産まれたての赤ちゃんは免疫力が弱いため、いろいろと気遣いが必要ですよね。
感染対策の一つとして、まずは赤ちゃんの試練ともいえるワクチン接種があります。
ワクチンの詳細は以下の記事をご参照ください。
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そしてワクチンの次に重要なのが哺乳瓶の消毒についてです。
完全母乳の赤ちゃんも、ミルク併用の赤ちゃんも使用する機会のある哺乳瓶。
完全母乳であれば、機会は少ないかもしれませんが、お母さんから搾乳したものを哺乳瓶であげたりもしますよね。
哺乳瓶を使う場合には、赤ちゃんに合った哺乳瓶を使用する必要があります。
最近では哺乳瓶もいろいろ改良されてきていますので、まずは赤ちゃんに合った哺乳瓶の選択を。
ではみなさん。
目次
薬剤師目線:哺乳瓶の消毒には熱湯? レンジ加熱?
どちらかが必ず必要!!
と思っていませんか。
いろいろな育児書がありますが、持っている育児書では、生後 1 カ月までは消毒するようにと記載されています。
ネットをで調べてみると少なくとも 3~4 カ月までとか、離乳食がはじまるまでと書いてあったりします。
情報がいろいろあって、心配だから長めに消毒をと考える母親も少なくはないと思います。
哺乳瓶を清潔に
確かに哺乳瓶を清潔に保つことは必要です。
しかし、赤ちゃんといえばしょっちゅう指をしゃぶっているもので、当然指は雑菌だらけなのではないか、
という疑問もあります。
消毒までする必要は本当にあるのでしょうか?
消毒する必要があるとすれば、いつまでやれば良いのでしょうか?
哺乳瓶の消毒は、細菌から赤ちゃんを守るために行うのですが、実はミルクと関連する病気の原因菌はほとんど決まっています。
- サカザキ菌
- サルモネラ菌
です。
液体ミルクは無菌なのですが、残念ながら日本ではまだ販売されていません。
しかし粉ミルクは、現在の製造技術では無菌にすることはできません。
サカザキ菌
特にサカザキ菌は、土壌や水など環境中に多く存在する菌で、粉ミルクからもよく検出される上、髄膜炎などの重症感染症を起こすことがあります。
1 歳未満の赤ちゃんは感染のリスクが高く、特に危険なのは
- 2カ月未満の赤ちゃん
- 早産や低出生体重児の赤ちゃん
- そして何らかの理由で免疫抑制状態にある赤ちゃん
です。
これまでにも多くのアウトブレイク(集団的に感染が普段よりも流行すること)が報告されており、2004 年にはフランスで2人の赤ちゃんが亡くなっています。
これを受けて、世界保健機関(WHO)は2007年に、粉ミルクの調乳を70度以上で行うようにという新しいガイドライン(指針)を発表しました。
サカザキ菌は、71~72度に加熱すれば、およそ0.7秒ごとに10分の1の数に減らすことができます。
これが、調乳温度が変更された根拠です。
実は哺乳瓶や調乳に使う道具の消毒も、このサカザキ菌の感染を防ぐのが主な目的です。
というのも、粉ミルク自体ではなく、ミルクを溶かすために混ぜたスプーンや哺乳瓶を洗っていたブラシ
から、ミルクを通じてサカザキ菌に感染したと考えられるケースが過去にあったからです。
サカザキ菌の一部の株は、特にシリコンやプラスチックの表面にくっついて繁殖し、バイオフィルムとい
う膜を形成します。
一般に、バイオフィルムが形成されると物理的に除去するのは大変で、薬剤への耐性も上昇すると言われています。
できるだけバイオフィルムを作らせないことが大切ですし、バイオフィルムができてしまったら十分に消毒することが必要でしょう。
このような観点から、WHOのガイドラインでは、哺乳瓶は 1 歳になるまで毎回消毒することになっており、イギリス国民保健サービスのHPでもWHOのGLに沿った内容が推奨されています。
アメリカの哺乳瓶の消毒
一方で、アメリカでは消毒はしないのが一般的です。
ミルクを作る際に勧められているのは、
- ミルクを作る前に手を洗うこと
- 哺乳瓶や哺乳瓶の乳首をよく洗うこと
- 室温の場所に2時間以上置いてあったミルクは捨てること
の 3 つです。
アメリカ小児科学会のHPでも、
食器洗い機を使うかお湯と洗剤で洗えば、消毒する必要はない
とはっきり記載されています。
では日本でも本当に消毒しなくても大丈夫なのでしょうか。
日本で行われた哺乳瓶の消毒の必要性を検討した研究
2003年に大分県立看護科学大学から発表された論文では、哺乳瓶の消毒の必要性について検討する実験を行っています。
哺乳瓶にわざと大腸菌などの細菌を付着させ、洗浄や消毒をした後に哺乳瓶に10mlの生理食塩水を入れて回収し、どのくらい菌が残っているかを比較しました。
洗浄・消毒の方法は、
- 98 度/90 度/60 度のお湯を50ml哺乳瓶に入れて5分放置する方法
- 60mlの水を入れて 5 分/3 分/1 分電子レンジで加熱する方法
- 食器洗い洗剤とブラシで洗う方法
- 水道水とブラシで洗う方法
の 8 パターンです。
その結果、60度のお湯や電子レンジ1分、ブラシを使って水道水で洗っただけの哺乳瓶には細菌が残っていて、ブラシ・水道水の哺乳瓶からは1ml中10~100個の細菌が検出されました。
しかし家庭用の食器洗い洗剤で洗浄した哺乳瓶からは、90度以上の熱湯や電子レンジで3分以上消毒した哺乳瓶と同様に、菌は検出されなかったのです。
菌がついた直後に洗浄しているので、バイオフィルムが形成されていないというのもポイントでしょう。
1 回だけの実験結果ではありますが、哺乳瓶を使った後にすぐ洗浄すれば、洗剤とブラシだけで清潔に保つことができることがわかります。
また、アメリカのガイドラインで消毒がないのは、食器洗い乾燥機が普及していることが一つの理由かもしれません。
食器洗い乾燥機に入れれば、自動的に60~80度程度のお湯にさらされることになるので、サカザキ菌を減らす効果もある程度期待できそうです。
乾燥機はこの利点を使って、病院などの医療機関でも滅菌の意味で使われている部分もあります。
哺乳瓶は必ず消毒しないといけない?
もちろん消毒するのがベストだとは思いますが、赤ちゃんはそもそも無菌ではないので、菌をゼロにするのを目指す意味は無いでしょう。
どんな方法にしろ、菌が繁殖しないよう、道具を清潔に保つのが一番大切なことです。
哺乳瓶は使ったらすぐに洗浄し、ブラシと洗剤を使って、ミルクの汚れをきちんと洗い落とすようにしてください。
すぐに洗浄するのが難しい場合も、さっと水でゆすいでおくのがおすすめです。
そして赤ちゃんを感染から守るためには、手を洗うことも消毒と同じくらい、またはそれ以上に大切です。
もっとも重要なことは手を洗うこと
哺乳瓶を組み立てたり、調乳したりする前は必ず手を洗いましょう。
夜中など、手を洗うのが大変なときは、手指消毒スプレーで手を消毒するのでも良いと思います。
日本の粉ミルクの調査では、サカザキ菌が検出されたのは2~4%の検体で、その量も333グラム中1個と決して多いわけではありません。
哺乳瓶の消毒が常識の国もあれば、そうでない国もあります。
消毒ばかりが重視されがちですが、調乳前の手洗いや、ミルクを作ってからはなるべく放置しないなど、消毒以外の方法も合わせて、赤ちゃんを感染から守ってあげることが重要です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。