インフルエンザの新薬:ゾルフーザの利点と懸念


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先駆け審査指定制度によって、今年の3月に販売開始となった抗インフルエンザ薬のゾフルーザ。

1日1回服用のメリットなどもあり、これからのインフルエンザのシーズンに処方されることが考えられます。

昨年のインフルエンザについてと、ゾルフーザのメリットについては、下記の記事も合わせてお読みください。

インフルエンザの脅威!!予防の大切さをアメリカの経験から。

2018年10月18日

猛威を振るったインフルエンザ、新薬であるゾルフーザは使えるのか。

2018年8月30日

今回は、日本感染症学会インフルエンザ委員会から出された提言をもとに、 新薬ゾフルーザの利点と懸念について紹介します。

結論としては、以下の2点です。

  • 利便性は高く、アドヒアランス(1回飲めば治療が完結するため)に優れる
  • アミノ酸変異株の出現の影響は不明

薬剤師目線:抗インフルエンザ薬~ゾルフーザ~

日本感染症学会インフルエンザ委員会は10月1日に、ゾフルーザの評価と使用に関する提言を発表しました。

ゾフルーザの作用機序は、従来薬タミフルなどのノイラミニダーゼ阻害薬とは異なり、キャップ依存性エンドヌクレアーゼというウイルスの増殖に必要な酵素の働きを阻害することによりウイルスの増殖を阻止します。

要するに、今までの薬とは違った効き方でインフルエンザに効果を示します。

提言の中では、

「臨床的な有効性はタミフル(一般名オセルタミビル)と同等だが、1 回の内服で治療ができることから、利便性が高くアドヒアランスは優れている

と総括されています。

ゾフルーザは期待されていたインフルエンザ治療におけるガイドラインなどへの位置付けは見送られました。

それは、ゾフルーザで治療することによって薬があまり効きにくくなる低感受性変異ウイルスが発生することが報告されたため、 薬剤の効果への影響や周囲への感染性が不明となったからです。

最後に提言では

「今後の臨床症例を蓄積して、ゾフルーザの位置付けを決めていく必要がある」

と結論されています。

ゾルフーザの特徴

発売前の臨床試験でわかったゾフルーザの特徴をまとめると以下のようになります。

なお、プラセボとは「この薬を飲んだら効く」という心理的な要因を排除するために使う、何も効果のない薬のことです。

プラセボより罹病期間が有意に短い

第3相試験(T0831。対象は 12 歳以上 65 歳未満)によると、主要解析である罹病期間(中央値)の比較では、ゾフルーザ群が53.7時間、プラセボ群が80.2時間と、ゾフルーザ群が有意に短かった(P <0.001)。
→インフルエンザに罹っている期間が、ゾフルーザで治療したほうが何も治療しないより短い。

このゾフルーザ群の優越性は、青少年(12~19 歳)群(プラセボ群との差[中央値]:38.6 時 間、P=0.006)と成人(20~64 歳)群(同 25.6 時間、P<0.001)の両方で観察された。
→青少年でも成人でもゾフルーザの使用でインフルエンザに罹っている期間が短くなった。

しかし、成人(20 歳以上 65 歳未満)を対象に行ったタミフル群との罹病期間(中央値)の比較では、 ゾフルーザ群(53.5 時間)とタミフル群(53.8 時間)の間に有意差はなかった(P=0.7560)。
→タミフルとゾルフーザの比較では、インフルエンザに罹っている期間に差はなかった。

副作用はタミフルより有意に少ない

ゾフルーザの副作用として、成人(12 歳以上の小児を含む)の臨床試験(安全性評価試験)では、臨床検査値の異常を含む副作用は5.4%(49/910 例)に認めました。
下痢と肝機能マーカーである ALTの上昇が主なものでした。

また、12 歳未満の小児を対象とした臨床試験では、3.8%に副作用が認められた。

これらの結果から提言では、

「小児も成人も、現時点では問題となる副作用の報告はない

と結論しています。

一方、第3相試験(12 歳以上 65 歳未満)で治験レジメンと関連性があると見なされた有害事象の発現頻度は、タミフル群(8.4%)がゾフルーザ群(4.4%、P=0.009)やプラセボ群(3.9%)より高いという結果だった。
効果は同じだが副作用の出現が少ないという点は、ゾフルー ザ使用の利点となります。

抗ウイルス作用は有意に高い

感染性ウイルス量の減少速度は、ゾフルーザ群がプラセボ群およびタミフル群を有意に上回っていた。
投与開始から 1 日後の感染性ウイルス減少量(中央値)は、ゾフルーザ群が4.8log10 TCID50/mLだったのに対して、タミフル群では2.8log10 TCID50/mL、プラセボ群では1.3log10 TCID50/mL だった。

この点について提言では、

ウイルス感染価を早期に大幅に低下させるので、治療効果と同時に、周囲への感染防止効果も得られる可能性がある」

と指摘。

さらには、同様に抗ウイルス作用の高いゾフルーザでも、

家族内感染の機会を減らすこと が期待できる」

といわれています。

アミノ酸変異株について

ゾフルーザの利点を紹介してきましたが、留意すべき点もあります。

それは、提言が治療戦略上の位置付けを見送った理由でもある、治療後にアミノ酸変異のあるウイルスが高率に検出されたことです。

小児を対象とした国内第3相試験では、ゾフルーザ投与患者のうち、投与前後に塩基配列の解析が可能だった 77例のうち18例(23.3%)で、アミノ酸変異株が検出されています。

変異株を認めたのは、全てA型インフルエンザの患者でした。
また、成人と12歳以上の小児を対象とした臨床試験でも、370例中36例(9.7%)で、同じような変異株が検出されています。

アミノ酸変異の有無別に見た有効性

対象はゾフルーザを投与され、かつRT-PCRの結果に基づきインフルエンザウイルス感染が確認された被検者の集団(ITTI 集団)。

ここでいうアミノ酸変異は、インフルエンザウイルスの複製を担う蛋白質(RNA ポリメラーゼ)で見つかりました。

RNA ポリメラーゼはPA、PB1、PB2の3つのサブユニットから構成されます。
しかし、そのうちPAの遺伝子の38番目のアミノ酸イソロイシン(I)がトレオニン(T)に置き換わっていました(フェニ ルアラニン[F]やメチオニン[M]への置換も見つかっています)

PAにはゾフルーザが作用するキャップ依存性エンドヌクレアーゼ活性があるため、この変異ウイルスが出現したことで、インフルエンザウ イルスのゾフルーザに対する感受性(効き目)は約50倍低下していたといわれています。

アミノ酸変異株の影響

それでは、こうした変異株の出現は、臨床上あるいは公衆衛生上、どのように評価されるのか。

委員会の結論としては、

アミノ酸変異による臨床効果への影響は不明であるとし、これからの検討が必要」

との結論に落ち着きました。

12歳以上65歳未満の患者を対象とした臨床試験(T0831)によると、罹病期間(中央値)は、変異なし群(419 例)が52.4時間だったのに対して、変異あり群(36例)が63.1時間と延長していた(有意差の検定は行われていません)。

ちなみに、 変異あり群の罹病期間が、プラセボ群(80.2 時間)を超えることはなかった。
→アミノ酸変異があっても、何も治療しない場合と比べてインフルエンザに罹っている期間がながくなることはなかった。

また、6カ月以上12歳未満の患者を対象とした臨床試験(T0822)では、罹病期間(中央値)は、変異なし群(86例)が43.0時間、 変異あり群(17 例)が 79.6 時間だった(有意差の検定は行われていません)。

どちらも変異あり群で罹病期間の延長が見られたが、ウイルス感染力価の再上昇を認めた時期となる、投与開始から5日目または6日目以降の「インフルエンザ症状なし」並びに「発熱なし」の症例の割合は、変異の有無別で大きな差を認めていません。

しかし、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の判断は

アミノ酸変異が臨床に与える影響は不明である

でした。

理由としては、アミノ酸変異株の病原性や伝播性に関する情報、さらには治療開始時のアミノ酸変異を有するインフルエンザウイルス感染者に対するゾフル ーザの有効性に関する情報が得られていない、というものだった。

また、ウイルス力価の再上昇が認められたことについては、公衆衛生上の留意が必要とし、

経年的なインフルエンザウイルスの耐性動向調査を継続的に実施し、得られた情報を医療現場に適切に提供する必要がある」

と結論しています。

まとめ

現時点での抗インフルエンザ薬、ゾルフーザの評価として、

メリット:1回の経口投与で済むため、利便性が高く、アドヒアランスは優れている

懸念事項:アミノ酸変異の発生率が高く、それによる治療への影響や公衆衛生的な課題もある

ということでした。

これからのインフルエンザは流行期に入ります。

治療薬の正しい知識とともに、ワクチン接種がまだの方は積極的にワクチンを接種しましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!