薬剤師目線で母乳を考える:赤ちゃんの腸内細菌について


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以前に、2歳~3歳まで母乳を挙げていると免疫力が上がる。感染症にかかりにくというツイートをしました。

最終的には、赤ちゃん本人とママの体調なども含めて絶対的に母乳を続けた方がいいわけではなく、それぞれの事情に合わせて可能であれば母乳育児は有用結論に至りました。

今回は母乳が腸内細菌に与える影響についてです。

母乳が赤ちゃんの腸内細菌に与える影響

人間の腸の中には 100 兆個以上の細菌が住みついて、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼ばれる生態系をつくっています。

近年は検査技術の発達により、培養をしなくてもどんな腸内細菌がいるか調べることができるようになったため、腸内細菌についての研究が大きく進んできました。

健康であることと、その人が持っている腸内細菌の種類や多様性には、何かしらの関連があるのではないかともいわれています。

腸内細菌としてよく話題に上るのは、風邪などの感染症にかかりにくくなる、もしくはダイエットや花粉症との関連性についてであり、子供にはあまり関係ないように思えるかもしれません。

しかし、腸内細菌叢がつくられるのは子供時代、特に新生児から乳幼児期にかけてなのです。

基本的に、赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるときは無菌です。

しかしお腹の外に出るその瞬間から、赤ちゃんの消化管に菌が入り込んでいき腸内細菌叢をつくります。

出産方法の違い(経膣分娩または帝王切開)や、母乳栄養またはミルク栄養なのか、といった違いによって赤ちゃんの腸内細菌叢も異なることがわかってきています。

出産の違いによる肥満との関連性

実は子供では腸内細菌と肥満やアレルギー、免疫系の病気との関連性も注目されていて、出産方法や栄養方法と肥満等の関係を調べた研究が複数あります。

2016年にハーバード大学から発表された研究では、9~12歳の子供2万人以上を10年以上に渡って追跡したものがあります。

追跡中のいずれかの時点で肥満と分類されるリスクは、帝王切開で出生した子の方が経膣分娩で出生した子の1.15倍になっていました。

この結果から帝王切開での出生が悪いという意味ではありません。

帝王切開には帝王切開に至る理由があります。

逆子であったり、胎児の状態がよくなかったり理由は様々ですが帝王切開という選択は必要です。

ただ、もしかしたら帝王切開で生まれた子供の方が、肥満になりやすいかもしれない。

ということです。

母乳とミルクの違いが肥満に与える影響

さきほどと同じ子供たちのデータを使って、9~12歳の子供の肥満とその子達が赤ちゃんだったときの栄養状況を調べた研究もあります。

生後6カ月まで母乳だけで育てられた子は、ミルクだけで育てられた子と比べて肥満のオッズが0.66倍と低いことがわかりました。

これは母乳育児の方が肥満になりにくいのではという可能性を示した研究です。

また、母乳を長く飲んでいればいるほど、肥満になるオッズは低かったのです。

母乳が腸内細菌に与える影響

アメリカ・フィンランド・ドイツ・スウェーデンの研究者たちが、生後3カ月から3歳までの子供903人、 のべ1万2千の便サンプルを解析して腸内細菌の種類や、どんな因子が腸内細菌の多様性を高めるのかについて調べました。

その結果、生後3カ月から1歳2カ月ころまでが腸内細菌が大きく発達する時期に当たり、母乳を飲んでいるかどうかや出産方法、住んでいる場所や兄弟、ペットの有無などが腸内細菌に影響していることがわかりました。

なかでも特に影響が大きいのは母乳です。

母乳だけの栄養であっても、ミルクとの混合栄養であっても、母乳をあげていることで腸内のビフィズス菌が多くなることがわかったのです。

母乳が少ししか出ない場合も、ミルクと混合にすることでビフィズス菌が増える可能性があるということです。

また、これまで赤ちゃんの 腸内細菌は、離乳食を始めることで変わっていくと考えられていました。

しかし、腸内細菌叢の発達期が終わる時期は、離乳食のはじまる5~6カ月ではなく、1歳過ぎに来ます。

実は、食事を始めることよりも、母乳をやめることの方が腸内細菌に大きな影響を与えるようです。

子供に良い腸内細菌

では、どんな腸内細菌叢が良いのでしょうか。

一般に腸内細菌の多様性(いろいろな細菌がいる状況)があるのは良いことですが、母乳を飲んでいる子の腸内細菌はビフィズス菌が多く、最初はむしろミルクだけの子より多様性が低い状態です。

しかし、時間が経って母乳を飲む量が減るとともに、この関係は逆転していくといわれています。

また、体に良い特定の菌が決まっているとも限りません。

1型糖尿病と腸内細菌との関連性

今回紹介した研究では、別の目的として1 型糖尿病と腸内細菌の関連を調べるという大きな目的がありました。

そもそも1型糖尿病とは子供時代に発症することが多い糖尿病であり、膵臓の中にあるインスリンを作る細胞を自分自身の免疫が攻撃してしまうことで起こります。

しかし研究の結果では、1 型糖尿病に関しては特定の菌の種類が関連しているとは言えず、むしろ様々な菌の機能が関係しているのだろうと結論づけられていました。

まとめ

日本では、基本的に帝王切開をするのは医学的な必要がある場合です。

母乳とミルクに関しても、母乳希望だけれど事情があってミルクというお母さんも多いことも事実です。

帝王切開もミルクも素晴らしいものですし、出産方法や栄養方法はそれぞれの家庭の事情があって決まるものなので、 ことさらに経膣分娩や母乳の良さを訴える必要性はないかもしれません。

しかしその上で、母乳をいつまであげるか迷っているママにとってはこのような研究参考になるのではないかと思います。

また、現在は善玉菌として乳酸菌やビフィズス菌などの菌の種類が取り上げられ、食品等に利用されています。
しかし腸内細菌が集団としてどういう機能を果たしているかは、いまだ解明されていません

今後腸内細菌の機能や関連性が明らかになってくると、機能性食品の内容も変わってくるのかもしれません。

母乳育児をする上で注意しなければいけないこととしてビタミンKの不足があります。

詳しくは下の記事をご参照ください。

【新生児】産まれたての赤ちゃんへのビタミンK投与について。

2018年10月26日

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!