糖尿病への対策としての漢方薬:血糖値とインスリンの関係:EDなどの合併症について

現代人の病気の中で問題となっている生活習慣病。

生活習慣病には、主に以下のような病気があります。

  • 糖尿病
  • 高血圧
  • がん
  • 脳卒中
  • 心臓病

などです。

今回は、この生活習慣病の中でも糖尿病に着目してその考え方と漢方薬について記載していきたいと思います。

薬剤師目線:糖尿病に効果が期待できる漢方薬処方

糖尿病は糖質の代謝異常により、血液中の糖分量、つまり血糖値が慢性的に高くなる病気です。

糖尿病患者とその予備群は、2016年にはそれぞれ推計1000万人を超えており、患者数は年々増え続けています。

血糖上昇や糖尿病の発症には、膵臓で産生され血糖値を下げるホルモンである、インスリンがうまく働かなくなったことが関係しています。

糖尿病には幾つかのタイプがあり、インスリンがほとんど出なくなる1型糖尿病2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)に大きく分けられます。

患者数の多くを占めているのが2型糖尿病で、インスリンの分泌量が十分でないタイプ(インスリン分泌
不全
)と、インスリンは分泌されているが効きにくいタイプ(インスリン抵抗性)とがあります。

2型糖尿病

2 型糖尿病の場合、血糖値は何年もかけてゆっくり上昇し、多くの場合40歳以降に糖尿病を発症します。

初めのうちは自覚症状がまったくないことが多いのですが、次第に

  1. 疲れやすい
  2. だるい
  3. 肌がかさかさ乾燥して痒い
  4. 手足の感覚が鈍くなる
  5. 感染症によくかかる
  6. 切り傷など皮膚の傷が治りにくい
  7. 目がかすむ
  8. 性機能の減退(ED)

などの症状がみられるようになります。

高血糖の状態が持続すると、喉や口が渇いて頻繁に水を多く飲む、尿の回数が増える、体重が減少するなど糖尿病特有の症状が表れます。

さらに、高血糖状態が長期にわたって持続することにより、血管壁の変性や血管腔の狭窄が起こります。

つまり血管の壁が硬くなり、血管の中が狭くなります(動脈硬化)。

動脈硬化になると、心疾患や脳卒中になるリスクが高まります。

そのような深刻な経過をたどるにもかかわらず、血糖値が高くても自覚症状がないからと放置している人も多いのが現状です。

しかし糖尿病は上記のようにじわじわと血管壁を硬くし、血液の通り道を狭くしていきますので、放っておくと当然様々な合併症を引き起こすことになります。

糖尿病の合併症

主な合併症には、動脈硬化による心筋梗塞や脳梗塞だけでなく、腎障害(糖尿病腎症)、網膜症(糖尿病網膜症)などがあります。

神経障害を伴うことが多く(糖尿病神経障害)、足のしびれや痛みや感覚異常、立ちくらみや寝汗、動作の緩慢なども引き起こされます。

こむら返りも起こしやすくなります。

糖尿病の治療と漢方薬の位置づけ

西洋医学的には、食事制限(食事療法)、適度な運動の励行(運動療法)を基本とし、必要に応じて経口血糖降下薬やインスリン注射薬が処方されます。

糖尿病と血糖値の関係については、以下の記事もご参照ください。

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漢方では、糖尿病体質そのものを改善することにより、糖尿病の治療に当たります。

具体的には、漢方薬を用いて体内の水分バランスやホルモンバランスを調整し、内臓の機能を調え血液の流れをさらさらにし、血管壁の柔軟性を保持し自然治癒力を高めていきます。

糖尿病体質のベースにあるのは陰虚です。

少し難しい話になりますが、陰虚の陰は陰液を指します。

陰液とは人体の基本的な構成成分のうちの血・津液・精のことです。

つまり陰虚証とは、陰液が不足している体質や病状のことで、血や津液による滋養作用が低下している状態を意味します。

陰液の不足による手足のしびれ、やせる、などの症状に加え、陰液の不足により相対的に熱が優勢となるので、熱感、手足のほてり、口渇、寝汗などの熱証がみられます。

糖尿病はまさにこの状態を来しており、陰虚の治療が糖尿病の漢方治療のベースになります。

糖尿病の証には、以下のようなものがあります。

上半身での症状

口や舌が渇いて大量の水を飲むなどの上半身(上焦)で症状がみられるなら、「肺陰虚」証です。

肺は五臓の1つで、呼吸をつかさどる臓腑です(漢方の世界では気をつかさどるといいます)。

また皮毛をつかさどる機能もあり、皮膚とも深い関係にあります。

この肺の陰液(肺陰)が不足している体質が、この証です。

血糖値が上昇して肺の陰液を消耗すると、この証になります。

そのため漢方薬で肺の陰液を補い、糖尿病を治療していきます。

人体の中心部の症状

たくさん食べるのにお腹が空く、やせるなど人体の中心部(中焦)で主に症状がみられるなら、脾気陰両虚証です。

脾は五臓の1つで、六腑の1つである胃との共同作業により飲食物(水穀)を消化して栄養物質(水穀の精微)を吸収し、気・血・津液・精の生成源とし(転化)、さらにその水穀の精微を全身に輸送(運輸)します(運化をつかさどるといいます)。

飲食物の消化吸収や代謝と関係が深い臓腑です。

血を脈管外に出さずに循行させる働きもあります(統血するといいます)。

脾が運化した栄養物質は四肢や筋肉を養う基礎となります(肌肉をつかさどるといいます)。

この脾の機能(脾気)が低下した証が、脾気虚証です。

脾気虚がさらに進み、脾の血などの物質面(脾陰)も不足した証が、脾気陰両虚です。

糖代謝の異常と関係があると考えられています。

脾気と陰液を補う漢方薬で、糖尿病を治していきます。

下半身での症状

頻尿、腰や膝がだるいなど下半身(下焦)で症状がみられるなら、腎陰虚証です。

腎は五臓の1つで、生きるために必要なエネルギーや栄養の基本物質である精を貯蔵し、人の成長・発育・生殖、並びに水液や骨をつかさどる臓腑です。

ホルモン内分泌系や、生殖器泌尿器系、免疫機能と深い関係にあります。

この腎の陰液(腎陰)が不足している体質が、腎陰虚です。

加齢や過労、不規則な生活、大病や慢性的な体調不良、性生活の不摂生などによって腎陰が減ると、この証になります。

のぼせ、寝汗などの熱証がみられます。

この証の場合は、腎陰を補う漢方薬で糖尿病の治療をします。

血流障害が生じているようなら、血瘀証の治療もします。

血瘀は、血の流れが鬱滞しやすい体質です。

血管の微小循環障害や、流動性の異常、精神的ストレス、寒冷などの生活環境、寒冷刺激、不適切な食生活、運動不足、水液の停滞、生理機能の低下などにより、この証になります。

疾患や体調不良が慢性化、長期化してこの証になることもあります。

血行を促進する漢方薬で血流を改善し、糖尿病の治療や、合併症の予防をします。

糖尿病患者にもっともみられやすい症状

一般に糖尿病患者に共通してみられやすいのは、陰陽両虚証です。

人体の基本的な構成成分である気・血・津液・精を陰陽に分けると、気が陽であり残りの血・津液・精が陰となります。

気・血・津液・精は互いに密接な関係にあり、機能的な面が主体の気は陽気、物質的な面が主体の血・津液・精は陰液と呼ばれます。

陽気と陰液を合わせたものが人体そのものである正気であり、病邪と対置されます。

正気が安定していれば病邪が人体を侵すことはなく、人は健康を維持できます。

この陽気と陰液の両方が不足している体質や病状が、陰陽両虚証です。

糖尿病のベースの陰虚に気虚と冷えが重なり、この証になります。

漢方薬で陽気と陰液の両方を補い、糖尿病の治療に当たります。

まとめ

糖尿病とその症状別における漢方薬の考え方について記載しました。

正直難しいです。ここまで読んでいただいた方には感謝しかありません。

しかし、これだけしっかりした目線で考えると効果が出てくるのが漢方薬の利点でもあります。

ちなみに、漢方に関して重要な事柄を下記の記事でも書いてありますので、読んでみてください。

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糖尿病に対する漢方薬の処方の例として、

ひどい口の乾きや寝汗、頻尿などを認める場合は、肺陰虚であることが多く、この場合は滋陰降火湯という漢方を使用する場合もあります。

すべての証についてどの漢方薬を使用するかは割愛しますが、糖尿病の治療法の一つとして漢方薬の使用を考慮してもいいのかもしれません。

もちろんちゃんとした漢方専門医の指導の下です。

ちなみに、薬剤師の漢方スペシャリストとして

漢方薬・生薬認定薬剤師という資格もあります。

近くに専門医や認定薬剤師がいたら相談してみてもいいかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

赤ちゃんの感染対策:哺乳瓶の消毒について。

産まれたての赤ちゃんは免疫力が弱いため、いろいろと気遣いが必要ですよね。

感染対策の一つとして、まずは赤ちゃんの試練ともいえるワクチン接種があります。

ワクチンの詳細は以下の記事をご参照ください。

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そしてワクチンの次に重要なのが哺乳瓶の消毒についてです。

完全母乳の赤ちゃんも、ミルク併用の赤ちゃんも使用する機会のある哺乳瓶。

完全母乳であれば、機会は少ないかもしれませんが、お母さんから搾乳したものを哺乳瓶であげたりもしますよね。

哺乳瓶を使う場合には、赤ちゃんに合った哺乳瓶を使用する必要があります。

最近では哺乳瓶もいろいろ改良されてきていますので、まずは赤ちゃんに合った哺乳瓶の選択を。


ではみなさん。

薬剤師目線:哺乳瓶の消毒には熱湯? レンジ加熱?

どちらかが必ず必要!!

と思っていませんか。

いろいろな育児書がありますが、持っている育児書では、生後 1 カ月までは消毒するようにと記載されています。

ネットをで調べてみると少なくとも 3~4 カ月までとか、離乳食がはじまるまでと書いてあったりします。

情報がいろいろあって、心配だから長めに消毒をと考える母親も少なくはないと思います。

哺乳瓶を清潔に

確かに哺乳瓶を清潔に保つことは必要です。

しかし、赤ちゃんといえばしょっちゅう指をしゃぶっているもので、当然指は雑菌だらけなのではないか、

という疑問もあります。

消毒までする必要は本当にあるのでしょうか?

消毒する必要があるとすれば、いつまでやれば良いのでしょうか?

哺乳瓶の消毒は、細菌から赤ちゃんを守るために行うのですが、実はミルクと関連する病気の原因菌はほとんど決まっています。

  • サカザキ菌
  • サルモネラ菌

です。

液体ミルクは無菌なのですが、残念ながら日本ではまだ販売されていません。

しかし粉ミルクは、現在の製造技術では無菌にすることはできません

サカザキ菌

特にサカザキ菌は、土壌や水など環境中に多く存在する菌で、粉ミルクからもよく検出される上、髄膜炎などの重症感染症を起こすことがあります。

1 歳未満の赤ちゃんは感染のリスクが高く、特に危険なのは

  1. 2カ月未満の赤ちゃん
  2. 早産や低出生体重児の赤ちゃん
  3. そして何らかの理由で免疫抑制状態にある赤ちゃん

です。

これまでにも多くのアウトブレイク(集団的に感染が普段よりも流行すること)が報告されており、2004 年にはフランスで2人の赤ちゃんが亡くなっています。

これを受けて、世界保健機関(WHO)は2007年に、粉ミルクの調乳を70度以上で行うようにという新しいガイドライン(指針)を発表しました。

サカザキ菌は、71~72度に加熱すれば、およそ0.7秒ごとに10分の1の数に減らすことができます。

これが、調乳温度が変更された根拠です。

実は哺乳瓶や調乳に使う道具の消毒も、このサカザキ菌の感染を防ぐのが主な目的です。

というのも、粉ミルク自体ではなく、ミルクを溶かすために混ぜたスプーンや哺乳瓶を洗っていたブラシ
から、ミルクを通じてサカザキ菌に感染したと考えられるケースが過去にあったからです。

サカザキ菌の一部の株は、特にシリコンやプラスチックの表面にくっついて繁殖し、バイオフィルムとい
う膜を形成します。

一般に、バイオフィルムが形成されると物理的に除去するのは大変で、薬剤への耐性も上昇すると言われています。

できるだけバイオフィルムを作らせないことが大切ですし、バイオフィルムができてしまったら十分に消毒することが必要でしょう。

このような観点から、WHOのガイドラインでは、哺乳瓶は 1 歳になるまで毎回消毒することになっており、イギリス国民保健サービスのHPでもWHOのGLに沿った内容が推奨されています。

アメリカの哺乳瓶の消毒

一方で、アメリカでは消毒はしないのが一般的です。

ミルクを作る際に勧められているのは、

  1. ミルクを作る前に手を洗うこと
  2. 哺乳瓶や哺乳瓶の乳首をよく洗うこと
  3. 室温の場所に2時間以上置いてあったミルクは捨てること

の 3 つです。

アメリカ小児科学会のHPでも、

食器洗い機を使うかお湯と洗剤で洗えば、消毒する必要はない

とはっきり記載されています。

では日本でも本当に消毒しなくても大丈夫なのでしょうか。

日本で行われた哺乳瓶の消毒の必要性を検討した研究

2003年に大分県立看護科学大学から発表された論文では、哺乳瓶の消毒の必要性について検討する実験を行っています。

哺乳瓶にわざと大腸菌などの細菌を付着させ、洗浄や消毒をした後に哺乳瓶に10mlの生理食塩水を入れて回収し、どのくらい菌が残っているかを比較しました。

洗浄・消毒の方法は、

  • 98 度/90 度/60 度のお湯を50ml哺乳瓶に入れて5分放置する方法
  • 60mlの水を入れて 5 分/3 分/1 分電子レンジで加熱する方法
  • 食器洗い洗剤とブラシで洗う方法
  • 水道水とブラシで洗う方法

の 8 パターンです。

その結果、60度のお湯や電子レンジ1分、ブラシを使って水道水で洗っただけの哺乳瓶には細菌が残っていて、ブラシ・水道水の哺乳瓶からは1ml中10~100個の細菌が検出されました。

しかし家庭用の食器洗い洗剤で洗浄した哺乳瓶からは、90度以上の熱湯や電子レンジで3分以上消毒した哺乳瓶と同様に、菌は検出されなかったのです。

菌がついた直後に洗浄しているので、バイオフィルムが形成されていないというのもポイントでしょう。

1 回だけの実験結果ではありますが、哺乳瓶を使った後にすぐ洗浄すれば、洗剤とブラシだけで清潔に保つことができることがわかります。

また、アメリカのガイドラインで消毒がないのは、食器洗い乾燥機が普及していることが一つの理由かもしれません。

食器洗い乾燥機に入れれば、自動的に60~80度程度のお湯にさらされることになるので、サカザキ菌を減らす効果もある程度期待できそうです。

乾燥機はこの利点を使って、病院などの医療機関でも滅菌の意味で使われている部分もあります。

哺乳瓶は必ず消毒しないといけない?

もちろん消毒するのがベストだとは思いますが、赤ちゃんはそもそも無菌ではないので、菌をゼロにするのを目指す意味は無いでしょう。

どんな方法にしろ、菌が繁殖しないよう、道具を清潔に保つのが一番大切なことです。

哺乳瓶は使ったらすぐに洗浄し、ブラシと洗剤を使って、ミルクの汚れをきちんと洗い落とすようにしてください。

すぐに洗浄するのが難しい場合も、さっと水でゆすいでおくのがおすすめです。

そして赤ちゃんを感染から守るためには、手を洗うことも消毒と同じくらい、またはそれ以上に大切です。

もっとも重要なことは手を洗うこと

哺乳瓶を組み立てたり、調乳したりする前は必ず手を洗いましょう。

夜中など、手を洗うのが大変なときは、手指消毒スプレーで手を消毒するのでも良いと思います。

日本の粉ミルクの調査では、サカザキ菌が検出されたのは2~4%の検体で、その量も333グラム中1個と決して多いわけではありません。

哺乳瓶の消毒が常識の国もあれば、そうでない国もあります。

消毒ばかりが重視されがちですが、調乳前の手洗いや、ミルクを作ってからはなるべく放置しないなど、消毒以外の方法も合わせて、赤ちゃんを感染から守ってあげることが重要です。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

予防に大切なワクチン:新たなワクチンの開発~一つのタンパクで二つのワクチン効果~

薬剤師目線:病気の予防の一つとして重要なワクチン

現在でも様々なワクチンが保険適応となり、定期接種や任意接種の違いはあるものの病気の予防に多大なる貢献をしています。

ワクチンには生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドなどの種類があり、接種間隔などが違います。

ワクチンの違いについては、下の記事で記載していますのでぜひご参照ください。

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そして、基礎研究者、臨床医、製造・開発研究者、疫学研究者の多様な分野の研究者が集まり、ワクチンの開発や臨床への対応を目的として活動を行っている日本ワクチン学会

毎年行われている学術集会にて、新しいワクチンについてのシンポジウムがありました。

今までのワクチンは基本1対1のワクチン効果があります。
要するにインフルエンザワクチンはインフルエンザに効果が、麻疹風疹ワクチンはそれぞれ麻疹と風疹にワクチン効果があります。

細かくインフルエンザの型などの違いはあるものの、病原体1つに対して1つのワクチンです。

今回研究の成果が報告されたワクチンは、1つのワクチンで2つのワクチン効果があるというもの。

ウェルシュ菌毒素ベロ毒素の両方に効果のあるワクチンについてです。

2 つのワクチン効果発揮する蛋白作製

第22回日本ワクチン学会学術集会(会長・森康子神戸大学大学院医学研究科附属感染症センター臨床ウイルス分野教授)が2018年12月8、9日、神戸市内で開かれ8日にシンポジウム 1「新規ワクチン」がありました。

そこで発表された内容は、一つのワクチンがウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両受容体に結合するというもの。

病原・共生微生物のユニークな機能を用いた新規ワクチン・アジュバント開発の新展開

での発表です。

ウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両方の受容体に結合する蛋白を作製。

有効性が確認されたと報告されました。

ひとつの蛋白でふたつのワクチン効果が得られるとまとめています。

製造の観点からも有利、実用化に向け研究

研究のきっかけは少し難しい話になりますが、

腸管に多数存在するIgA抗体産生細胞の中に、高いIgA抗体産生能力を持つCD11b陽性IgA細胞を発見したことです。

難しい話はさておき、腸管出血性大腸菌 O157 やウェルシュ菌による細菌性食中毒は年間 2000~3000 人が発症するといわれています。

治療法やワクチンは現時点では存在しません。

ウェルシュ菌は、食品を介して経口感染し腸管内で増殖、エンテロトキシン(CPE)という毒素を産生することで食中毒を引き起こします。

研究では、毒性部位を除いたベロ毒素の受容体結合部位であるVT2BとC-CPEを結合させた蛋白を作製。

このVT2B-C-CPEに毒性はなく、ウェルシュ菌毒素とベロ毒素の両方の受容体に結合し、ウェルシュ菌毒素に対する中和抗体が誘導されたとのこと。

さらに、ウェルシュ菌毒素は高カリウム血症を起こしますが、VT2B-C-CPEを投与したマウスはウェルシュ菌毒素を注射しても、中和抗体があるので正常なままだったと結論づけています。

ベロ毒素の代わりにコレラ毒素抗原と融合したCTB-C-CPEも作製し、マウスに投与後、それぞれの毒素を注射しても下痢の症状を抑えることができたと説明。

これまでの多価ワクチンは別々のものを作って混合するタイプがほとんどでした。

四種混合や三種混合ワクチンと呼ばれるものがそれです。

今回の方法では、ひとつの蛋白でふたつのワクチン効果が得られます。

製造の観点からも優れており、今後は実用化に向けた研究が行われるようです。

まとめ

今回は現在行われているワクチン研究の話について、記載しました。

普段あまり、研究が身近でない人にもワクチンや薬が世の中に出るまでの流れを少しでも伝えられたらと思います。

今回の記事が何年後かに、ついにあの記事のワクチンが出たのか!!

と言われるのもそう遠くないかもしれません。

腸管出血性大腸菌もウェルシュ菌も、悩まされる病原体の一つです。

予防としてのワクチンが開発されれば、苦しむ患者さんも少なくなるかもしれません。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

HPVワクチンの今後の課題:9価ワクチン導入と子宮頸がん早期発見が必要

ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、副反応の問題が生じ厚生労働省も接種の積極的勧奨を差し控えました。

子宮頸がんワクチンについては、下の記事でも記載していますのでご参照ください。

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元々、HPVワクチンは中学1年生から高校1年生の女子に定期接種となっています。

積極的勧奨が再開されたとしてお現状の日本では課題が多くあります。

今回はm3.comで紹介された研究から、HPVワクチンの今後について書いていきます。

薬剤師目線:HPVワクチンの積極的勧奨再開後の課題と対応策

大阪大学の研究の結論としては、

積極的勧奨が再開されるだけでは不十分

としています。

大阪大学は12月21日、現在停止状態であるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの積極的勧奨が今後再開された場合に直面する課題への対応策を提言としてまとめ、発表しました。

この研究成果は、英科学誌「Lancet Oncology」2018年19巻に掲載されたものです。

HPVワクチンの接種は、厚労省による積極的勧奨の一時差し控えによって、2013年6月以降停止されています。

HPVワクチン接種者と非接種者の比較検討

安全性については、厚労省の調査でワクチンを接種していない女子においても、接種者に見られる症状と同様の多様な症状が認められることが示されました。

また、名古屋市の調査ではワクチン接種との関連が懸念された24種類の多様な症状が、接種者と非接種者で頻度に有意な差が認められなかったことが報告されています。

HPV感染のリスクと子宮頸がん発症のリスクを減らすためには、HPVワクチンの接種が重要であり、厚労省の積極的勧奨が再開された場合には、以下の2点の課題があるといわれています。

  1. HPVワクチンの積極的勧奨一時差し控えによる子宮頸がん罹患リスク上昇の軽減
  2. 積極的勧奨が再開された場合のHPVワクチン再普及

今まで、この課題に対する対応策についての報告ありませんでした。

HPVワクチン接種の課題に対する対応策

今回、研究グループは、厚労省の積極的勧奨が再開された場合の課題とその対応策を検討して、以下の6点を提言としてまとめました。

  • ワクチン接種を見送って対象年齢を超えた女子へ接種を行うこと
  • 子宮頸がんの8-9割が予防できると考えられている9価ワクチンを導入すること
  • HPVワクチンを見送った女子と同年代の男子へ接種を行うこと
  • 子宮頸がん検診の受診勧奨等による、積極的勧奨一時差し控えによる健康被害を軽減すること
  • 行動経済学的手法を駆使した接種勧奨にてワクチンの再普及を図ること
  • メディアに正確な情報を提供すること

HPVワクチン接種についての提言

はじめの三つについては、ワクチン接種についての提言です。

HPVワクチンは、感染前に接種することで予防効果を得ることができますが、感染した状態であったとしても、HPVには100種類以上の型があるため、ワクチン接種を行うことで、感染したウイルス型以外のHPVの予防効果が期待されています。

また、現在日本で接種可能な2価ワクチンと4価ワクチンに加えて、9価のワクチンが開発されており、海外では認可され始めています。

これを用いることで、子宮頸がんの8~9割の予防が可能と考えられていることから、この9価のワクチンを日本で導入することがすすめられています。

さらに、HPVワクチンを見送った女子と同年代の男子へも接種を行うことで、HPVのリスクを減らすことが可能になるとしています。

HPVワクチンの情報・意識についての提言

最後の三つは、情報・意識についての提言です。

厚労省のHPVワクチンの積極的勧奨が再開されると同時に、子宮頸がん検診の受診を勧奨することで、子宮頸がんの早期発見につながることが期待されています。

そして、ワクチンを打つことによって得られるメリットを、行動経済学的手法を駆使して、科学的かつ効果的に発信することを挙げています。
要約するとワクチンを打つという行動を起こすことで得られる病気の予防効果による経済的な影響を発信することです。

そして、これらの情報を正確にメディアに発信することが重要であるとしています。

まとめ

この研究では、最後に

[aside type=”boader”]
HPVワクチンはいわゆる副反応報道と積極的勧奨一時差し控え継続により、接種はほぼ停止状態であり、ワクチンを接種せずに対象年齢を越えて性交渉を持ち始める女子が次々に出現している。
今後、厚労省によって積極的勧奨が再開されるだけでは不十分と言わざるを得ない。
少しでも積極的勧奨一時差し控えの負の影響を軽減する必要がある [/aside]

としています。

まだまだ理解が広まらないHPVワクチン接種について。

HPVワクチン接種の必要性については、下の記事でも記載をしています。

もっと深く知りたいという方は、ぜひご覧ください。

[kanren postid=”119″]

今後医療者側も、副反応症状に苦しむ患者に目を向けつつ正しい情報を発信することが重要です。

癌患者が増える中、抗がん剤治療も進化していますが、まず癌にならないための予防の重要性をもう一度再認識する必要があります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

子供の頬の発赤:リンゴ病の流行に注意が必要

テレビなどでも取り上げられたリンゴ病

正式には伝染性紅斑といいます。

子供のほっぺたが赤い写真が印象的ですが、原因はパルボウイルスというもの。

そしてこの病気の一番気を付けなければいけない点は、ほっぺたが赤くなった時点ではすでに感染力はほとんどないということです。

以前にご紹介した不顕性感染。

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これとは違いますが、症状が出る前が一番感染力が強いという意味では同じく注意が必要です。

さらに注意が必要なのは、妊婦さんです。

妊娠中のリンゴ病に対する抗体の保有率は20~50%程度といわれていて、妊娠中に初めて感染すると胎児に貧血や胎児水腫という思い症状をきたすことがあります。

薬剤師目線:伝染性紅斑(リンゴ病)について

先ほども記載しましたがリンゴ病とは俗称で、医学的には伝染性紅斑と言います。

紅斑というのは、皮膚が赤くなること。

伝染性とは、うつること。

感染症により、両方のほっぺたが真っ赤っかになるので、伝染性紅斑という病名になっていますが、頬(ほっぺ)がリンゴのように赤いから、リンゴ病といわれています。

伝染性紅斑(リンゴ病)の病原体

感染症であるので原因となる病原体がいます。

名前はパルボウイルスB19といいます。

この数字に意味はなく、パルボウイルスB19だけが人に病気を起こすパルボウイルスです。

B19という記号と数字は実験で使っていたサンプルの名前で、パネルBの19番目のサンプルから見つかったため、このような名前になりました。

発見されたのは1974年。詳細はこちらをご参照ください。

伝染性紅斑(リンゴ病)に子供がかかった場合

子供は比較的かかりやすいといわれていますが、多くは自然に治ります。

リンゴ病の好発年齢は4歳や5歳であり、幼稚園児から学童によく発症するといわれています。

風邪っぽい症状とともにほっぺたが真っ赤っかになることが特徴です。。

多くの場合は自然に治る軽い病気で済んでしまうことがほとんどです。

実際、パルボウイルスに対する効果的なワクチンはありません。

相手がウイルスなので、抗菌薬も効きませんし現時点では、治療薬もありません。

ほっぺが赤くなる前が感染期間で、赤いほっぺのときは他人に感染することもありません。

学校保健安全法では登校基準はありますが、ほっぺが赤くなってリンゴ病と分かったときはもう感染性はなくなっていて学校を休む必要もないので、事実上、学校保健安全法を心配する必要はありません。

ただし、この感染症は大人にも起きることがあります。

特に女性で症状がはっきりすることが多く、特徴は体のあちこちが痛くなる関節痛と、関節が腫れ上がる関節炎です。

皮膚のほうは大人でははっきりしない薄い赤みが体のいたるところに見られます。

伝染性紅斑(リンゴ病)に大人がかかった場合

高齢の女性に多い病気に、巨細胞性動脈炎という病気があります。

側頭動脈炎とも呼ばれ、熱やか頭痛などの体が痛む病気です。

これは感染症ではなく自己免疫疾患(自分の免疫機能が自分を攻撃する病気)ですが、大人で起きるパルボウイルスB19感染の症状は、この巨細胞性動脈炎の症状によく似ていることがあります。

また、このウイルス感染で、時にものすごい貧血が起きることがあります。

血液の中の赤血球が少なくなるのが貧血です。

貧血がひどくなると酸素を運ぶことができなくなり、呼吸が苦しくなります。
それに伴って心臓が普段以上に頑張って働いて少ない酸素を運ぼうと頑張るので、心不全になることもあります。

伝染性紅斑(リンゴ病)に妊婦さんがかかった場合

この病気に妊婦さんがかかり貧血を起こすと、お腹のなかの胎児の酸素が足りなくなり、胎児が心不全になったり死亡したりするリスクがあります。

冒頭でも記載しましたが、現時点では治療法も予防法も存在しません。

しかし、早期診断をして貧血の治療(輸血など)をすれば妊婦さんや胎児の生命を守ることも可能です。

妊婦さんというのは本当に感染症対策が難しく、妊娠中にかからないほうがよい感染症が他にもたくさんります。

早期診断が重要です。

まとめ

以前の不顕性感染の記事では、大人は大丈夫だが子供にかかるとよくない疾患を取り上げました。

今回は、その逆です。

子供の場合は重症化せず、大人。特に妊婦さんには危険な伝染性紅斑

インフルエンザやノロウイルスだけでなく、リンゴ病も流行しています。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

子供(小児)の感染症の流行:不顕性感染に注意が必要

インフルエンザやノロウイルスが流行してくるこの時期。

特に子供の感染症については、親はもちろん学校や地域のコミュニティでも注意が必要です。

この記事の題名にもある不顕性感染という言葉はご存知でしょうか。

不顕性感染とは、日本救急医学会では以下のように定義されています。

[aside type=”boader”]不顕性感染(ふけんせいかんせん)
細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず,感染症状を発症していない状態をいう。
一般に感染しても必ず発症するとはいえず,大部分がこの不顕性感染となる。
感染症状は抗体陽性や遅延型過敏反応などで確認される。
不顕性感染の人はしばしば保菌者(キャリア)となり,病原体を排泄し感染源となる可能性が高いので疫学上問題となる。 [/aside]

かなり難しい単語も並んでいますが、要約すると、

あるウイルスや細菌に感染していても症状がない人のことです。

大人における不顕性感染が、子供に与える影響について昨年の小児感染症学会のシンポジウムで取り上げられました。

今回は、見逃されそうな子供(小児)の感染症対策についてです。

ちなみに、冬の感染症対策については以下の記事も参照してください。

[kanren postid=”592″]

薬剤師目線:ウイルス感染症と不顕性感染者対策について

昨年、第50回日本小児感染症学会総会・学術集会が11月10~11日、福岡市内で開かれました。

10日に行われたシンポジウムで、
ウイルス不顕性感染者が存在することの認識は進んでいるが対策は不十分であること。
さらに、手指衛生を含めた標準予防策やワクチン接種などの基本徹底が重要であることが発表されました。

インフルエンザウイルスの不顕性感染

インフルエンザの不顕性感染については、ある中学校での流行を例にとると、189人中100人が感染し、このうち無症状は71人で不顕性感染率は37.6%であったとのこと。

ウイルスの排泄期間が短く、ウイルス量も10分の1~100分の1と少なかったですが、感染を周囲に広げる可能性は十分あり、症状のある人だけの隔離では対策は不十分だと指摘されています。

ノロウイルスの不顕性感染

ノロウイルスの不顕性感染では、有症状者と不顕性感染者ではウイルス量の差がなく、微量でも感染するため、不顕性感染者でも注意が必要といわれています。

キャンプでは手洗い、使い捨て紙タオル、トイレを症状の有無で分ける対策で、伝播(ヒトからヒトへうつること)を84.8%減少させたとする報告もあります。

パレコウイルスの不顕性感染

パレコウイルス、正式にはヒトパレコウイルスといいますが、このウイルスでは成人の75%が不顕性感染をしているともいわれています。

感染症の症状がない人からもPCRという遺伝子を検出する検査によって、喉の奥や便からウイルスが検出されるようになり、一定の割合で不顕性感染者が存在し、流行開始や流行期間の延長に関与しているのではないか との見解が示されました。

成人に感染しても問題とならないウイルスですが、子供や特に新生児や乳児が感染すると重篤な状態に至ることもあります。

ヒトパレコウイルス(HPeV)とは

2014年にm3.comでも取り上げられた内容の一つに、

ヒトパレコウイルスに流行の兆しというものがありました。

胃腸炎や呼吸器疾患、新生児敗血症症候群との関連が取りざたされているヒトパレコウイルス(HPeV)の感染が急増しているとの調査結果が報告されていました。

この調査では、国立感染症研究所が病原性微生物検出情報として速報したものです。

この発表によると、2014 年3月と5月は新潟県新発田市でHPeV3型の感染がそれぞれ1人認めた程度であったのに対し、6月は4人、7月は同市に隣接する新潟市と長岡市で11人と増加していたというものです。

全てが生後3カ月未満の乳児(0カ月児5人、1カ月児8人、2カ月児4人)でした。

検査時の臨床診断名は敗血症で、発熱や頻脈、網状チアノーゼが目立ったといわれています。

日本国内で最近発生したHPeV3型の流行は2008年と2011年で、既にこの報告の3年前には今年の流行が予測されていました。

過去の流行は6-8月にピークを迎え、手掌や足底の紅斑を認めたとの報告が多数あったといわれています。

2014年は同じ日本海側の石川県でもHPeV3型の検出報告があり、HPeV3型の流行による患者数の増加に警戒が必要と言われていました。

そして生後3カ月未満で敗血症や髄膜脳炎を疑う患児では、HPeV3型の感染を鑑別に挙げて適切な検査を行うよう呼び掛けられていました。

小児科として重要なパレコウイルスA3

子供の感染症として重要なパレコウイルス。

主に腸管で増殖して糞口感染するものですが、 咽頭にもいるので飛沫感染もあるといわれています。

通常は無症状~軽症の呼吸器症状・胃腸炎ですが、新生児や早期乳児に敗血症や髄膜脳炎を起こす危険性があり、現時点で特異的治療法はありません。

2016年にパレコウイルスA3感染症に罹患した新生児や早期乳児の家族内の便を調べたところ、小児86%、成人36%でウイルス が検出されました。

そのうち、小児33%、成人75%が不顕性感染者だったという結果から、成人の不顕性感染が多く重要な感染源である可能性があるといわれています。

パレコウイルスへの対策

ワクチンは現時点ではなく、対策としては手指衛生と、症状がある期間における標準予防策と接触感染予防策しかないといわれています。

まとめ

あまりなじみのないパレコウイルスから身近なインフルエンザ、ノロウイルスについてまとめてみました。

特にパレコウイルスは成人では感染してもほとんど問題ないのに対し、新生児や乳児が感染すると危険があります。

なかなか聞きなれないウイルスですが、しっかりとした知識を得ることが重要です。

そして家などでできる対策としては、基本的な手洗いが中心となります。

医療関係者の中でも、

ウイルス不顕性感染者が存在することの認識は進んでいるが、対策は不十分。
手指衛生を含めた標準予防策やワクチン接種などの基本徹底が重要。

と言われています。

ご家庭でも、感染症に注意が必要なこの時期。

手指衛生の徹底をお願いします。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。