加味帰脾湯などがあり、癌患者の緩和ケア 領域で処方されています。

氣うつに対する理氣作用=ストレス発散・免疫力アップ

代表的な構成生薬

・ 柴胡:ストレスを発散し、免疫力をアップします。

・ 升麻:垂れているからだとこころをシャキッと引き締めます。

柴胡でイライラを発散し、升麻でからだとこころをシャキッと引き締め、免疫力をアップさせる ことで、インフルエンザを予防します。 帝京大学の新見正則先生は、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm2009)流行時に、補中益氣湯による予防効果について検討しています。

内服群(n=179)と非内服群(n=179)に分けて 8 週間観察したところ、インフルエンザの罹患者数は内服群で1人、非内服群では7人でした。

補中益氣湯で 新型インフルエンザを予防できる可能性があると報告しています。

補中益氣湯は King of Drugs:医王湯

補中益氣湯の適応は、ツムラ補中益氣湯エキス顆粒の添付文書によると、

[aside type=”boader”]
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、食欲不振、 多汗症、結核症、感冒、胃下垂、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随[/aside]

色々な病名が並んでいますので、最初は混乱してしまいますが、先ほど述べた人参、黄耆、柴胡、升麻の効能を思い出すと、それぞれの病名を理解しやすくなります。

具体的には、

  • 人参:夏やせ、病後の体力増強、食欲不振
  • 黄耆:多汗症
  • 柴胡:結核症、感冒
  • 升麻:胃下垂、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随

と分類できます。

1 つの漢方薬で様々な病氣を治すことができることを異病同治と言います。

補中益氣湯は異病同治が可能な万能薬であり、King of Drugsを意味する医王湯と呼ばれています。

まとめ

今シーズンの風邪、インフルエンザは補中益氣湯で乗り切れるかもしれません。

からだとこころが疲れたと感じたら、補中益氣湯を試してみてください。

残念ではありませんが、私は今のところ風邪をひいていないため試すことができません。

実際飲んでみて、補中益氣湯が自分に合っているかどうかの判断基準は、

  • 飲んでみておいしいと感じたら、体力が落ちていて補中益氣湯が必要な状態
  • 飲んでみてまずいと感じたら、体力が十分あって補中益氣湯が不要な状態

です。

試すときはもちろん、漢方としての正しい飲み方をしてください。

飲み方などの注意点は下記の記事もご参照ください。

[kanren postid=”133″]

おいしいと感じた方はインフルエンザの流行が終了するまで、あるいは元氣になっておいしいと感じなくなるまで、補中益氣湯を飲み続けましょう。

なお、補中益気湯は小児、特に受験が迫っているようなお子さんにもお勧めです。

風邪やインフ ルエンザに加え、受験のストレスにも負けない体と心を作るのに役立ちます。

補中益気湯を飲んでみておいしいと感じたお子さんは、そのまま飲み続けると、受験シーズンを乗り切れるかもしれません。

糖尿病への対策としての漢方薬:血糖値とインスリンの関係:EDなどの合併症について

現代人の病気の中で問題となっている生活習慣病。

生活習慣病には、主に以下のような病気があります。

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • がん
  • 脳卒中
  • 心臓病

などです。

今回は、この生活習慣病の中でも糖尿病に着目してその考え方と漢方薬について記載していきたいと思います。

薬剤師目線:糖尿病に効果が期待できる漢方薬処方

糖尿病は糖質の代謝異常により、血液中の糖分量、つまり血糖値が慢性的に高くなる病気です。

糖尿病患者とその予備群は、2016年にはそれぞれ推計1000万人を超えており、患者数は年々増え続けています。

血糖上昇や糖尿病の発症には、膵臓で産生され血糖値を下げるホルモンである、インスリンがうまく働かなくなったことが関係しています。

糖尿病には幾つかのタイプがあり、インスリンがほとんど出なくなる1型糖尿病2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)に大きく分けられます。

患者数の多くを占めているのが2型糖尿病で、インスリンの分泌量が十分でないタイプ(インスリン分泌
不全
)と、インスリンは分泌されているが効きにくいタイプ(インスリン抵抗性)とがあります。

2型糖尿病

2 型糖尿病の場合、血糖値は何年もかけてゆっくり上昇し、多くの場合40歳以降に糖尿病を発症します。

初めのうちは自覚症状がまったくないことが多いのですが、次第に

  1. 疲れやすい
  2. だるい
  3. 肌がかさかさ乾燥して痒い
  4. 手足の感覚が鈍くなる
  5. 感染症によくかかる
  6. 切り傷など皮膚の傷が治りにくい
  7. 目がかすむ
  8. 性機能の減退(ED)

などの症状がみられるようになります。

高血糖の状態が持続すると、喉や口が渇いて頻繁に水を多く飲む、尿の回数が増える、体重が減少するなど糖尿病特有の症状が表れます。

さらに、高血糖状態が長期にわたって持続することにより、血管壁の変性や血管腔の狭窄が起こります。

つまり血管の壁が硬くなり、血管の中が狭くなります(動脈硬化)。

動脈硬化になると、心疾患や脳卒中になるリスクが高まります。

そのような深刻な経過をたどるにもかかわらず、血糖値が高くても自覚症状がないからと放置している人も多いのが現状です。

しかし糖尿病は上記のようにじわじわと血管壁を硬くし、血液の通り道を狭くしていきますので、放っておくと当然様々な合併症を引き起こすことになります。

糖尿病の合併症

主な合併症には、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、腎障害(糖尿病腎症)、網膜症(糖尿病網膜症)などがあります。

神経障害を伴うことが多く(糖尿病神経障害)、足のしびれや痛みや感覚異常、立ちくらみや寝汗、動作の緩慢なども引き起こされます。

こむら返りも起こしやすくなります。

糖尿病の治療と漢方薬の位置づけ

西洋医学的には、食事制限(食事療法)、適度な運動の励行(運動療法)を基本とし、必要に応じて経口血糖降下薬やインスリン注射薬が処方されます。

糖尿病と血糖値の関係については、以下の記事もご参照ください。

[kanren postid=”603″]

漢方では、糖尿病体質そのものを改善することにより、糖尿病の治療に当たります。

具体的には、漢方薬を用いて体内の水分バランスやホルモンバランスを調整し、内臓の機能を調え血液の流れをさらさらにし、血管壁の柔軟性を保持し自然治癒力を高めていきます。

糖尿病体質のベースにあるのは陰虚です。

少し難しい話になりますが、陰虚の陰は陰液を指します。

陰液とは人体の基本的な構成成分のうちの血・津液・精のことです。

つまり陰虚証とは、陰液が不足している体質や病状のことで、血や津液による滋養作用が低下している状態を意味します。

陰液の不足による手足のしびれ、やせる、などの症状に加え、陰液の不足により相対的に熱が優勢となるので、熱感、手足のほてり、口渇、寝汗などの熱証がみられます。

糖尿病はまさにこの状態を来しており、陰虚の治療が糖尿病の漢方治療のベースになります。

糖尿病の証には、以下のようなものがあります。

上半身での症状

口や舌が渇いて大量の水を飲むなどの上半身(上焦)で症状がみられるなら、「肺陰虚」証です。

肺は五臓の1つで、呼吸をつかさどる臓腑です(漢方の世界では気をつかさどるといいます)。

また皮毛をつかさどる機能もあり、皮膚とも深い関係にあります。

この肺の陰液(肺陰)が不足している体質が、この証です。

血糖値が上昇して肺の陰液を消耗すると、この証になります。

そのため漢方薬で肺の陰液を補い、糖尿病を治療していきます。

人体の中心部の症状

たくさん食べるのにお腹が空く、やせるなど人体の中心部(中焦)で主に症状がみられるなら、脾気陰両虚証です。

脾は五臓の1つで、六腑の1つである胃との共同作業により飲食物(水穀)を消化して栄養物質(水穀の精微)を吸収し、気・血・津液・精の生成源とし(転化)、さらにその水穀の精微を全身に輸送(運輸)します(運化をつかさどるといいます)。

飲食物の消化吸収や代謝と関係が深い臓腑です。

血を脈管外に出さずに循行させる働きもあります(統血するといいます)。

脾が運化した栄養物質は四肢や筋肉を養う基礎となります(肌肉をつかさどるといいます)。

この脾の機能(脾気)が低下した証が、脾気虚証です。

脾気虚がさらに進み、脾の血などの物質面(脾陰)も不足した証が、脾気陰両虚です。

糖代謝の異常と関係があると考えられています。

脾気と陰液を補う漢方薬で、糖尿病を治していきます。

下半身での症状

頻尿、腰や膝がだるいなど下半身(下焦)で症状がみられるなら、腎陰虚証です。

腎は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。

ホルモン内分泌系や、生殖器泌尿器系、免疫機能と深い関係にあります。

この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。

加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによって腎陰が減ると、この証になります。

のぼせ、寝汗などの熱証がみられます。

この証の場合は、腎陰を補う漢方薬で糖尿病の治療をします。

血流障害が生じているようなら、血瘀証の治療もします。

血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。

血管の微小循環障害や、流動性の異常、精神的ストレス、寒冷などの生活環境、寒冷刺激、不適切な食生活、運動不足、水液の停滞、生理機能の低下などにより、この証になります。

疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になることもあります。

血行を促進する漢方薬で血流を改善し、糖尿病の治療や、合併症の予防をします。

糖尿病患者にもっともみられやすい症状

一般に糖尿病患者に共通してみられやすいのは、陰陽両虚証です。

人体の基本的な構成成分である気・血・津液・精を陰陽に分けると、気が陽であり残りの血・津液・精が陰となります。

気・血・津液・精は互いに密接な関係にあり、機能的な面が主体の気は陽気、物質的な面が主体の血・津液・精は陰液と呼ばれます。

陽気と陰液を合わせたものが人体そのものである正気であり、病邪と対置されます。

正気が安定していれば病邪が人体を侵すことはなく、人は健康を維持できます。

この陽気と陰液の両方が不足している体質や病状が、陰陽両虚証です。

糖尿病のベースの陰虚に気虚と冷えが重なり、この証になります。

漢方薬で陽気と陰液の両方を補い、糖尿病の治療に当たります。

まとめ

糖尿病とその症状別における漢方薬の考え方について記載しました。

正直難しいです。ここまで読んでいただいた方には感謝しかありません。

しかし、これだけしっかりした目線で考えると効果が出てくるのが漢方薬の利点でもあります。

ちなみに、漢方に関して重要な事柄を下記の記事でも書いてありますので、読んでみてください。

[kanren postid=”133″]

糖尿病に対する漢方薬の処方の例として、

ひどい口の乾きや寝汗、頻尿などを認める場合は、肺陰虚であることが多く、この場合は滋陰降火湯という漢方を使用する場合もあります。

すべての証についてどの漢方薬を使用するかは割愛しますが、糖尿病の治療法の一つとして漢方薬の使用を考慮してもいいのかもしれません。

もちろんちゃんとした漢方専門医の指導の下です。

ちなみに、薬剤師の漢方スペシャリストとして

漢方薬・生薬認定薬剤師という資格もあります。

近くに専門医や認定薬剤師がいたら相談してみてもいいかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

HPVワクチンの今後の課題:9価ワクチン導入と子宮頸がん早期発見が必要

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、副反応の問題が生じ厚生労働省も接種の積極的勧奨を差し控えました。

子宮頸がんワクチンについては、下の記事でも記載していますのでご参照ください。

[kanren postid=”584″]

元々、HPVワクチンは中学1年生から高校1年生の女子に定期接種となっています。

積極的勧奨が再開されたとしてお現状の日本では課題が多くあります。

今回はm3.comで紹介された研究から、HPVワクチンの今後について書いていきます。

薬剤師目線:HPVワクチンの積極的勧奨再開後の課題と対応策

大阪大学の研究の結論としては、

積極的勧奨が再開されるだけでは不十分

としています。

大阪大学は12月21日、現在停止状態であるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が今後再開された場合に直面する課題への対応策を提言としてまとめ、発表しました。

この研究成果は、英科学誌「Lancet Oncology」2018年19巻に掲載されたものです。

HPVワクチンの接種は、厚労省による積極的勧奨の一時差し控えによって、2013年6月以降停止されています。

HPVワクチン接種者と非接種者の比較検討

安全性については、厚労省の調査でワクチンを接種していない女子においても、接種者に見られる症状と同様の多様な症状が認められることが示されました。

また、名古屋市の調査ではワクチン接種との関連が懸念された24種類の多様な症状が、接種者と非接種者で頻度に有意な差が認められなかったことが報告されています。

HPV感染のリスクと子宮頸がん発症のリスクを減らすためには、HPVワクチンの接種が重要であり、厚労省の積極的勧奨が再開された場合には、以下の2点の課題があるといわれています。

  1. HPVワクチンの積極的勧奨一時差し控えによる子宮頸がん罹患リスク上昇の軽減
  2. 積極的勧奨が再開された場合のHPVワクチン再普及

今まで、この課題に対する対応策についての報告ありませんでした。

HPVワクチン接種の課題に対する対応策

今回、研究グループは、厚労省の積極的勧奨が再開された場合の課題とその対応策を検討して、以下の6点を提言としてまとめました。

  • ワクチン接種を見送って対象年齢を超えた女子へ接種を行うこと
  • 子宮頸がんの8-9割が予防できると考えられている9価ワクチンを導入すること
  • HPVワクチンを見送った女子と同年代の男子へ接種を行うこと
  • 子宮頸がん検診の受診勧奨等による、積極的勧奨一時差し控えによる健康被害を軽減すること
  • 行動経済学的手法を駆使した接種勧奨にてワクチンの再普及を図ること
  • メディアに正確な情報を提供すること

HPVワクチン接種についての提言

はじめの三つについては、ワクチン接種についての提言です。

HPVワクチンは、感染前に接種することで予防効果を得ることができますが、感染した状態であったとしても、HPVには100種類以上の型があるため、ワクチン接種を行うことで、感染したウイルス型以外のHPVの予防効果が期待されています。

また、現在日本で接種可能な2価ワクチンと4価ワクチンに加えて、9価のワクチンが開発されており、海外では認可され始めています。

これを用いることで、子宮頸がんの8~9割の予防が可能と考えられていることから、この9価のワクチンを日本で導入することがすすめられています。

さらに、HPVワクチンを見送った女子と同年代の男子へも接種を行うことで、HPVのリスクを減らすことが可能になるとしています。

HPVワクチンの情報・意識についての提言

最後の三つは、情報・意識についての提言です。

厚労省のHPVワクチンの積極的勧奨が再開されると同時に、子宮頸がん検診の受診を勧奨することで、子宮頸がんの早期発見につながることが期待されています。

そして、ワクチンを打つことによって得られるメリットを、行動経済学的手法を駆使して、科学的かつ効果的に発信することを挙げています。
要約するとワクチンを打つという行動を起こすことで得られる病気の予防効果による経済的な影響を発信することです。

そして、これらの情報を正確にメディアに発信することが重要であるとしています。

まとめ

この研究では、最後に

[aside type=”boader”]
HPVワクチンはいわゆる副反応報道と積極的勧奨一時差し控え継続により、接種はほぼ停止状態であり、ワクチンを接種せずに対象年齢を越えて性交渉を持ち始める女子が次々に出現している。
今後、厚労省によって積極的勧奨が再開されるだけでは不十分と言わざるを得ない。
少しでも積極的勧奨一時差し控えの負の影響を軽減する必要がある [/aside]

としています。

まだまだ理解が広まらないHPVワクチン接種について。

HPVワクチン接種の必要性については、下の記事でも記載をしています。

もっと深く知りたいという方は、ぜひご覧ください。

[kanren postid=”119″]

今後医療者側も、副反応症状に苦しむ患者に目を向けつつ正しい情報を発信することが重要です。

癌患者が増える中、抗がん剤治療も進化していますが、まず癌にならないための予防の重要性をもう一度再認識する必要があります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸がんだけではない!!

MRICという情報サイトから配信されたメールマガジンにて取り上げられた内容です。

ヒトパピローマウイルス:HPVといいますが、ワクチン接種後の副反応の問題で日本では接種率が格段に下がりました。

マスコミの過剰報道の影響ももちろんありますが、医療者側も健康被害を訴える患者に対してきちんと向き合わなかったことが、この問題を大きく、また長期化させることとなったと思います。

ワクチンと神経症状などの副反応との因果関係(直接の関連性)は、現時点では否定されています

医療者も医療を受ける側も正しく理解したうえで、医薬品を使用することが一番大切と思い、今回まとめました。

世界で広がるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種

イギリス政府は、ヒトパピローマウイルス(以下、HPV)が関連するがんを予防するために12~13歳の男児に HPVワクチンを接種することを決定した、と発表しました。

米国、ブラジル、カナダ、オーストラリアなど世界20カ国では、すでに男児への接種が推奨されています。

今回の発表により、イギリスも男女ともにHPVワクチン接種を推奨する国の一つに仲間入りしたことになります。

日本の女性での接種率が上昇しないとは反対に。

実際のところ、

「結局、HPV ワクチンって打った方がいいの?」

というのが素直なところだと思います。

結論からは、副反応との因果関係は証明されていないことや、子宮頸がんを防ぐことができる現時点で唯一の方法でもあるため、私からは断然推奨します。

こちらの記事も参照ください。

[kanren postid=”119″]

ヒトパピローマウイルス(HPV)

最近、小学生の女の子がいる保護者は気になっている話題ではないでしょうか。

しかし実際のところ、HPV ワクチンの未接種、子宮頸がん検診にそもそも行ったことがない、または診療時間中に仕事または学校を休んでまで検査に行けない、などという女性が多いのが現状だと思います。

今回はHPVワクチンについて、世界における研究結果の紹介です。

はじめに、皆さんはHPVが男女問わず感染するということを聞いたことがありますか。

ウォマック・アーミー・メディカル・センターによる調査では、2013年から14年において、米国を代表する 18~59歳の男性1868人のうち、半数近い45%がHPV感染、25%が高リスクHPV感染を認めたと報告しています。

実は、性交渉の経験のあるヒトなら、誰でも一度はHPVに感染すると言われているのです。

ヒトパピローマウイルス(HPV)の型

HPV には、100種類以上の型があります。

がんの原因になる高リスク型は少なくとも13種類あり、このうち、HPV16 型と18型の 2種類が、子宮頸がんの原因の7割を占めているといわれています。

HPV 感染したからといってすぐがんになるわけではなく、初期に感染した場合の多くは免疫力によって排除されます。

しかし、持続感染してしまうとがんになるのです。

最も一般的なのは、子宮頸がんです。

子宮頸がんのほぼ100%は高リスク型HPVが原因です。

子宮頸がんの疫学

子宮頸がんは、20代後半から40代前半の女性が発症しやすく、日本では毎年1万人が罹患(病気にかかり)し、約3000人が死亡していると推定されています。

母親が幼い子供を残して亡くなっていることから、「マザーキラー」とも呼ばれています。 ところが、子宮頸がんだけでなく、ほかのがんも、HPV感染が関連していることがわかってきました。

中咽頭がんはその一つです。

中咽頭がん

オーラルセックスを介して、喉の粘膜細胞に感染したHPVが周辺の細胞をがん化させるのです。

アメリカ疾病管理センター(CDC)が2011年から14 年のデータ解析を行ったところ、口腔部のHPVの罹患率は、18~69 歳の成人で7.3%であり、男性で11.5%、女性で3.3%でした。

また。高リスク型の口腔部HPVの罹患率は、18~69 歳の成人で4.0%であり、男性で 6.8%、女性で1.2%でした。

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで行われた2010 年から 12 年 の調査によると、イギリスにおけるオーラルセックスの頻度は、25 歳から34歳の女性では79.7%、 男性では 80.0%。

かの有名なNature誌においては、オーラルセックスを介することによって、HPV 陽性の頭頸部がんが近年急増しており、1985年の16%から 2025 年には90%にまで 達すると推定されているとのこと。

ほかにも、膣がんや外陰がん、肛門がんや陰茎がんも HPV 感染が関連していることがわかってきました。

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン

HPV ワクチンを接種することは、パートナーへHPVを感染させないだけでなく、男性も HPV感染による頭頸部がんや肛門がんのHPVに関連したがんを予防できるメリットがあるのです。

HPVワクチンの有効性は、世界的にみとめられています。

そして、副反応で話題となった神経障害などとのワクチンの関連性も証明されていません。

2018 年5月、イギリスに本部のある非営利組織コクランは、様々な臨床試験の評価結果として「子宮頸がんの前段階の予防効果には高い確実性がある」との見解を公表しました。

2016 年に米国疾病予防管理センターは、米国でHPVワクチン接種開始から6年間で、米国の若年女性のHPV感染率が大幅に低下したことを報告しています。

実際のデータとしては、14~19歳の女性は64%、20~24歳の女性は 34%もHPV感染率が低下したというもの。

ワクチンの副反応

ワクチン接種による副反応は様々なメカニズムで起こっている可能性があって、明快な答えは出ていません。

実際、WHO は2017年に複合性局所疼痛症候群・体位性頻脈症候群は, 承認前後の報告でワクチン接種との直接の関連を認めなかったと副反応について声明を出しています。

また、 日本産科婦人科学会は、HPVワクチンの接種勧奨が中止され5年間が経過した間に、国内外において、数多くの研究がなされ、ワクチンの有効性と安全性を示す科学的なエビデンスが、数多く示されたとの見解を 2018 年6月に出しています。

日本のHPVワクチン接種の現状

日本は、平成6~11年度生まれの女子のHPVワクチン接種率が70%程度であるに対して、平成25年6月の接種の積極的勧奨中止などの影響により、平成12年度以降生まれの女子では接種率が劇的に低下してしまいました。

なんと平成14年度以降生まれの女子では1%未満の接種率となっています。

一方、米国疾病管理予防センター(CDC)の2013年の発表によると、13歳から17歳の女性への接種率は2012年では33.4%。

欧州における接種率は、欧州疾病予防管理センター(ECDC)の2012 年の報告書によると、 イギリス80%、イタリア65%、フランス24%、ポルトガル84%と日本に比べると高い接種率が並んでいます。

今の状態が続くと国際社会において日本だけが、子宮頸がんの発生率が増加するのではないかと懸念されているのです。

そしてこのままではワクチン接種の重要性や必要性が判明したころには、時すでに遅しのような状態になってしまいます。

世界的には接種して当たり前だ、という意識が強いHPVワクチン。

自分だけではなく、愛するパートナーや子供を守るために、今一度、HPV ワクチンについてしっかりとした情報をもとに理解する必要があると思います。

ノーベル医学生理学賞受賞者からのメッセージ

m3.comからの引用です。

このサイトは医療情報全般を網羅、薬剤師はもちろん医療従事者であれば登録していて損はないサイト内容となっています。

2018年ノーベル医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑特別教授は、現地時間の12月8日13時半より、ストックホルム市内のホテルにてノーベル・スピーチ後、初となる記者会見を開きました。

会見の最後にNHKの記者が、子宮頸がんワクチン問題を含む日本の医療政策における課題に関するコメントを求められると本庶氏は、

「NHKさんがこの問題を取り上げることは非常にいいことだと思う。マスコミはきちんとした報道をしていただきたい」

と述べました。

また、

[aside type=”boader”]
「子宮頸がんワクチンの副作用というのは一切証明されていない。
日本でもいろいろな調査をやっているが、因果関係があるという結果は全く得られていない。
厚労省からの(積極的接種)勧奨から外されて以来、接種率は70%から1%以下になった。
世界で日本だけ若い女性の子宮頸がんの 罹患率が増えている。
一人の女性の人生を考えた場合、これは大変大きな問題だ。
マスコミはワク チンによる被害を強く信じる一部の人たちの科学的根拠のない主張ばかりを報じてきた」 [/aside]

と続けました。

医学や科学の問題について論じる際にマスコミ関係者に注意してほしい点として、

[aside type=”boader”]
「科学では『ない』ということは証明できない。
これは文系の人でも覚えておいてほしいが、科学では『ある』ものが証明できないことはない。
『証明できない』ということは、科学的に見れば、子宮頸がんワクチンが危険だとは言えないという意味だ」
と述べ、
「なぜこれを報道しないのか。先日学会でも講演し たが、ルワンダなど(リソースの少ない国)でもワクチンを導入して子宮頸がんが減っている」[/aside]
とコメントしました。

[aside type=”boader”]
「このことに関し、はっきり言ってマスコミの責任は大きいと思う。
大キャンペーンをやったのは、 朝日新聞、毎日新聞、読売新聞。メジャーなところが全部やった。
そしてNHKも責任の一端があると思う。
今からでも遅くないから、きちんと報道してほしい。
実害が生じている」 [/aside]
と述べ、主要報道機関が誤った情報を広げたことにより、日本人女性が必要なワクチンの接種を差し控えている現状について警鐘を鳴らしたといわれています。

本庶氏は10月5日に藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)で行われたノーベル賞受賞決定後の初講演でも子宮頸がんワクチン問題について取り上げ、

「国際的にみても恥ずかしい状況」

とコメント。

10月11日には根本厚労大臣を訪問し、子宮頸がんワクチンの積極的接種の勧奨再開の要請を行った。

しかし、12月11 日現在、この問題に触れたメディアはありません。

まとめ

冒頭にも書きましたが、現に症状があって日常生活がままならない健康被害にあった患者がいるのも事実です。

その現状を受け止め、健康被害に対する対応を真摯に行えば、日本のワクチン接種率は今後上昇してくるのではと思います。

ちなみに、子宮頸がんワクチンで今一番有効とされるのは9価のHPVワクチンである「ガーシダル9」です。

9価とう数字は大きい方がさまざまなHPVの型をカバーすることができます。

しかし、日本で承認されているガーダシルは4価のもの。

本当の意味で国民の健康を考えるのであれば、ガーダシル9を承認して日本国内でも適応内で使用するという動きも、HPVワクチン接種率上昇には必要だと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

心臓の薬:ニトロの使い方~誤解ではなく正しく理解を~

循環器の病気によく使われるニトログリセリン。

通称、ニトロと呼ばれています。

インターネットに、

「ニトログリセリンは作れますか?」

という質問がありました。

ベストアンサーは、

「濃硝酸と濃硫酸を1:3に混ぜたものにグリセリンを冷やしながら加えればできます」

です。

生化学系の研究室であれば、容易に手に入るもの。

もし研究をしたければ、薬学部へどうぞ。

[kanren postid=”148″]

実際に研究室で作成したものが、医薬品に。
これは薬学部の醍醐味でもあります。

少し話がそれましたが、今日はニトロのお話です。

薬剤師目線:ニトログリセリン(ニトロ)の誤解

処方する医師も調剤する薬剤師も、大半は

ニトロは冠動脈狭窄を開く

と思っています。

実はこれ誤解なんです。

ニトロの主なターゲットは静脈です。

正確な作用は、

静脈に血管内ボリュームを引き取る
→心臓の仕事が減って
→心筋虚血の緩和

上記が、抗狭心作用の主な理由です。

薬としてのニトログリセリン(ニトロ)

爆発するニトロと実体は同じです。
爆発物は危険ですが、使い方によっては薬にもなるんですね。

ニトロの歴史は古く、19 世紀末には狭心症の治療に使われていました。

やがて、一硝酸イソソルビドや二硝酸イソソルビドなども開発されました。
これらをまとめて硝酸薬といいます。

日本では1953年にニトログリセリン舌下錠が発売開始。

空気に触れると徐々に効かなくなるという欠点がありました。

そこで 88 年から、口腔内で溶けやすく、失活しにくい現在使用されているニトロペン舌下錠 0.3mg が使われるようになりました。

意外な服用方法~なぜなめるのか~

ニトログリセリン(ニトロ)は飲むと正確な効果が発揮されません。

実際にニトロを飲むと体内では、

ニトログリセリンを飲む

→消化管で吸収

→肝臓で壊される

→効かない

というように飲んでしまうと効果がほとんどなくなってしまいます。
また、飲むことで即効性も失われます。

だから、ニトログリセリンは

飲んだらいけない

のです。

ちなみにニトログリセリン以外の硝酸薬では、この問題はありません。

なぜニトロで血管が開くのか

硝酸薬は血管拡張のスター的存在である、

一酸化窒素・エヌオー(NO)

を産生します。

内皮で作られたNOも硝酸薬のNOも、複数の経路で

細胞内 Ca2+濃度低下

→血管拡張

を促します。

なかでも大事なのは、

サイクリックGMP合成を亢進させること。

どんな病気、どんな時に使用するか

硝酸薬は冠動脈疾患だけでなく、

  • 心不全
  • 高血圧

の急性治療にも使います。

特に静注薬はかなり安いので、よく使用されています。

血管内ボリュームを静脈スペースに移動しやすくするのが硝酸薬の仕事です。

利尿薬ではダメか

血管内ボリュームを静脈スペースに移動するのであれば、

利尿薬で水をくみ出せばいいんのでは?

と思った方。ごもっともです。

しかし、利尿薬は大事なときには効きにくい。
また、時間がかかることや、電解質の変動もマイナス面として働きます。

水分過剰のときに、問題をストレートに解決してくれるところは長所。
患者さんごとの使い分けが重要です。

なぜ動脈への効果は少ないのか

静脈への作用は説明しましたが、では動脈へは作用しないのか。

動脈は酸素が豊富です。

NOは酸素が豊富にある環境では、NO2やHb-NO (ニトロソヘモグロビン) に形を変えてしまいます。

NOでいればこそ活躍できますが、動脈ではその姿でとどまれない
→硝酸薬は動脈では活躍しにくいのです。

なぜ静注を使うのか

即効性のある経口の硝酸薬は、実は血圧の急落の副作用のため心筋梗塞で使いにくい現状がありました。

静注硝酸薬が登場すると、

  • 細かい調節が可能
  • 心筋保護という概念に最適

ということで、心筋梗塞にも硝酸薬は使われるようになりました。

今は心筋梗塞でもステントをすぐに入れるので、静注硝酸薬の活躍のチャンスは減少しています。

硝酸薬の時代は終わったのか

虚血やニトロという言葉はすでに

昔の名前

になりつつあります。

心不全にはまだ登場の余地は残っています。

日本ではヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)の使用が多いですが、海外ではまだ硝酸薬がメイン。

高血圧の緊急症でも使えます。

お値段以上の働きをするニトロ。
お値段以上、○○○と同じですね。

経口薬の今後、未来があるか

少し古いデータですが、海外では心筋梗塞後の5分の1に硝酸薬が投与されていました(GRACE 試験、2010年)。

しかし、心筋梗塞後に経口硝酸薬を続けても死亡率は下がりません。

心筋梗塞の再発は、硝酸薬ありで16%、なしだと39%。
逆に不安定狭心症は硝酸薬が使われている方に多かったのです。

結果としては、冠動脈のイベントは総数としては減らない。
しかし硝酸薬は

心筋梗塞の手前の不安定狭心症で踏ん張らせてくれるのではないか

という解釈もあります。

あまり登場する機会の減ってきた硝酸薬。

今後の価値についての議論は、まだまだ続きそうです。

まとめ

硝酸薬である、ニトロについて記載しました。

ニトロの作用の仕方(作用機序)については、医療者も意外と誤解していることも少なくありません。

硝酸薬には、舌下錠としてのニトロ以外にも貼付剤などもあり、利便性は高い薬剤です。

患者さんに合った、適材適所で薬を適正使用していきたいですね。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。