児童虐待を予防するために:介入から支援へ


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児童虐待が近年日本でも多く問題になっています。

児童虐待の防止等に関する法律は、平成12年に深刻化する児童虐待の予防と対応のために制定されました。

古くは、昭和8年に旧児童虐待防止法が制定されています。

虐待を発見したら、まずは親子を隔離することよりも支援が大切

日本よりも約30年早く、児童虐待防止法が制定されたアメリカ。

アメリカも児童虐待対策は介入から予防重視へ変わってきました。

児童虐待を防ぐには支援が重要

児童の虐待対策には、特効薬などは存在しません

虐待死が報じられるたびに世間は胸を痛めますが、リスクがあるなら子どもを保護しないといけない。
親子を分離する介入を早くすべきだったといわれることが多いのが現状です。

アメリカも子供を保護するという介入が第一との道を進んできました。

しかしアメリカの今は予防と早期の家族支援こそ重要で効果的という教訓に行きつきました。

アメリカでの虐待への支援体制

アメリカは1980年代までに通報・調査・保護の態勢が整いました。

しかし、親元に帰れない子の中には里親家庭を何十カ所も転々とする子もいることが問題になりました。

親との分離後も子どもの人生は続くという、当たり前で重い事実への解決策がありませんでした。

90年代になると、予防や親子の再統合のための親支援が重要視され始めました。

特に低所得・初産の家庭を看護師が妊娠期~2歳に定期訪問するNFPというプログラムは、虐待が半減するなどの効果が実証されました。

NFPは、5歳まで通うHFAという家庭訪問プログラムと合わせて全米で支持され、爆発的に広がりました。

妊娠期の支援

妊娠期は、女性にとって大きな変化の時です。

そのため妊娠していないときよりも助けを必要とし、信頼感の中でケアを提供できれば人生を変える機会になります。

育児だけでなくパートナーとの関わり方、メンタル、雇用や金銭管理など、幅広い問題に関わることができます。

このような問題が悪化してから親子を分離したり、家族を丸ごと支援したりするのはタイミングが遅く、コストもかさむ上に効果が得にくく、親子も支援者にも負担が大きいです。

予防に注目した、多様な支援が大切です。

支援と税金の問題

しかし支援が必要といっても支援するためにはお金が必要です。

2010年にオバマ政権が予防の柱である家庭訪問に連邦予算をつけるまでの道のりは、とても長いものでした。

子どもの命を救うことに異論を唱える人はいなくても、ダメ親に税金を使うのはおかしい、という意見が根強くあるためです。

多くの人にとって、虐待する親は別世界の人間で虐待するような親は子どもを持たない方がいいという考えがあります。

この壁を乗り越えるためには、社会を説得するための効果の検証が必要不可欠です。

さらに虐待の原因は必ずしも親だけではなく、環境にある場合もあります。

単純に親を再教育すればよいというものではなく、頼れる人やサービスなど家庭支援の多様な資源を地域に作ることも大切です。

支援とともに介入の継続も必要

どれだけ支援の体制を確立しても育てられない親もいるため、介入の継続も必要です。

その場合は、的確にリスク判断をして分離した後、子どものために永続的な家族を見つけてあげる態勢を整えることも不可欠です。

ただ日本はアメリカとは違い、低成長の時代に入ってから虐待対策を手厚くしなければならない難しい状況です。

財源が豊富にあるならまだしも、予防や介入、家族の再統合。
どこにどれだけ予算をつけるのか、効果的な手法は何か。よく考えて進むべき局面だと思います。

日本での虐待に対する取り組み

日本でもこれまでに紹介した米国の取り組みなどを参考に、より効果的な虐待予防を目指す動きが広がっています。

赤ちゃんが泣きやまないと悩んだ親が、子どもを強く揺さぶり、重い障害や死に至らせてしまうこともあります。

現在の日本では東京医科歯科大と連携して開発・導入したタブレット型端末のアプリを母親に操作してもらい、泣きやまない時の対処法を動画も交えて伝えることが始まっています。

乳児のいる世帯への家庭訪問は、かつて国内では自治体レベルの取り組みだったが、虐待の早期発見のため、09年度施行の児童福祉法で生後4カ月までに全戸を対象に行われることになりました。

ただ、区によっては訪問の主力を担う保健師が不足し、限られた時間で親たちの状態や悩みと向き合わざるを得なくなっています。

アプリ導入で虐待のリスクを軽減

2018度から試験的に導入されたアプリがあります。

親に質問に順に答えてもらうだけで心身の状態がわかり、虐待リスクを把握する助けになるというもの。

育児方法やDVの相談先など、様々な動画や情報も見ることができ、より細やかな支援が可能になっています。

子どものころ虐待された人が大人になった時に精神障害が現れ、生活保護を受けながら見守り対象になる場合も少なくありません。

このような負の連鎖を断ち切るには、予防的な早期支援が重要です。

さらに支援を届きやすくするためなら、経験で培った直感の上にアプリのようなツールも必要なのかもしれません。

そして、最も大事なことは介入ではなく、もっと国は予防に注力することが必要です。

家庭訪問の充実に加え、それにかかわる人も増やす必要があります。


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ABOUTこの記事をかいた人

薬学部卒業後、そのまま大学院へ。 医療薬学を学び、患者さんのために最新の医療を実践するために病院薬剤師へ。 薬剤師で医学博士。 ここでは患者さんからの質問を調べつつ、役立つ情報を発信していければと思います。 専門は感染制御や救急、小児。お問い合わせもお気軽にどうぞ!!