薬剤師目線で母乳を考える:赤ちゃんの腸内細菌について

以前に、2歳~3歳まで母乳を挙げていると免疫力が上がる。感染症にかかりにくというツイートをしました。

https://twitter.com/takutakkuuun/status/1098060089389273088

最終的には、赤ちゃん本人とママの体調なども含めて絶対的に母乳を続けた方がいいわけではなく、それぞれの事情に合わせて可能であれば母乳育児は有用結論に至りました。

今回は母乳が腸内細菌に与える影響についてです。

母乳が赤ちゃんの腸内細菌に与える影響

人間の腸の中には 100 兆個以上の細菌が住みついて、腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼ばれる生態系をつくっています。

近年は検査技術の発達により、培養をしなくてもどんな腸内細菌がいるか調べることができるようになったため、腸内細菌についての研究が大きく進んできました。

健康であることと、その人が持っている腸内細菌の種類や多様性には、何かしらの関連があるのではないかともいわれています。

腸内細菌としてよく話題に上るのは、風邪などの感染症にかかりにくくなる、もしくはダイエットや花粉症との関連性についてであり、子供にはあまり関係ないように思えるかもしれません。

しかし、腸内細菌叢がつくられるのは子供時代、特に新生児から乳幼児期にかけてなのです。

基本的に、赤ちゃんはお母さんのお腹の中にいるときは無菌です。

しかしお腹の外に出るその瞬間から、赤ちゃんの消化管に菌が入り込んでいき腸内細菌叢をつくります。

出産方法の違い(経膣分娩または帝王切開)や、母乳栄養またはミルク栄養なのか、といった違いによって赤ちゃんの腸内細菌叢も異なることがわかってきています。

出産の違いによる肥満との関連性

実は子供では腸内細菌と肥満やアレルギー、免疫系の病気との関連性も注目されていて、出産方法や栄養方法と肥満等の関係を調べた研究が複数あります。

2016年にハーバード大学から発表された研究では、9~12歳の子供2万人以上を10年以上に渡って追跡したものがあります。

追跡中のいずれかの時点で肥満と分類されるリスクは、帝王切開で出生した子の方が経膣分娩で出生した子の1.15倍になっていました。

この結果から帝王切開での出生が悪いという意味ではありません。

帝王切開には帝王切開に至る理由があります。

逆子であったり、胎児の状態がよくなかったり理由は様々ですが帝王切開という選択は必要です。

ただ、もしかしたら帝王切開で生まれた子供の方が、肥満になりやすいかもしれない。

ということです。

母乳とミルクの違いが肥満に与える影響

さきほどと同じ子供たちのデータを使って、9~12歳の子供の肥満とその子達が赤ちゃんだったときの栄養状況を調べた研究もあります。

生後6カ月まで母乳だけで育てられた子は、ミルクだけで育てられた子と比べて肥満のオッズが0.66倍と低いことがわかりました。

これは母乳育児の方が肥満になりにくいのではという可能性を示した研究です。

また、母乳を長く飲んでいればいるほど、肥満になるオッズは低かったのです。

母乳が腸内細菌に与える影響

アメリカ・フィンランド・ドイツ・スウェーデンの研究者たちが、生後3カ月から3歳までの子供903人、 のべ1万2千の便サンプルを解析して腸内細菌の種類や、どんな因子が腸内細菌の多様性を高めるのかについて調べました。

その結果、生後3カ月から1歳2カ月ころまでが腸内細菌が大きく発達する時期に当たり、母乳を飲んでいるかどうかや出産方法、住んでいる場所や兄弟、ペットの有無などが腸内細菌に影響していることがわかりました。

なかでも特に影響が大きいのは母乳です。

母乳だけの栄養であっても、ミルクとの混合栄養であっても、母乳をあげていることで腸内のビフィズス菌が多くなることがわかったのです。

母乳が少ししか出ない場合も、ミルクと混合にすることでビフィズス菌が増える可能性があるということです。

また、これまで赤ちゃんの 腸内細菌は、離乳食を始めることで変わっていくと考えられていました。

しかし、腸内細菌叢の発達期が終わる時期は、離乳食のはじまる5~6カ月ではなく、1歳過ぎに来ます。

実は、食事を始めることよりも、母乳をやめることの方が腸内細菌に大きな影響を与えるようです。

子供に良い腸内細菌

では、どんな腸内細菌叢が良いのでしょうか。

一般に腸内細菌の多様性(いろいろな細菌がいる状況)があるのは良いことですが、母乳を飲んでいる子の腸内細菌はビフィズス菌が多く、最初はむしろミルクだけの子より多様性が低い状態です。

しかし、時間が経って母乳を飲む量が減るとともに、この関係は逆転していくといわれています。

また、体に良い特定の菌が決まっているとも限りません。

1型糖尿病と腸内細菌との関連性

今回紹介した研究では、別の目的として1 型糖尿病と腸内細菌の関連を調べるという大きな目的がありました。

そもそも1型糖尿病とは子供時代に発症することが多い糖尿病であり、膵臓の中にあるインスリンを作る細胞を自分自身の免疫が攻撃してしまうことで起こります。

しかし研究の結果では、1 型糖尿病に関しては特定の菌の種類が関連しているとは言えず、むしろ様々な菌の機能が関係しているのだろうと結論づけられていました。

まとめ

日本では、基本的に帝王切開をするのは医学的な必要がある場合です。

母乳とミルクに関しても、母乳希望だけれど事情があってミルクというお母さんも多いことも事実です。

帝王切開もミルクも素晴らしいものですし、出産方法や栄養方法はそれぞれの家庭の事情があって決まるものなので、 ことさらに経膣分娩や母乳の良さを訴える必要性はないかもしれません。

しかしその上で、母乳をいつまであげるか迷っているママにとってはこのような研究参考になるのではないかと思います。

また、現在は善玉菌として乳酸菌やビフィズス菌などの菌の種類が取り上げられ、食品等に利用されています。
しかし腸内細菌が集団としてどういう機能を果たしているかは、いまだ解明されていません

今後腸内細菌の機能や関連性が明らかになってくると、機能性食品の内容も変わってくるのかもしれません。

母乳育児をする上で注意しなければいけないこととしてビタミンKの不足があります。

詳しくは下の記事をご参照ください。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

子宮頸がんの発症が増加:ワクチンの普及が必要

日本の子宮頸がんの罹患率。

いわゆる子宮頸がんになる人が2000年を境に増えてきていることがわかりました。

大阪大学では日本における子宮頸癌の動向を解析した結果です。

子宮頸がんの数が増加

日本では子宮頸がん検診の受診率が非常に低く、HPVワクチンの積極的勧奨は一時中止され5年間以上が経過しています。

子宮頸がんの将来の罹患率や死亡者数を減少させるためにも、日本における子宮頸がんの疫学的傾向を理解することが重要と言われています。

最近では、子宮頸がんが増加していることは知られていますが、子宮頸がんの

  • 種類別
  • 年齢層別
  • 進行ステージ別
  • 治療方法別

罹患率や生存率の推移といった詳細な解析はこれまで行われていません。

また、子宮頸がんの治療に同時放射線化学療法(CCRT)が導入さましたが、治療成績の長期的な傾向や詳細な解析が十分には行われていませんでした。

がん登録データから子宮頸がんの罹患率を分析

今回、1976~2012年の間に登録された大阪府がん登録のデータを利用して、子宮頸がんの種類別、年齢層別、進行ステージ別、治療方法別の罹患率を解析がされました。

その結果から、10 万人あたりの年齢調整罹患率は1976年からは減少してましたが、2000年以降は増加していることがわかりました。

次に、扁平上皮がんと腺がんの年齢層別の年齢調整罹患率を調べたところ、近年扁平上皮がん、腺がんとも増加していますが、検診での発見が難しく治療抵抗性のある腺がんは30歳代以下の若年層で一貫して増加していることが判明しました。

また、サバイバー(がんになった患者の)生存率を調べたところ、診断から1年生きることができた場合の5年生存率、 診断から2年生きることができた場合の5年生存率と生存年数が上がるにつれ、サバイバー生存率は有意に上昇していました。

サバイバーについての詳細は、こちらの記事も併せてお読みください。

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さらに、がんのステージ別に調べてみると、子宮頸部に臓器に限定される「限局性」および、隣接する臓器にがんが広がっている「隣接臓器浸潤」のケースでは、10年相対生存率が2003年以降に著しく改善していました。

この結果は、1999年以降のCCRTの導入や2000年以降の治療 GLの普及が有効であった結果ではないかと言われています。

一方で、がんの遠隔転移を伴うような進行した子宮頸がんのケースでは、有意な予後の改善は見られませんでした。

この限局性のケースにおいて主治療として手術が行われた群では、年齢による相対生存率の違いはみられませんでした。

放射線を含む治療が行われた群では、若年層では相対生存率が低い傾向にありました。

この結果から、若年層は放射線治療が効きにくいことが考えられるとしています。

まとめ

今回の研究の結果から、子宮頸がんが近年増加していることが明らかになりました。

今後の、子宮頸がん検診およびHPVワクチンの普及が期待されています。

子宮頸がんワクチンにも種類があります。

詳細はこちらを参照ください。

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また子宮頸がんの治療では、若年層では治療抵抗性の腺がんが特に増加していて、加えてがんの遠隔転移といった進行症例において予後の改善が認められなかったことから、治療のさらなる改善が必要であるといわれています。

さらに、若年層では子宮頸がんの治療法として手術より放射線治療が効きにくいことが判明し、これらの結果は今後治療選択を行う上での有益な情報になると言われています。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

インフルエンザの治療に漢方薬は使えるのか:薬剤師目線で解説

ようやく流行のピークを越えたインフルエンザ。

しかし、まだまだ油断は禁物です。

これからはインフルエンザB型が流行する時期。

A型にかかった方もB型にかからないように注意が必要です。

今回は私のコミュニティでも話題になった

インフルエンザに対する漢方薬の効果について

薬剤師の目線で解説していきます。

インフルエンザそのものの特徴や、医薬品ゾフルーザに関しては以下の記事もご参照ください。

[kanren postid=”475,353″]

インフルエンザの診断と検査結果

まず、インフルエンザ感染症の診断は、迅速診断キットによる検査結果に基づくことが多いと思われがちです。

しかし、検査結果が陰性でもインフルエンザを否定できないケース(偽陰性)は少なくありません。

そのため、検査陽性ならば抗インフルエンザ薬を処方し、陰性ならば処方しないという画一的な診療は、推奨されません。

時にインフルエンザ検査が陰性であっても、そのほかの情報からインフルエンザの疑いが高ければ抗インフルエンザ薬を医師は処方することができます。

神戸大学大の岩田健太郎先生によるインフルエンザ診療方針の試案では、

重症・ハイリスク患者においては、迅速診断キットの結果に関係なく抗ウイルス薬の使用を考慮するとされています。

重症でもハイリスクでもない患者では、抗ウイルス薬か漢方薬かを患者に選択してもらいます。

抗ウイルス薬を希望した場合、検査前確率が50%未満であれば検査を行い、それ以上であれば行わない。

つまり、流行状況や臨床症状から目前の患者が50%以上の確率でインフルエンザに罹患して いると考えられれば、検査なしで抗ウイルス薬を処方する。

また、漢方薬の処方に際しては、検査前確率に関わらず検査は行わないとされています。

検査が信用できるかについては、詳しくは以下の記事もご覧ください。

[kanren postid=”754″]

インフルエンザ感染症に対する標準的な薬物療法は抗ウイルス薬だといえます。

今回は、インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性について考えていきます。

補中益気湯でインフルエンザ予防ができるのか?

インターネットでインフルエンザに対する漢方薬関連の情報を検索すると、

[box class=”red_box” title=””]補中益気湯でインフ ルエンザが予防できるかもしれない[/box]

といった内容の記事を発見することができます。

もちろん医療用の補中益気湯にはインフルエンザ予防の適応はありません。

しかし、この薬はOTC薬として一般のドラッグストアやネット販売でも購入可能となっています。

補中益気湯のインフルエンザ予防効果に関して報告はいくつかあります。

一つ目の報告はBMJ(英国医師会誌)に掲載された、英国におけるA/H1N12009(2009年に世界的に流行した新型インフルエンザ)の流行状況と死亡率に関する論文です。

子の論文では、病院職員358人を対象に、2009年9月7日より、補中益気湯を服用した179人と、服用しなかった179人(グループ 1)の2群を比較して、インフルエンザの発症数を検討しました。

その結果、補中益気湯を投与された職員のうち 14 人が1週間後に服用を中止し(グルー プ 2)、さらに治療開始 4 週後までに103人が中止(グループ 3)しており、8 週間にわたり服用を継続していたのは62人でした(グループ4)。

9月7日~11月2日までの8週において、迅速診断検査によって確認された A 型インフルエンザ感染は8人であり、そのうち7人は補中益気湯を一度も服用していなかったと報告されています。

また、 グループ1とグループ2~4を比較してインフルエンザ発症者を比較したところ、統計学的な差が示されています(P<0.05)。

しかし色々なバイアス(統計学的な偏り)を考えると、この結果のみで補中益気湯のインフルエンザ予防効果を論じることには無理があります。

そもそもこの報告には、

予防効果について検証されるべき

という記載はあっても、

予防効果がある

とは書かれていません。

[box class=”yellow_box” title=”結論”]補中益気湯には、インフルエンザウイルスの細胞内侵入を防ぐ可能性が示されているが、2019年1月末時点において補中益気湯のインフルエンザに対する人での有効性(予防もしくは治療効果) を検討した報告は見付けることはできませんでした。[/box]

麻黄湯ではインフルエンザ予防効果はあるのか?

医療用として用いられている麻黄湯は、キョウニン、マオウ、ケイヒ、カンゾウから構成される漢方薬です。

インフルエンザ感染初期の症状緩和に保険適用があります。

麻黄湯には基礎的研究において抗ウイルス作用が示されていて、インフルエンザ治療における有望な選択肢となる可能性があります。

麻黄湯に関する報告は5つあります。

小児を対象に発熱に対する有効性を検討した2つの研究では、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)と比較して、いずれも発熱持続時間が有意に短縮していた。

また、成人を対象に発熱に対する有効性を検討した3研究中2研究では、オセルタミビルと統計学的な有意差は認めなかった

一方、その他の1件の研究では、発熱期間がオセルタミビルと比較して麻黄湯で17時間ほど短いことが示されています。

タミフルなどと比較して効果に有意な差を認めないということは、抗ウイルス薬と麻黄湯がほぼ同等の効果を持つとも考えられます。

また、インフルエンザ感染症に対するアセトアミノフェン(カロナール他)の効果は限定的であり、早期に解熱を期待するのであれば、麻黄湯は有望な治療薬となり得るかもしれない。

実際のところ、インフルエンザに有効な漢方薬はないのか?

日本でインフルエンザ(流感)に保険適用がある漢方薬には、麻黄湯以外に柴胡桂枝湯、 竹じょ温胆湯があります。

しかし、論文や研究報告を検索しても、これら漢方薬のインフルエンザ感染症に対する有効性を検討したものを見付けることはできません。

インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性を検討した比較的規模の大きい研究は2011年に報告されています。

インフルエンザ感染症に対する漢方薬の有効性を検討した質の高い報告であるこの研究は、15~69歳のインフルエンザ患者410人(平均19.3歳、男性60%)を対象としたもの。

被験者を、

[box class=”black_box” title=””]

  1. オセルタミビル 75mg1 日2回5日間の投与(102人)
  2. 麻杏甘石湯と銀翹散の併用 1日4回5日間の投与(103人)
  3. 麻杏甘石湯、銀翹散とオセルタミ ビルの併用投与(102人)
  4. 薬物の投与なし(103人)

[/box]

の4群に割り付け、解熱までの時間を比較しました。

その結果、解熱までの時間中央値は、治療なし群の26時間と比較して、オセルタミビル群で20時間、麻杏甘石湯と銀翹散併用で 16 時間、 オセルタミビル、麻杏甘石湯と銀翹散の併用で15時間という結果でした。

薬剤師目線で考える

研究の問題などを考えると、漢方薬の有効性は現時点では決して高いものではないという結論に至ります。

ただ、そもそも漢方薬はインフルエンザ症状という”現象”に対する治療であり、その治療対象はインフルエンザウイルスではありません。

もちろん、基礎的研究において抗ウイルス作用が示唆されている生薬成分もあるとは思いますが、それが臨床症状の改善をもたらすかどうかについての因果は現時点で証明されていないのです。

そして、“現象”に対する治療であれば、インフルエンザウイスルが存在するかどうかはどうでもよい問題でもあります。

このように記載すると無責任な気もしますが、このどうでもよさが、必要性の低い検査や不適切な抗ウイルス薬投与を減らすことにつながるかもしれません。

まとめ

インフルエンザの診断と治療薬の選択について記載しました。

色々な研究があり、白黒はっきりしないのが現状です。

まずできることは、

[aside type=”warning”]

  • 医療者は、インフルエンザの可能性は低いのに念のため抗インフルエンザ薬を処方しておくということをしない。
  • 患者としては、むやみに薬を希望しない

[/aside]

これらのことが抗インフルエンザ薬の適正使用につながるのではと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

大流行中の風疹:ワクチンは実は供給不足になる計算:早期のワクチン接種が必要です。

薬剤師目線:風疹ワクチンが一部定期接種化したが、国内での供給量は不足している!?

まだまだ流行の収まらない風疹。

対策の一つとして風疹の流行拡大を防ぐため、成人男性の一定層を対象にワクチンが定期接種化されることとなりました。

しかし自治体での実施は、早くても夏以降になる予定。

それだけでなく、国内の製薬会社による供給量は、目標達成に必要な本数を大きく下回っています。

風疹対策の対象者は300万人!

懸念されていた事態が起きてしまいました。

2019年に入り、先天性風疹症候群(CRS)の届け出が埼玉県にあったことが厚労省の報告で明らかになりました。

風疹ウイルスに感染した妊婦から胎児も感染し、障害が起きる先天性風疹症候群。

国内での確認は先の流行(2014年)以来のことです。

昨年は首都圏を中心として 2,917人の患者が報告されました。

この事態を受け厚労省は昨年末、今年1月から2022年3月までの約3年間、今年40-57歳になる成人男性の抗体検査とワクチン接種費用を原則無料とする方針を発表しました。

厳密な接種対象者は、1962年4月2日~1979年4月1日生まれの男性約1610万人です。

その世代の男性は、風疹の抗体保有率が約80%と低く、他の年代に比べて風疹に罹りやすいことが分かっているためです。 これを、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックまでに85%へ、2021年度末までに90%以上へと、引き上げを目指すというもの。

実際に接種が必要なのはそのうち2割程度と言われ、3 年間で最大300万人程度と予測されています。

不足する風疹ワクチン:対象者は300万人以上、供給は100万本以下

ワクチン接種がなかなか進まない問題点はもちろんありますが根本的な問題は、風疹ワクチンの供給量の不足です。

一般社団法人日本ワクチン産業協会が毎年発行しているワクチンの基礎2018年版冊子によれば、

2016 年の

  • 麻疹風疹混合 (MR)ワクチンの生産量は、271万4千本
  • 同じく風疹ワクチンは17万8千本

両方を合わせても、 供給量は年間約289万本です。

子供への風疹予防の定期接種は、1歳と就学前1年間の2回。

毎年、100万人弱の赤ちゃんが誕生すると考えると、2 期分で約200万本使われる計算になります。

そうすると、単純計算で大人に使えるのは残りの89万本です。

対象年齢の成人男性のうち抗体検査が陰性の人だけに接種するとしても、必要な本数は300万本以上。

これでは積極的なワクチン接種が始まっても供給不足になってしまいます。

風疹ワクチン不足を回避する方法:海外からの輸入について

現在、風疹含有ワクチンは国内3社(化血研、阪大、北里)が製造しています。

しかし今回の必要量は、現実的とは言えない数字であり、一気に倍近く生産量を増やせるような大きな工場を持つ会社は国内にはありません。

絶対量から言えば、いずれ供給不足に陥ることは必至です。

その供給不足を回避するための現実的な施策とは、足りない分を海外から輸入することです。

実際、国内での不足を補うために海外からワクチンの緊急輸入が行われたことが、2000年代に入 って1度だけあります。

そうそれは2009年に起きた新型インフルエンザの世界的大流行(パンデミック)の時です。

ところが年が明けた1月、承認審査を簡略化した薬事法上の特例承認が初適用された頃には、すでにパンデミックは急速に終息へと向かっていました。

そのため結局、輸入されたワクチンは大量に余ってしまい、破棄するしかなかったそうです。

こうした経験もあることから現時点では海外メーカーのワクチン輸入については、動きはもちろん話すら出ていません。

風疹緊急対策のインチキ

医療経済2019年1月1日号に掲載された論説風疹緊急対策のインチキでは、厚労省は、

「もし2020年7月までに500万人程度が抗体検査を受ければ、おそらく100万人程度が陰性となってワクチンを接種することになる。
そうなれば対象世代の抗体陽性率80%に5%程度上乗せして85%と集団免疫を獲得できる」

という考えのようです。

要するに、本来は接種を受けるべき300万人分が揃わなくても、2020年7月までに100万本確保できればなんとか集団免疫は維持できる、というのです。

これを見て安心できるかというとそうではありません。

この80%や85%という数字の出し方に、インチキがあるというのです。

かなり専門的な話になりますが、ざっくり言えば、陽性と判断する基準が甘いのです。

この80%は、感染拡大を防ぐには不十分な免疫の付き方の人(かかってしまうが重症化しない人)も含んでの数字。

もし陽性の基準を厳しくすれば、今回抗体検査と予防接種が無償化される世代の成人男性では、陽性率は70%台になるともいわれています。

まとめ

風疹の流行が長引くほど、悲しい思いをする患者さんは増えてしまいます。

今であればワクチンの備蓄はまだ十分にあります。

妊娠を希望している女性やそのパートナー

そして今年40~57歳になる成人男性は抗体価チェックやワクチン接種を早めに行うことが重要です。

2012~2013年の全国的流行では、結果的に45例の先天性風疹症候群が確認されました。

今回の流行でも、すでに障害を持って生まれた赤ちゃんが報告されています。

早めのワクチン接種がおすすめです。

インフルエンザの検査は信用できるのか:痛い、辛いインフルエンザ検査について。

新年明けて寒暖差の激しい日が続いています。

暖かくなったと思ったら、雪が降るほどさむくなったり。

昨年のインフルエンザシーズンは1999年の統計調査開始以来、最大のインフルエンザの流行を記録。

今年もそれを上回るほどの流行が話題になっています。

今回はインフルエンザの中でもその検査に注目して記載していきます。

薬剤師目線:インフルエンザの検査は信用できるのか。痛くて辛い検査の詳細を説明します。

インフルエンザ検査の重要性と信頼性

インフルエンザかどうか、検査してください

と、クリニックや病院を受診される方はたくさんいます。

すぐに結果がわかるものの、鼻の中に綿棒を入れ、鼻の粘液をとってインフルエンザかどうかを判定する迅速検査は、痛くて辛い検査です

カナダのモントリオール大学の報告によると、

感度(インフルエンザに罹患している人の中で、検査が陽性である人の割合)は62%、

特異度(インフルエンザに罹患していない人の中で、検査が陰性である人の割合)98%。

実は、陽性が出ればインフルエンザであると確定できるのですが、陰性であったとしても、インフルエンザではない、とは言い切れない検査なのです。

インフルエンザの検査、結論から言ってしまうと実は、

陽性が出ればインフルエンザは確定できるのですが、陰性であったとしてもインフルエンザではない、とは言い切れない検査なのです。

インフルエンザワクチンとインフルエンザ治療薬

そもそもインフルエンザの感染や重症化を予防するための予防接種をされた方はどれほどいるでしょうか。

また、今年のインフルエンザで話題になったのは新しい抗インフルエンザ薬である、

ゾフルーザ

実際にこの薬を処方された方はどれほどいらっしゃるのでしょうか。

従来よりも多くのゾフルーザが処方されているとの見方もあります。

ゾフルーザは、たった1 回服用するだけでよく、ウイルスの減少効果はタミフルよりも早いなどのメリットもありますが、最近ではゾフルーザ耐性株の存在が報告されたりもしています。

ゾフルーザについての詳細は以下の記事をご参照ください。

[kanren postid=”475,111″]

販売開始から1年も経たずに耐性が報告された背景としては、使いすぎもあるのかもしれません。

インフルエンザ

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスに感染しておこる感染症です。

咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状の他に、38 度以上の高熱や頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感などの全身の症状がみられます。

稀にではありますが、子供では急性脳症を、高齢者や免疫力の低下している人は肺炎を合併するなど、重症化することもあります。

風邪とは違う?インフルエンザ

そもそも風邪とは違うのですか?

という声も多く聞かれます。

俗に言う風邪はかぜ症候群と呼ばれ、ライノウイルスやコロナウイルス、RS ウイルスやアデノウイルスなどが主な原因ウイルスとなります。

インフルエンザも同じウイルスが原因ではありますが、風邪の場合、インフルエンザほど高熱にはならず、咽頭痛や鼻汁、咳といった上気道の炎症による症状が中心で、重症化することはあまりありません。

インフルエンザウイルス

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型があります。

そのうち、ヒトに感染し流行を引き起こすのはA 型とB 型です。

インフルエンザの流行には季節性があり、日本では、毎年12月から3 月にかけて流行します。

では、どうして毎年流行するのでしょうか?

インフルエンザが流行する理由

インフルエンザウイルスには、型だけでなく、株とよばれるさらに細かな分類があります。

インフルエンザウイルスの表面の突起物であるHAと呼ばれる構造の違いを分類したものです。

私たちのカラダの免疫システムは、このHAの構造を記憶しているのです。

しかしながら、HA の遺伝子は毎年のように変異を起こします。

そうすることでインフルエンザウイルスは、我々の免疫システムから逃れ、毎年流行し続けているのです。

こうしたことから、予防接種をすることがインフルエンザの一番の対策となります。

アメリカのFDAでも、

FDAが承認したインフルエンザを治療する抗インフルエンザ薬はいくつかあるが、年に1度の予防接種の代わりにあるものはない

と述べています。

インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンは、現在、A型とB型ともに2種類の株、つまり4 種類の株に対応できるように作られています。

その際、WHOを中心として、どの株が流行するかが予想されており、これまでに予想が外れてワクチンが効かなかったという事態はほとんど生じていません。

また、インフルエンザワクチンは、不活化ワクチンであり、病原体となるウイルスの感染能力を失わせたものが原材料となります。

そのため、ワクチンを接種して得られた免疫は時間とともに弱まります。

インフルエンザワクチンの場合、3カ月程度しか効果は持続しないため、流行のシーズン前に接種する必要があります。

インフルエンザワクチンの有効性

米国疾病管理センター(CDC)のインフルエンザワクチンの有効性の報告によると、

65歳未満の健常者ではインフルエンザの発症が70~90%減少

65歳以上の老人施設に入居されていない高齢者では肺炎やインフルエンザによる入院が30~70%減少

老人施設に入居されている方は、インフルエンザの発症が30~40%減少

肺炎やインフルエンザによる入院が50~60%減少

死亡リスクが80%減少したといいます。

また、1歳から15歳の子供にも、インフルエンザの上気道症状に対して77%から91%有効であったとのことでした。

インフルエンザになってしまったら

インフルエンザの予防には、日々の手洗いうがいと予防接種が欠かせませんが、インフルエンザに感染してしまった場合、どうすればいいのでしょうか。

こまめに水分を摂って、ウイルスの侵入経路である喉を潤し、よく休んで体力を回復させ、ウイルスを増殖させないようにし、軽いうちに自力で抑え込むことが大切です。

併せて大切なのが、人にうつさない行動をとる、つまり自宅で休養することです。

アメリカのCDC は、65歳未満のハイリスクでない成人は、検査も治療も必要としません、と言います。

インフルエンザが疑われるときは、息が苦しい、意識がおかしいといった状況でない限り、早期の受診を促すのではなく自宅療養でいい、ということです。

ほとんどの人は、抗インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、5 日から7 日ほどで軽快します

喉が痛い、熱が出た、節々が痛い、体がだるい……そういった症状が出たら、何かしらのウイル
スが体に侵入して闘っているということを意味します。

それが、インフルエンザウイルスなのか、風邪のウイルスなのか(場合によっては細菌感染もあります)、軽症の場合、区別はつきません。

まとめ

インフルエンザに限らず検査はほとんどの検査において、100%の信頼性があるものはありません。

インフルエンザの流行も下火になってきましたが、これからはインフルエンザB型が流行する時期です。

咳エチケットなどの予防も重要ですが、体調が悪いときは無理せずしっかり休むことも重要です。

最後に、インフルエンザについての興味深い知識を一つ。

ニューヨークにあるコロンビア大学が1975年から2008年にかけて40カ国78都市で調査した結果、

インフルエンザウイルスは、乾燥していて寒い気候を好むだけでなく、湿度が高くて雨が多い気候も好むこと

がわかっています。

実際に、一年を通して気温が高い東南アジアでは、雨季にインフルエンザが流行しているのです。

日本でも東南アジアと同様に、亜熱帯に属している沖縄では夏にもインフルエンザが流行しています。

温暖化が進めば、今後本州でも夏にインフルエンザが流行する、なんてこともあるかもしれません。

最後までお読みいただきありがとうございます。

薬剤師の視点で科学的に考える:チョコレートに健康や美容に効果はあるのか検証!

そろそろバレンタインデーが近づいてきましたね。

実は以下のようにもつぶやきましたが、私、チョコレートが大好きであります。

https://twitter.com/takutakkuuun/status/1093294625492590592

バレンタインデーはデパートなどにもたくさんのチョコが並ぶので、見ているだけでも楽しくなる季節。

今年はいくつもらうことができるでしょうか。

ちなみに下の神戸スイーツはホワイトデーでも愛用している美味しいスイーツ屋さん。

ホワイトデーを買うときにはあまり、出歩かなくてもネット注文ができるのは利点です。

もちろんバレンタインデーのものもあるようです。

バレンタインは色々なエピソードがありますよね!

自分も子供と奥さんからもらって嬉しかったエピソードがあります。

それも含めてバレンタインの嬉しいエピソードをむらさき姫さんがまとめてくれています。

くわしくはこちらを!

ここからが本題です。

たくさんの人が好きなチョコレート、バレンタインといえばチョコレートですが、チョコレートが健康または美容にいいというエビデンス(根拠)はあるのかについて、調べてみました。

バレンタインデーのチョコを選びつつ、もらった方は食べつつ読んでいただけるとうれしいです。

薬剤師目線:チョコレートに美容や健康にいいという効果はあるのか?

Googleを使って

  • チョコレート
  • 健康

というワードでインターネット上を検索すると、「普段何気なく食べているチョコレートの驚くべき効能・効果」、「チョコレートの効果が美と健康の味方に」などといった見出しの記事が表示されます。

カカオポリフェノールと聞くと、なんとなく健康に良い印象を持つ人も多いのではないでしょうか。

確かに、チョコレートに含まれているポリフェノール類には、抗酸化作用の増強、血小板機能および炎症反応の低下作用、血圧降下作用などが示されています。

とはいえ、こうした生理学的メカニズムと、臨床上のベネフィット(効果または利益)は同列に考えるべきではありません。

今回はバレンタインデーにちなんで、チョコレートの摂取と健康への影響について、幾つかの論文を整理して、その驚くべき効能・効果とやらを検証してみます。

チョコレートの摂取で心臓病や脳卒中は予防できるか

抗酸化作用や抗炎症作用、血圧降下作用等のメカニズムからいえば、チョコレートは動脈硬化の進展を抑止して、将来的な心血管疾患、脳血管疾患等の発症リスクを低下させる可能性を秘めています。

実は、チョコレートの摂取と心血管疾患や脳血管疾患との関連について検討した研究論文は多く、それらのメタ分析(多くの論文をまとめて解析したもの)も複数報告されています。

それによると、心不全に対する効果は曖昧であるにせよ、チョコレートの積極的な摂取で心血管疾患や脳卒中のリスクは統計学的にも有意に低下するという結果になっています。

また、カカオ含有量が豊富なダークチョコレートの摂取が健康状態に与える影響についての研究によれば、ダークチョコレート100gを毎日摂取することで、10年間で1万人当たり85例[95%信頼区間 60-105]の心血管イベントを減らすことが報告されています。

このような報告から考えられることは、適量の摂取であれば有害事象の懸念も少なく、チョコレートが心血管イベント予防に効果的であると言えなくもないという結論になります。

とはいえ、カカオ以外の成分である脂質や糖質も豊富なチョコレートを毎日摂取することは、糖尿病などの生活習慣病の発症につながらないかが疑問にのこります。

チョコレートで糖尿病は増えるのか

チョコレートは脂質や糖分を豊富に含んでいますが、理論的にはむしろ糖尿病の発症リスクを低下させる可能性が指摘されています。

チョコレートに含まれるカカオポリフェノールには抗酸化作用があり、これがインスリン抵抗性を改善することによって、糖尿病の発症リスクを低下させるというものです。

その根拠となるものが次の論文です。

この論文は、日本人(男性5897人、女性7643人)を対象とした研究(高山スタディ)であり、英語ですが全文が無料で読めるので興味があればご一読ください。

この研究では、チョコレートの摂取だけでなく、コーヒー、緑茶、ウーロン茶、紅茶などの飲料摂取と糖尿病の発症リスクの関連を検討しています。

チョコレートの摂取と糖尿病発症については、男性でハザード比0.65[95%信頼区間0.43-0.97]と有意に低下しましたが、女性ではハザード比 0.73[同 0.48-1.13]となっており、統計的有意差を認めず、減少傾向が示されたのみでした。

というとバレンタインをもらう男性は糖尿病発症も低下できていいのかも!!
と浮かれず、他の報告も見てみましょう。

2010年以降の報告

2010年以降、幾つかの研究報告がされています。

2015年に報告された米国の男性医師1万8235人を対象とした研究では、チョコレートの摂取で糖尿病の発症リスクがわずかに低下する可能性が示されています。

平均9.2年の追跡で、ハザード比は0.83[95%信頼区間 0.69-0.99]でした。

ただ、信頼区間上限は0.99であり、あまり明確な効果とは言えない印象もあります。

このハザード比や相対危険度は1をまたぐと差がないという解釈になるからです。

2017年の報告:チョコレートと糖尿病、心臓病との関連性について

次の論文は、2017年に報告されたチョコレートの摂取と心血管アウトカム、糖尿病発症との関連を検討した観察研究のメタ分析(解析対象14研究50万8705例)です。
研究の規模としては、かなり大きいデータを解析しています。

この研究では、その量反応関係まで検討しており、どの程度の摂取量で、どれほどのベネフィット(効果・利益)が見込めるのかを考える上で、貴重な情報を提供してくれています。

メタ分析の結果、チョコレートの摂取により冠動脈疾患(相対危険 0.90[95%信頼区間 0.82-0.97])、脳卒中(同 0.84[同 0.78-0.90])、糖尿病(同 0.82[同 0.70-0.96])に関して、いずれも有意なリスク低下が示されました。

ただ、信頼区間上限を見ると、いずれの結果も「1.0」に近く、交絡の影響を考慮すれば、やはり明確なリスク低下とは言えない印象もあります。

量反応関係に関する解析では、冠動脈疾患、脳卒中共に、週3回(1 回分は30g)以上チョコレートを摂取しても、リスクがさらに低下することは示されませんでした。

糖尿病については、週2回の摂取で最もリスクが低く(相対危険 0.75[95%信頼区間 0.63-0.89])、摂取量が増加するに従って、徐々にリスクが増加傾向を示し、週 6 回以上の摂取では統計学的に有意なリスク低下は示されなくなりました。

このことから、チョコレートの摂取量と糖尿病の発症リスクの関係について、適量の摂取が良い影響を与えるとも解釈でき、適量を摂取できる人はそもそも健康的であるとも解釈できます。

[aside type=”warning”]簡単にまとめると

チョコレートをほとんど摂取しない人は、もともと健康状態が優れておらず、チョコレートを摂取しないということはあり得る。

例えば、寝たきりであるとか、経管栄養や中心静脈栄養を受けている人たちは、そもそもチョコレートを積極的に摂取する機会はあまり多くないことが予測されます。

また、習慣的に過量にチョコレートを摂取している人では、食習習慣が乱れていて喫煙や飲酒の機会も多い、潜在的に心血管リスクが高い集団かもしれないという考え方です。

[/aside]

論文情報を生かす薬剤師の視点

観察研究で示された関連を解釈するに当たって注意が必要なのが、healthy user effectと呼ばれるバイアスである。

例えば、コレステロール値を下げるような予防的薬物療法を受けている患者では、そうでない患者に比べて、よりバランスの良い食事を摂取し、タバコを吸わないなど、薬物療法を受けていない人と比較して、健康的な行動を取る傾向にあると言われます。

実際、薬を開始した患者ではそうでない患者に比べてインフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン、骨密度検査など、予防に関連する医療サービスの利用頻度が高いという研究が報告されています。

チョコレートの摂取と糖尿病との関連で言えば、観察研究で示されたリスク低下について、Healthy user effect ならぬ healthy consumption effect の可能性は常に付きまとうと言えます。

そして、こうした意識の差の存在は心血管疾患や脳血管疾患についても言えてしまいます。

[aside]要するに
チョコレートの適量摂取が原因で患者の予後が改善しているのか、チョコレートを適量に摂取するような人がそもそも健常者で潜在的に予後が良好な人なのか、観察研究の結果のみでは判別が困難であるということです。 [/aside]

まとめ

チョコレートの摂取と健康への影響について複数の論文を検討しました。

しかし、最初に紹介したインターネット上の記事のような驚くべき効果のようなものは、明確には示されていないことが分かりました。

根拠が示されているのはむしろ、驚くほど曖昧もしくは微妙な効果であるといえます。

確かに、効果がないということではないのかもしれませんが、少なくとも驚くべきなどと言うようなものではありません。

とはいえ、これは何もチョコレートに限った話ではありません。

前にも記事で書いたグルテンフリーはじめ、サプリメントや健康食品の多くについても根拠をひも解いていくと、その効果はとても曖昧もしくは微妙であり、驚くべき効果が示されることはまれであることが分かります。

グルテンフリーについては詳細は以下の記事もお読みください。

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信じるか信じないかはご自身次第ですが、何よりも健康を気遣う心がけや習慣が一番なのかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

目がよくなる食品:視力をよくする栄養や食べ物について。

インターネットの普及に伴い、パソコンやスマートフォンの利用時間は増加傾向にあります。

もちろん便利な機械や機能ですので、使用することは当然ですがそこで気になってくるのが、視力や目の疲れ。

ブルーライトがよくないと、ブルーライトカットなどのメガネも発売されているほどです。

目が悪くなっても医療の進歩に伴い、レーシック眼内レンズ手術などを利用すれば視力を元通りにすることができます。

老年期にほぼすべての人がかかる白内障も、世界最先端の眼内レンズ手術をすれば、裸眼で生活できるまでに視力が回復するといわれています。

正しい知識を吸収すれば、人生100年時代を裸眼で生きることも可能な時代になっているとか。

しかし、日本の眼科治療は海外に比べて遅れていて、間違った常識や誤った治療法がまかり通っているとも言われています。

五感の中でも大事な視覚。

我々は、あまりにも大切な目について無知なのかもしれません。

今回は世界最高医が教える目がよくなる32の方法の内容をまとめました。

薬剤師目線:目がよくなる食事、視力をよくする栄養や食べ物について。

ルテイン、ゼアキサンチンが多く含まれる緑黄色野菜

網膜にある色素(カロテノイド)の一種であるルテインとゼアキサンチンは、加齢黄斑変性に重要な予防効果がある可能性があるといわれています。

この二つの物質は、生体内では合成されず野菜や果物もしくはサプリメントなどから摂取しなくてはなりません。

ルテイン、ゼアキサンチンを多く含む緑黄色野菜網膜の黄斑部は、ものを見るのに最も重要な場所です。

視機能の90%ほどはこの黄斑部での機能です。

この黄斑部の中央部にはゼアキサンチンが多く、黄斑部の周辺にはルテインが多く存在します。

これらのルテインやゼアキサンチンなどの黄色の色素であるカロテノイドは、目に障害性の強いブルーライトを吸収して、網膜黄斑部を守ります。

さらに、カロテノイドは抗酸化作用が強くて、網膜黄斑部がダメージを受けた時に出てくる活性酸素を消去することで、黄斑部の障害を抑制できる可能性があります。

[aside type=”boader”]活性酸素
体内に入った酸素の一部が変化して活性化したもので、細胞への障害性があります。黄斑部はこの活性酸素の障害を受けやすく、これが加齢黄斑変性などの網膜障害を引き起こします。 [/aside]

このようにルテインとゼアキサンチンは、ブルーライトの吸収と黄斑部にある活性酸素の消去剤として働いて、黄斑部を障害から守る作用が期待されます。

パソコンやスマホの画面から出る LED 由来の短波長の高エネルギーであるブルーライトは、網膜を障害することが報告されています。

400ナノメーター近辺の短波長であるブルーライトは可視光の中で最も短波長・高エネルギーであるため、目の表面だけでなく、目の奥にまでダメージが及びます。

テレビ、パソコン、スマートフォンなどに使用されるLEDモニターから大量に放出されており、網膜に有害であることが報告されています。

ルテインやゼアキサンチンを多く含む食品

ルテインを多く含む食物は、パセリ、ケール、ほうれん草、ブロッコリーなどです。

ほうれん草には100g中5mg程度のルテインが含まれています。

ゼアキサンチンを多く含む食品は、クコの実や生のパプリカ、生のほうれん草などです。

単純な言い方をすると、ルテインやゼアキサンチンは緑黄色野菜に多く含まれている、天然の黄色い色素ですので、多くの緑黄色野菜を含むサラダをたっぷり食べましょうということです。

食物やサプリメントで摂取されたルテイン、ゼアキサンチンは、小腸から吸収され、血液を通って黄斑部に集まってきます。

これらカロテノイドは黄色い色素の役割を果たし、補色であるブルーの短波長を吸収遮断します。

ブルーライトの遮光により、黄斑部の視細胞である錐体細胞などを守る可能性があります。

オメガ3脂肪酸:DHAやEPAの役割

脂質が、網膜にある錐体細胞や桿体細胞を守っていることが分かっています。

とくのに大切なのが、抗酸化作用もあるDHAEPAといった、魚に含まれる脂質で、一般的にはオメガ3脂肪酸とも呼ばれている油です。

オメガ 3 脂肪酸は亜麻仁油、エゴマ油、クルミなどの植物系と、サンマ、サバ、アジなどのお魚系があります。

ただし、オメガ3脂肪酸は熱するとすぐ酸化してしまうので、炒め油などには向いていません。

そのまま飲んでも良いですが、サラダなどにかけるドレッシングとして摂取するのがおすすめです。

焼き魚の場合は、表面は酸化しても内部の脂肪酸は酸化しないので大丈夫です。

煮魚ならほとんど酸化しません。

亜麻仁油やエゴマ油を選ぶ際には、低温圧搾(コールドプレス)で作られているかどうかをチェックしてください。

高温圧縮の方が抽出には効率的ですが、オメガ3脂肪酸は高熱に弱いのです。

一度開栓したら効果を減らさないように冷蔵庫で保管することが大切です。

亜麻仁油やエゴマ油の1日の量は、大さじ1杯以上くらいが目安です。

緑黄色野菜と共に、油をドレッシングとして食べることがおススメです。

一方で、魚でこれだけのオメガ3脂肪酸を摂るのは難しいのが現状です。

これについては良い方法としてなかなか魚から摂りにくい人のために、サプリメントなどで販売されています。

しかし、サプリメントのかたちで摂取することの副作用は良く分かっておりません。

こう考えると、緑黄色野菜をたくさん食べて、これらの抗酸化作用のある栄養分を摂るほうが吸収率もよいし、より安全であると思います。

アスタキサンチンを多く含むサケやイクラ

アスタキサンチンというサケの切り身やイクラやエビなどに多く含まれている赤色の色素があります。

アスタキサンチンは動植物界に広く分布していて、黄橙、赤、赤紫などの色素のカロテノイドです。

この色素は活性酸素の害を防ぐ抗酸化作用が強くて、悪玉酸素エネルギーを熱に変えているのです。

アスタキサンチンはビタミンEなどに比べても1000倍近い抗酸化作用があります。

アスタキサンチンは同時に筋肉の弛緩作用もあり、目の調節に関与する毛様体筋の疲労を防ぎ、遠近の識別に使う深視力(遠近を識別する視力)検査でも視機能向上が認められています。

簡単に言うと、目の疲労回復に効果的であるということです。

さらに、近年増加している糖尿病にも効果があるとの報告があります。

糖尿病の 3 大合併症は、

  • 糖尿病性網膜症
  • 糖尿病性腎症
  • 糖尿病性下肢壊疽

です。

糖尿病に関しては以下の内容も合わせてお読みください。

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糖尿病の合併症のうち眼科でよく診られるのが網膜症であり、腎症です。

網膜症は失明につながる大きな病気ですし、腎症も網膜に浮腫をきたすなど視機能に関連する大きな問題です。

この両者に効果が認められたとの報告もあるのです。

アスタキサンチンを多く含む食料には以下のものがあります。

100g あたり、

  • 桜エビ 7.0mg
  • オキアミ 3.0mg~4.0mg
  • 紅鮭 2.5mg~3.7mg
  • イクラ 2.5mg~3.0mg
  • 金目鯛 2.0mg~3.0mg
  • ギン鮭2.3mg
  • 毛ガニ 1.1mg
  • 甘エビ 0.8mg~1.0mg
  • キングサーモン 0.9mg
  • 白鮭 0.3mg~0.8mg
  • すじこ 0.8mg

サケのアスタキサンチン

サケのアスタキサンチンついて注目します。

サケの色素のもとはサケが食べる藻から得られているのです。

サケが食べた藻の中の赤色色素が体内に蓄積したのです。

この藻に大切なのが、抗酸化作用もあるDHAやEPAといった、魚に含まれる脂質でこの藻はヘマトコッカスという藻です。

サケは成魚となって海から川に戻り、川を遡上します。

遡上の川は浅瀬があり、強烈な太陽光で紫外線などにさらされます。

体を岩にこすりつけ、皮膚も体もボロボロになります。

この時に体には細胞修復のために悪玉酸素である活性酸素が大量に発生します。

この活性酸素を中和消去する抗酸化作用のあるものとしてアスタキサンチンが活躍するといわれています。

まとめ

目にいい栄養素や食べ物について記載しました。

何かと目に負担のかかる日常生活。

食べ物から目の健康を考えてみてもいいのかもしれません。

今回参考にした書籍はこちら。

最後に目によい食品成分のまとめです。

  1. ルテイン:パセリ、ケール、ほうれん草、ブロッコリー
  2. クコの実、パプリカ、ほうれん草
  3. オメガ3脂肪酸:亜麻仁油、クルミ、サンマ、サバ
  4. アスタキサンチン:サケ、イクラ、エビ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

かぜやインフル予防に補中益氣湯:受験期の子供にもおすすめの漢方薬:ストレスにも負けない

最近漢方を改めて勉強してみてとても興味深い薬だと、個人的に思いました。

以前紹介した内容は少し難しかったかもしれません。

しかし、きちんとした専門医や認定薬剤師に診てもらうことで改善することもあります。

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前回は糖尿病でしたが、今回や身近な風邪やインフルエンザについて。

今シーズンもインフルエンザが猛威をふるっています。

昨年よりも流行状況が上回っているとの結果もあり、注意が必要です。

風邪には葛根湯のイメージが強いとは思いますが、意外と知られていない漢方の一つ。

薬剤師目線:かぜを引かないからだ作り、ストレスに負けないこころ作りにおススメの補中益氣湯です。

氣の薬である補中益気湯

補中益氣湯は、13 世紀の中国で李東垣先生により考案されました。

戦乱の世にあった中国で、かぜを引いた兵隊を3日で最前線に戻すための薬を作るように皇帝から命じられた李先生が、命がけで生み出した薬です。

人参、黄耆、朮、陳皮、生姜などが含まれています。

加齢により氣を使い果たしたとき、私たちはこの世を去ることになります。

氣の異常には3つのパターンがあるといわれています。

  1. 氣虚=氣を体内に取り込めなかったり、使い過ぎたりすることで、氣が足りなくなる
  2. 氣うつ=ストレスにより氣の流れが詰まってしまう
  3. 氣逆=ストレスによりブチ切れてしまう

これが3 つのパターンです。

補中益氣湯の効能

  1. 氣虚に対する補氣作用=エネルギー補給
  2. 氣うつに対する理氣作用=ストレス発散・免疫力アップ

の2つとなります。

氣虚に対する補氣作用=エネルギー補給

代表的な構成生薬

・ 人参:朝鮮人参のことで、昔から不老長寿の薬として有名な生薬です。

・ 黄耆:からだの傷を修復し、エネルギー漏れを防ぎます。

人参でエネルギーを補いつつ、黄耆でからだの傷を修復し、エネルギー漏れを防ぎます。人参と 黄耆を合わせて参耆剤と呼びます。参耆剤はスーパー補剤として、癌患者や多忙な研修医など、からだにもこころにも無理がたたっている人をサポートします。 なお、参耆剤の仲間には、十全大補湯、人参養栄湯、加味帰脾湯などがあり、癌患者の緩和ケア 領域で処方されています。

氣うつに対する理氣作用=ストレス発散・免疫力アップ

代表的な構成生薬

・ 柴胡:ストレスを発散し、免疫力をアップします。

・ 升麻:垂れているからだとこころをシャキッと引き締めます。

柴胡でイライラを発散し、升麻でからだとこころをシャキッと引き締め、免疫力をアップさせる ことで、インフルエンザを予防します。 帝京大学の新見正則先生は、2009年の新型インフルエンザ(A/H1N1pdm2009)流行時に、補中益氣湯による予防効果について検討しています。

内服群(n=179)と非内服群(n=179)に分けて 8 週間観察したところ、インフルエンザの罹患者数は内服群で1人、非内服群では7人でした。

補中益氣湯で 新型インフルエンザを予防できる可能性があると報告しています。

補中益氣湯は King of Drugs:医王湯

補中益氣湯の適応は、ツムラ補中益氣湯エキス顆粒の添付文書によると、

[aside type=”boader”]
消化機能が衰え、四肢倦怠感著しい虚弱体質者の次の諸症:夏やせ、病後の体力増強、食欲不振、 多汗症、結核症、感冒、胃下垂、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随[/aside]

色々な病名が並んでいますので、最初は混乱してしまいますが、先ほど述べた人参、黄耆、柴胡、升麻の効能を思い出すと、それぞれの病名を理解しやすくなります。

具体的には、

  • 人参:夏やせ、病後の体力増強、食欲不振
  • 黄耆:多汗症
  • 柴胡:結核症、感冒
  • 升麻:胃下垂、痔、脱肛、子宮下垂、陰萎、半身不随

と分類できます。

1 つの漢方薬で様々な病氣を治すことができることを異病同治と言います。

補中益氣湯は異病同治が可能な万能薬であり、King of Drugsを意味する医王湯と呼ばれています。

まとめ

今シーズンの風邪、インフルエンザは補中益氣湯で乗り切れるかもしれません。

からだとこころが疲れたと感じたら、補中益氣湯を試してみてください。

残念ではありませんが、私は今のところ風邪をひいていないため試すことができません。

実際飲んでみて、補中益氣湯が自分に合っているかどうかの判断基準は、

  • 飲んでみておいしいと感じたら、体力が落ちていて補中益氣湯が必要な状態
  • 飲んでみてまずいと感じたら、体力が十分あって補中益氣湯が不要な状態

です。

試すときはもちろん、漢方としての正しい飲み方をしてください。

飲み方などの注意点は下記の記事もご参照ください。

[kanren postid=”133″]

おいしいと感じた方はインフルエンザの流行が終了するまで、あるいは元氣になっておいしいと感じなくなるまで、補中益氣湯を飲み続けましょう。

なお、補中益気湯は小児、特に受験が迫っているようなお子さんにもお勧めです。

風邪やインフ ルエンザに加え、受験のストレスにも負けない体と心を作るのに役立ちます。

補中益気湯を飲んでみておいしいと感じたお子さんは、そのまま飲み続けると、受験シーズンを乗り切れるかもしれません。