病院薬剤師の一日:TDM

病院薬剤師の業務は様々なものがあります。

前に病棟業務と調剤について説明しましたが、薬剤師は薬のプロ!

今回は薬剤師ならではの仕事、TDMについて書いていきます。

病院薬剤師が行うTDM

TDMという言葉。

初めて聞く方もいるかもしれませんが、薬学部、または薬剤師でこの言葉を知らない人はいないといっても過言ではありません。

TDMとは、

Therapeutic Drug Monitoring

の略で、日本語では治療薬物モニタリングのことです。

簡単に言うと、投与されている薬物の血中濃度を測定して、薬物動態学的な計算を用いてそれぞれの患者さんにあった投与量を設定することです。

これだけ聞いてもなんのことかわかりにくいと思うので、さらに詳しく説明します。

TDM対象薬物

世の中には様々な薬物がありますが、その全てがTDMを行う対象薬物ではありません。

そもそもTDMが必要な薬物というのは、治療で用いられる量と、毒性いわゆる副作用が発生しやすい量が極めて近いものによく使われます。

例えば点滴ではバンコマイシンやゲンタマイシンなどの抗菌薬をはじめ、喘息に使われるテオフィリンや痙攣に使われるフェニトインなどがあります。

テオフィリンはアンサングシンデレラの漫画でも喫煙との関連を取り上げていました。

TDMに必要な採血

TDMを行うためには、薬学的な知識や計算能力もある程度は必要ですが、何より患者さんの血液を採血して得られる薬物の血中濃度の情報が必要です。

最近では、インフォームドコンセント。

いわゆる治療に対する説明と同意が患者さんと医療者の間に必要なため、採血を行う際にも薬の濃度を測るために。。。

と説明を受けたことがある患者さんもいるかもしれません。

それこそがTDMに必要な薬物血中濃度のための採血なのです。

薬物でもある程度服用期間が長いものは定期的に血中濃度の採血が必要ですし、入院中など急性期における治療の効果をみるため、また副作用が出ないようにするためにある程度頻繁に行われることもあります。

もちろん1回だけの採血でも評価することは可能ですが、薬物によっては2回やそれ以上必要なものもあります。

TDMの方法

それではいよいよTDMの方法。

いわゆるやり方についてです。

TDMには薬物動態学の知識が必要です。

分布容積や半減期などといった単語に代表される用語と、実際にそれらを求める計算式です。

より詳しく知りたい方は、実例とともに解説してくれるこのサイトをご参照ください。

上記のサイトではかなり専門的すぎるため、もっとかみくだいて説明します。

TDMの計算

TDMの計算は公式のようなものも存在しますが、実際は先ほど説明した血中濃度を採血した時間帯と薬物の投与された時間の関係をもとに計算します。

それぞれTDM対象薬物には、目標血中濃度といわれる目指すべき数値が過去の研究結果から導き出されています。

その目標血中濃度にするために、いろんな計算式や計算ソフトを駆使して薬物の投与量や投与間隔(1日で何回使うか)を決めます。

ただ、何事にも裏技があるようにこのTDMについてもすべてに適応はできませんが、ある程度カバーできる裏技もあります。

TDMの裏技

難しい公式や、用語を覚えて計算することも大切ですし、世の中にあるTDM用の計算ソフトへ値を代入して評価することも重要ですが、実際現場で使われている裏技の一つが比例を用いた計算方法です。

これは、投与間隔(1日で何回その薬物を使用するか)が同じであれば血中濃度を2倍にしたければ投与量も2倍にすればいいというもの

もちろんすべてがこれで解決するわけではありませんが、投与間隔が同じであればある程度対応可能な裏技です。

詳細はぜひ質問でも受け付けていますので、サイトから直接でもTwitterからでもお問い合わせください。

TDMは薬剤師の武器

ここまで説明してきたTDM。

実際は医師でも理解している人は一握りです。

抗菌薬のTDMは広くガイドラインなどでも認知されていますが、感染症の専門家であっても詳しいTDMの内容や方法は薬剤師任せなところが大きいのが事実です。

ましてや看護師や検査技師、放射線技師などなど、多職種の中でも薬剤師が最も理解できている分野であるからこそ、武器でもあります。

薬学部で基本的な薬物動態の考え方や計算方法は習いますが、実臨床で使えてこその知識と技能なので、薬学性も頑張ってください。

TDMは薬剤師国家試験でも必須の問題

薬学部では薬物動態学以外にもさまざまな学問を習いますが、薬物動態学の問題は薬理学とともに重要な位置づけです。

薬剤師国家試験も近年かなり問題の出題形式は変更されていますが、それでも薬物動態学の問題、TDMに関する問題はほぼ毎年何かしらの形で出題されています。

それくらい重要視されている学問が薬剤師の武器にもなります。

まとめ

今回は薬剤師の知識を発揮できるTDMについて記載しました。

薬学生または薬剤師向けな内容かもしれませんが、病院薬剤師が実際に行っている業務の一つとして認識してもらえると嬉しいです。

薬学部の入学や実際の学生生活については下記の記事でも触れているので、ぜひ見てください。

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病院薬剤師の1日:病棟業務

薬剤師は薬の専門家

薬の専門家である薬剤師ですが、その専門性が求められる場面の一つとして、病院での病棟業務があります。

病棟業務とは、簡単に言えば病院内の一つの病棟に行き、そこで患者さんへの服薬指導を行なったり、医師や看護師などからの質問に答えたりします。

病棟業務の実際

病棟業務の中でも患者さんに対して行う薬剤師の仕事は、単純に出ている薬を説明するだけではありません。

場面ごとに確認することは異なるためここでは、その場面ごとに分けて説明します。

入院時

入院時に患者さんに対する薬剤師の仕事としては大きく分けて問診と持参薬確認、治療薬の説明があります。

問診

問診とは患者さんとの面談を通して、現在の病状や過去に服用したことがある薬、その中で副作用などなかったか、食べ物のアレルギーはないかなど、聞くべき項目は多岐にわたります。

内容については、医師や看護師からの問診でわかるものもあるので、全てを聞くわけではなく、多職種から得られる情報から薬剤師として確認すべき内容を中心に患者さんへ聞いていきます。

持参薬確認

現在飲んでいる薬がない場合には不要ですが、飲んでいる薬が一つでもある場合にはそれを入院時に持参してきてもらい、実際に目で見ながら患者さんに話を伺い、持参薬確認を行います。

今では、入院前に薬剤師が確認している病院もありますが、やることは同様です。

入院の目的によって、飲んでいる薬でも一時的に休む必要がある薬がないかどうか。

残っている薬から、日常しっかりと薬を服用できていたかなども確認します。

短期入院でない限りは、現在は患者さんが持参した薬は入院中服用せず、病院内で調剤したものを服用してもらうため、普段飲んでいる薬と病院内である薬を照らし合わせて、医師へ処方を依頼します。

治療薬の説明

問診と持参薬確認が終わったら、病院で行う治療で使われる薬の説明を行います。

入院目的にもよりますが、ほとんどの患者さんが薬を使うため、内服薬に限らず注射薬など使用される全ての薬の説明をします。

説明内容は、

  • 効能効果
  • 用法用量
  • 副作用
  • 服用する際に注意すべき点
  • 薬の管理方法

などについてです。

患者さんに合わせて、入院中は自己管理もしくは看護師管理になるため、それに合わせて説明内容も少し変えたりします。

入院中

入院中は、開始になった新しい薬の効果や副作用について、実際に患者さんに会いに行って、時には診察をしながら確認します。

患児さんが教えてくれる様々な情報から、実際に副作用を発見できることも少なくはないです。

また、その際にはちゃんと飲めているか、飲みづらい薬はないかなども確認します。

そして、治療期間にもよりますが退院に向けて患者さんと家族、地域の医療サービスなどとも連携しながら、退院後も薬を負担少なく服用できるように、準備を行います。

退院時

退院が決定した際には、治療内容に合わせて持ち帰る薬の調整を医師と行います。

もともと飲んでいた薬に関しても、退院時に処方して持ち帰るのか、もともとのかかりつけからもらうのかも確認をして、服薬が途切れないようにサポートします。

退院処方の日数も、次回外来まで足りるのか、退院後施設に帰る場合はどの程度の期間の退院処方が必要かも確認し、医師へ処方を依頼します。

実際の退院日には、患者さんや家族に対して退院指導を行います。

退院後服用継続が必要な薬や、もともと飲んでいた薬との関係、飲み方や管理方法が特別なものに関しては、特に注意をしながら説明を行います。

患者さんが服用している薬を管理しやすくするためのお薬手帳にも、処方内容だけでなく、入院中の副作用や服用状況なども記載して、病院外の調剤薬局と連携を取れるようにします。

患児さんの薬のトータルマネージメント

病院薬剤師の病棟業務を、患者さん中心に記載しました。

薬のことは薬剤師に!

入院前から退院後までの薬物治療に関するトータルマネージメントを、病院薬剤師は行っています。

 

病院薬剤師の1日

薬の専門家である薬剤師

薬剤師と一言で言っても、なるためにはいくつかの関門を突破しないとなれません。

大学受験、薬学部入学、薬剤師国家試験合格を経て、はれて薬剤師になります。

薬剤師になることは一つの目標かもしれませんが、ゴールではありません。

そして、薬剤師と一言で言っても仕事の仕方や業種は様々あります。

  • 病院薬剤師
  • 調剤薬局薬剤師
  • 製薬会社MR
  • 製薬会社開発、研究担当
  • 大学教員
  • 卸業者薬剤師
  • 研究所所属薬剤師
  • 公務員薬剤師

簡単にあげるだけでもかなりの数がありますが、実際にその中でやっていることや業種を細分化するとさらに多くなります。

他の仕事や業種のことはよくわからないので、ここでは病院薬剤師のことについて記載していきます。

病院薬剤師の1日

病院薬剤師の1日。

まずは平均的な平日の勤務についてお話します。

朝起床してからそれぞれの通勤経路で、病院へ。

大きな病院、小さな病院、色々ありますが、大抵の病院では朝の朝礼があります。

私の勤めている病院も朝、仕事始めの前に朝礼があります。

1日の始まりは朝礼から

朝礼では全体へのお願いや、新しい医療関係の情報の集中、ヒヤリハットやインシデントの報告があります。

また、当直がある病院とない病院がありますが、私の病院は当直があるため当直者から引き継ぎがあります。

朝礼にあまり時間をかけてはいられないため、全体的に重要な内容のみ申し送りや連絡されて、あとは各薬剤師が登録しているメーリングリストなどを使って情報を共有したりもしています。

朝礼が終わったあとは、それぞれの場所で働くことになります。

私の働いている病院では、大きく分けて調剤部門と病棟部門があります。

調剤部門は、なぜかセンター業務と言われているため、これからはセンター業務として書いていきます。

調剤部門のセンター業務

センター業務と一言で言っても、やることはたくさんあります。

分野に分けても、

  1. 内服・外用の調剤
  2. 注射調剤
  3. 製剤業務
  4. 外来化学療法での調製と説明
  5. 入院化学療法の調製
  6. 薬務といわれる薬品管理
  7. 麻薬調剤

以上の7つが、あります。

薬剤師というと調剤業務が一番知られているとは思いますが、調剤と一言で言っても色々な調剤や厳密には医薬品を混ぜたらする調製も行っています。

調剤の流れ

調剤は簡単にいうと、医薬品を患者さんごとに的確に供給することです。

薬剤師が調剤を行うためには、必ず医師の処方せんが必要になります。

医師が処方した処方せんを、薬剤師が確認。

用法用量や、それぞれの薬の相性、患者さんにとって安全に使用できるものかを確認します。

その確認業務のことを鑑査といいます。

処方せんに問題がないことが確認できたら、それぞれの薬を集めたり、計ったり、分包したりして、患者さんが使用しやすいように袋に入れて払い出します。

薬を入れる袋:薬袋

薬を入れる袋のことを、薬袋と書いて、

やくたい

と読みます。

薬袋には、その薬の効果の説明や、1日何回どんな時に使うかが記載されています。

内服や外用、注射と全てにおいて薬袋は作成して、患者さんの元や病棟の看護師のもとへ搬送されます。

製剤品の調製

センター業務の中の一つとして、製剤品の調製があります。

これは、既存の製剤に何かを混ぜたらするものと、新しく製剤を作成するものがあります。

既存の製剤に混ぜたりすることは、点滴から栄養を取るために使われるTPN(中心静脈栄養)と抗がん剤の調製があります。

それぞれ医薬品として販売されている薬品に他の薬品を溶かして入れたり、測って入れたりします。

TPNは中心静脈といった太い血管に直接薬液を点滴するため、無菌室やクリーンベンチを用いて、調製します。

逆に抗がん剤の調製は、調製する薬剤師が抗がん剤に曝露しないために、安全キャビネットというものを用いて混ぜたり溶かしたりします。

調剤部門のセンター業務の人員

今まで書いてきたような業務を、調剤部門担当の薬剤師は行います。

人員については、病床数や病院の大きさによって違いますが、最近では病棟での薬剤師業務が拡大されているため!調剤部門として1日従事する薬剤師は大体5から6人程度です。

もちろんそれでは全ての調剤を終えることはできないため、病棟部門の薬剤師がヘルプを行うなどして対応しています。

病棟部門については次回、記載します。

薬剤師の基本である調剤も、奥が深くやることはたくさんあります。

新型コロナウイルスの予防:日常生活で気を付けるべきポイント

日本国内でも感染者が増え続けている新型コロナウイルス。

拡大を防ぐためには、接触・飛沫感染予防が重要ですが、ここでは実際の日常生活で気を付けるべきポイントについて解説していきます。

新型コロナウイルスにおける日常生活での注意点

マスクは万能ではない、触れる場所と触れた後の手指衛生が重要

日本ではマスク不足が問題になっています。

もちろん、新型コロナウイルスの感染予防にマスクは重要ですがマスクだけしていれば、新型コロナウイルスにかからないわけではありません。

マスク表面にウイルスがついた場合に、その部分を触った手などで他の場所を触ったり体の一部を触った時点でウイルスは触れた部分に付着します。

そのため、マスクだけでなく手を肩以上に挙げて触れないことが重要です。

触れる時はその前に手洗いや手指衛生を必ず行いましょう。

通勤や通学時の気を付けるべきポイント

  • マスクを適切に着用する
  • 徒歩や自転車や自家用車など公共機関をなるべく避ける
  • 公共交通機関を利用するときは、車内のものに手を触れない

通勤や通学時に気を付けるべきポイントは上記の3つです。

マスクをつけていても鼻が出ていたり、隙間があると意味がありません。

そしてなるべく多数の人が利用する公共交通機関を避けることが重要です。

ただ、公共交通機関を利用しないことはなかなか難しいので、利用するときはしっかりとマスクを着用し、車内のものに手を触れない

触れた場合は、その手で他の場所や体の一部を触る前に手指衛生もしくは手洗いをすることが重要です。

職場での注意すべきポイント

  • 発熱など体調不良がある場合は、職場に行かない。
  • エレベーターに乗った時は、ボタンなどに触れた後必ず手指衛生や手洗いを行う。
  • 階段を使用して、なるべく人込みや密集する場所を避ける。
  • 部屋の出入りや移動の前後は必ず手指衛生、手洗いをする。

職場で注意すべきポイントは上記の4つです。

通学・勤前の確認が必要ですが、発熱や倦怠感などの体調不良がある場合は出勤や登校せず休むことが重要です。

エレベーターのボタンやエスカレーターの手すりなどは、不特定多数の人が触れる場所であるためなるべく触れないようにすること。
触れた場合は、必ず手指衛生や手洗いを行うことが重要です。

また、エレベーターは密閉や密集空間になるためなるべく避けて階段などを利用することも重要です。

職場での食事の時の気を付けるべきポイント

  • 食堂やレストランを利用する場合は、混雑を避けるために食事時間をずらす
  • 食事の直前にマスクを外す。食事前後には必ず手洗いを行う。
  • 料理はシェアしない

食事の際の注意すべきポイントは上記の3つです。

どうしても食堂などは密集空間になるため、なるべく食事の時間をずらすことが重要です。

また、食事の直前にマスクを外し、食事前後には必ず手洗いを行います。マスクを外す際は表面には触れず、紐の部分をもって外すことも重要です。

そして楽しい食事の時間ですが、会話は最小限にして料理をシェアすることは避けることが重要です。

帰宅時の注意すべきポイント

  • マスクを取り外してから手洗いや手指衛生を行う。
  • アルコールを含むクロス等を使用して携帯電話や鍵などの手が触れる部分を消毒する。
  • 宴会など大人数で集まらない。

帰宅時に注意すべきポイントは上記の3つです。

家に帰ったらまずはマスクを外して、手洗いや手指衛生を行います。ここでもマスクを外すときは表面には触れないように気を付けることも重要です。

また、可能であれば手がよく触れる携帯電話やスマートフォン、鍵などの手が触れる部分をアルコールを含む除菌ティッシュなどを用いて消毒します。

さらに、仕事の後は宴会やパーティーなど大人数が集まる場所に行かないことが重要です。

自宅で注意すべきポイント

  • 外出は自粛します。外出する際には必ずマスクを着用します。
  • トイレの後にはハンドソープで手洗いをする。
  • 寝室は定期的に窓を開けて換気を行う。

自宅での注意すべきポイントは上記の3つです。

まずは不要不急の外出を控えます。

トイレの後にはハンドソープで手洗いを行います。

また、寝室など長時間生活をする空間は、窓を定期的に開け換気をすることが重要です。

マスクの捨て方

  • マスクをつける前後に手指衛生や手洗いを行い、外す際は必ず紐の部分をもって外す。
  • そのままビニール袋などに包んで廃棄する。
  • ゴミ箱のとってなど、高頻度に手が触れる部分はアルコールを含むティッシュなどで消毒を行う。

最後に最も重要なマスクの着脱の際に気を付けるべきポイントは上記の3つです。

マスクをつける前も外す際も必ず手指衛生や手洗いを行います。

特に外す際は、マスクの表面にウイルスが付着している可能性があるため、表面に触れないように外し、廃棄後必ず手指衛生や手洗いを行います。

また、ごみ箱も不潔になるため可能であれば消毒を行うことが重要です。

コロナウイルスは世界で拡散を続けています。

自宅での自粛はもちろん大切ですが、自粛とともに各ポイントに気を付けた感染対策が重要です。

 

新型コロナウイルスの特徴と対応・対策

中国の武漢市から発症した新型コロナウイルス

ここでは、現時点(2020/2/15)でわかっている新型コロナウイルスの特徴とそれに対する対応や対策について書いています。

新型コロナウイルスの特徴と対策・対応方法について

どんどん新しい情報がアップデートされている段階ですが、すでに日本の市中でもコロナウイルスに感染する危険性が高くなってきた今、やるべきことと注意すべきことをまとめました。

現時点で感染が確認されている人数は以下の通りです。(2/13時点)

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日本:251人

世界:46997人

[/aside]

新型コロナウイルス:COVID-19

新型コロナウイルスは別名COVID-19(コビット19)と呼ばれるようになりました。

2月1日に感染症法に基づく指定感染症と検疫法の検疫感染症に指定されました。

このように指定されると、疑わしい患者や確定患者に対する入院措置や医療にかかる費用が公費負担となり、検疫における診察・検査が可能となるため、国内のサーベイランスや医療体制もだいぶ変わりました。

サーベイランスに関して、それまで運用されていた疑似症サーベイランスと異なるのは、

  1. 届け出基準を「武漢市への渡航歴・居住歴」から「流行地域への渡航歴・居住歴」(2月6日時点では湖北省)に変更した
  2. 軽症例による持ち込みを想定し、軽症例との接触歴も要件に入れ
  3. COVID-19の鑑別が必要と考えられた重症感染症患者であれば渡航歴にかかわらず疑似症患者としての届け出が可能になった

の3点です。

医療体制に関しては、厚労省が都道府県に「帰国者・接触者外来」設置を要請し、疑い例が確実に、診療体制の整った医療機関を受診できるよう、体制が整備されました。

新型コロナウイルスの症状や臨床的特徴

  • 患者の年齢中央値は34歳(25〜75パーセンタイル:34〜48歳)、2例が小児(2歳および15歳)で、10例(77%)が男性だった。
  • 12例は武漢を訪れた家族(両親と息子)や、2019-nCoVの流行発生後に武漢を訪れた小児(2歳)の祖父母などで、1例は武漢との関連が不明でした。
  • 12例は入院前から発熱(平均1.6日)が認められた。
  • 症状は、咳嗽(46.2%)、上気道うっ血(61.5%)、筋肉痛(23.1%)、頭痛(23.1%)などでした。
  • 専門病院に移送されるまで(平均2日)に呼吸補助を必要とする患者はいなかった。
  • 最年少患者(2歳)は発熱が1週間断続的に続き、2019-nCoV診断前の13日間、咳が持続していた。CRPなどの炎症マーカーが上昇し、リンパ球数がわずかに上昇していた。
  • 4例が胸部レントゲン、9例が胸部CT検査を実施した。5枚の画像で浸潤影も瘢痕像も認められなかった。胸部レントゲン写真の1枚で、左下肺に陰影が散在していた。6例で、右肺または両肺にスリガラス状陰影が認められた。
  • 2月4日時点ですべての患者が回復したが、12例はまだ病院で隔離されていた。

詳細はJAMAのホームページから参照できます。

新型コロナウイルスへの医療機関の対応方法

一般の病院などの医療機関や高齢者施設などへの対応方法については、環境感染学会がまとめたガイドがわかりやすく記載されています。

このガイドは、今回の新型コロナウイルスが拡大した場合の国内の医療現場の混乱を防ぎ、適切な対応が取られることを目的に作成されました。

しかし、このガイドの内容はあくまでも1つの目安であり、各施設の状況に応じ具体的な対応を決めることが重要と言われています。

このガイドは

  1. ウイルスの特徴
  2. 臨床的特徴
  3. 診断
  4. 治療・予防
  5. 感染対策
  6. 国内における患者の診療体制
  7. 法律上の規定
  8. 相談窓口、問い合わせ先
  9. 参考文献、情報

以上の項目に分かれて記載されています。

詳細は環境感染学会のPDFをご参照ください。

この内容は随時アップデートされていく予定です。

漢方や薬膳を使って女性の健康をサポート

女性の健康をサポートする方法はさまざまありますが、漢方ハーブ薬膳などに日ごろから注目している女性は少なくないと思います。

薬草やハーブは女性の関心が高い一方で、健康被害の報告などもあり誤解されている部分もあります。

また、危険ドラッグなどの脱法ハーブと同じようなイメージを持たれることも多く、正しい知識の発信が必要です。

今回は、薬剤師の立場から女性の健康をサポートするために役立つ情報を記載していきます。

漢方の服用方法としては、食前が多くその理由や飲み方に関しては、こちらの記事を参照ください。

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漢方薬のエビデンス(治療の根拠)

もともと漢方は中国4000年の歴史などと言われたり、根拠となるものがあまりないというイメージがあると思います。

それでも最近は、日本東洋医学会から漢方治療エビデンスレポートが発表され、レベルの高い報告が積み重ねられています。

述語のイレウス(腸重積)の防止によく使用される、大建中湯はエビデンスに基づく漢方処方の一つです。

さらに大建中湯は多くの検討がされていて、大腸がん術後の投与で入院日数を減らし、医療費削減効果も認められています。

大腸がんだけでなく、女性の代表的ながんである乳がんでも十全大補湯はがん化学療法とホルモン療法との併用で、生存率が改善したという報告もあります。

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がんの治療に使用する注射薬(化学療法)による倦怠感や悪心、手足症候群にも漢方薬が有効とされていて、さらに今ではがんの支持療法に使われることもあります。

女性によく使われる漢方

病院内だけでなく、在宅やクリニックでも西洋薬と一緒に処方されることが多くなってきた漢方薬。

緩和ケアの分野では、芍薬甘草湯牛車腎気丸などが使われています。

鎮痛薬は腎臓に負担がかかるものもあり、漢方薬を使用することで腎機能が改善したという報告もあります。

漢方薬は痛みを取る効果だけでなく、痛み以外の症状も含めてしっかりと選ぶと痛み以外の不快な身体や精神状態を和らげて、生活の質を上げることもできます。

よく月経痛や更年期障害で使われる、

  • 当帰芍薬散
  • 桂枝茯苓丸
  • 加味逍遙散

これらの漢方はどれも月経痛と更年期障害に効果がありますが、それ以外の不快な状態に合わせて選ぶ必要があります。

そして、漢方薬の利点の一つとして、処方せんなしでもドラックストアなどて購入することができます。

漢方専門の薬局では、相談内容や症状に応じた漢方薬を提案してくれるところもあります。

更年期はがんの好発年齢でもあります。

漢方の相談から定期検診を勧められて、初期の段階でがんが見つかる、なんてこともあるかもしれません。

漢方に含まれる生薬ついて

婦人科でよく使われる、当帰芍薬散や十全大補湯の中には芍薬という生薬が含まれています。

この芍薬には、鎮痛・鎮痙・鎮静・抗炎症作用があります。

また、桂枝茯苓丸に含まれる生薬である桂枝には、血管拡張・抗炎症・散寒・鎮痛作用があり、生理痛や冷え性などの冷感がある人に効果があります。

同じように体を温める作用のある生姜は、漢方としてだけでなく食べ物として日頃から家庭薬膳として活用すると冷え性のある女性に効果的です。

薬膳:体質や目的に合わせた生薬や食べ物を使った健康料理

薬膳は、中国の伝統医学のもとに病気の予防と治療、健康増進、老化の防止を目的に季節や体質に合わせた生薬や食べ物を使って作られた健康料理のことです。

薬膳の中には、薬食同源という言葉があります。

こらは薬と食べ物がどちらも同じ健康を守る源であることを意味しています。

薬膳の根幹は中国にありますが、気候や風土は日本とは異なります。

そして、日本でも季節や地域によって気候風土が違うため中国の薬膳をそのまま日本に取り入れることが必ずしも正解ではありません。

薬膳の中で一番大切な考え方は、身土不二というものです。

いわゆる地産地消、

つまり地域で育ったものを食べることが体に良く、地域の気候風土に合った食事は健康を支える薬になるという考え方です。

この考え方は現代の家庭医学の参考にもなります。

薬膳の食性:食べ方の性質

五味

薬膳の考え方には五味という食べ物の区分があります。

  1. しおからい

この五つの味を含む食事は、五臓の体全体を養い、塩味に偏らない減塩食であり、甘味にも偏らない健康料理になります。

五性

五味以外にも食べ物の性質は、

に分類されます。

寒い冬は温熱性のネギや生姜、シナモン、南瓜、八角、ナツメ、酢などが勧められ、冷え性の女性の健康管理に役立ちます。

 

ロタワクチン定期接種への道:費用対効果の理由で値下げ

病気の予防として、重要なワクチン接種

ワクチン自体は20を超えるものが日本でも使えますが、定期接種となっているものはごく僅かです。

先進国の中でもワクチンに関しては日本は遅れていて、海外では国が費用を補助して当たり前に行えているワクチン接種が、少ししかできません。

これをワクチンギャップといいます。

それでも少しずつ日本でも定期接種のワクチンが増えてきています。

最近ではB型肝炎ワクチンが定期接種になりました。

そして、今度はロタワクチンが定期接種に向けて動き出したようです。

ロタワクチン定期接種化に向けて

厚労省は費用対効果を理由に、ロタワクチンの値下げを進める方針を示しました。

厚生科学審議会予防接種基本方針部会の中にあるワクチン評価に関する小委員会で、ロタウイルスワクチンの定期接種化に向けて、製薬企業のグラクソ・スミスクラインとMSDに希望小売価格の値下げを打診する方針を示しました。

ロタワクチンをお子さんに接種した方は分かると思いますが、ロタリックスやロタテックで接種の回数は違うものの、合計で約3万円弱かかります。

ちなみにロタワクチンは経口ワクチンであるため、赤ちゃんが泣いて吐き出したなんてことがあると言葉も出ません。。

私自身もなんとか飲み込んでくれと、子供を見つめていた記憶があります。

ロタワクチンの値下げ

この委員会での取りまとめでは、ロタウイルスワクチンの接種には現時点で約3万円が必要ですが、少なくとも4000円程度低下すれば費用対効果がよくなると指摘しました。

予防接種法の対象に加えて公費を使った定期接種にするには、リスクとベネフィットの観点からは問題ないという現状はありますが、費用対効果の観点では今のままでは課題があるとの考えです。

反ワクチンの方にもここは強調したいところです。

リスクとベネフィットでは問題ない!

今回の厚労省の示した考えに対して、企業がどの程度対応可能かの見解を問う文書が近日中に送られる予定です。

製薬企業には柔軟な対応を期待したいです。

ロタワクチン:ロタリックスとロタテック

今日本で発売されているロタワクチンは、ロタリックス(1万800円、2回接種)とのロタテック(6152円、3回接種)の2種類です。

それぞれ1回あたり約3930円の接種費用がかかるとされているため、窓口の負担としてはどちらのワクチンでも総額3万円程度となります。

今回のような値下げの打診は過去にもありました。

2012年に不活化ポリオワクチンであるイモバックスの値下げをサノフィに依頼したことがあります。

このときは海外との価格差の大きさを理由とした値下げの打診でしたが、サノフィは限定的な需要などを理由に値下げに応じませんでした。

今回は、ぜひとも企業には応じてもらいたいところです。

今後は、8月に開かれる予防接種基本方針部会に今回の取りまとめが報告される予定です。

値下げに対する企業の見解も返答され次第この部会に報告され、最終的に定期接種化するかどうかが議論されます。

まだまだ時間はかかりますが、なんとか定期接種になってほしいものです。

薬学部の新設校:私立薬科大学は59校になります

  • 薬学部が6年制になる時が一番多かった新設校。

来年度の2020年はオリンピックイヤーですが、その年に新設になる薬学部が2校あります。

それぞれ特色ある大学ですので、初年度から志願者は多くなりそうな予感。

新たに認可申請された二つの大学の薬学部について記載します。

薬学部の2020年新設校

オリンピックイヤーの2020年に新たにできる薬学部は二つです。

  • 岐阜医療科大
  • 国際医療福祉大

文部科学省の大学設置・学校法人審議会によって、2020年度の開設を予定する大学・学部の認可申請に関する答申が行われました。

そこで、岐阜医療科学大国際医療福祉大が認可申請していた薬学部の設置が二つとも可と判断されました。

薬学部志願者定員割れの中での新設校

全国の私立薬科大・薬学部は現在受験者数が減っています。

薬学部のある大学の過半数が定員割れとなる一方で、さらに2020年に2校、入学定員としては220人分の枠が拡大されます。

また、薬学部以外では第一薬科大が看護学部を新設します。

薬学部以外で認可判定が可となったのは、大学設置が2校(私立2校)、学部設置が9校(公立1校、私立8校)、大学院設置が2校(私立2校)、学部・学科の収容定員増が大学17校・短大1校となっています。

岐阜医療科大学薬学部薬学科

学校法人神野学園が運営する岐阜医療科学大学。

2020年に岐阜県可児市に薬学部薬学科(入学定員100)を開設します。

薬学部のある場所は、名古屋市に移転した名城大都市情報学部の跡地を活用しています。

実際、岐阜県内には公立の岐阜薬科大がありますが、県内だけでははなく、薬学部のない長野県や、愛知県なども含む広域から学生を確保する予定です。

当初は19年度開設を計画していたが、ほかの学部で入学超過となったことで1年延期となり、2020年に開設されます。

国際医療福祉大学の薬学部

国際医療福祉大学は、栃木県大田原市のキャンパスにすでに薬学部を設けています。

今回の新設は、同じ大学の中で2カ所目となる福岡薬学部薬学科(入学定員120)というものです。

場所は、福岡県大川市に開設されます。

大川市が事業費の一部を補助しています。

福岡県内には既に九州大、福岡大、第一薬科大の3つの薬学部がありますが、いずれも福岡市内で、大川市などの福岡の南部や隣接する佐賀県には薬学部がないため、こうした地域での薬剤師不足の解消を狙ったものです。

国際医療福祉大学は、2020年に成田に新病院も開院するため、今勢いがすごいです。

将来的には新設校から卒業した薬剤師が、成田病院で働く、ということもあるかもしれません。

もちろんかなり遠方にはなりますが。

志願者獲得を目指した開設ですが、日本私立薬科大学協会が全国57の私立薬科大・薬学部を対象に、19年度の学生の充足状況をまとめたところ、過半数の29校で入学者数が定員を下回っていました。

今回の2校が加わることで全国の私立薬科大・薬学部は59校に増えることで、受験者確保はより難しくなりそうです。

第一薬科大学は看護学部を開設

都築学園グループの第一薬科大学は、薬学部ではなく看護学部看護学科(定員80人)を、福岡市に開設します。

さらに日本薬科大は埼玉県北足立郡伊奈町のキャンパスに薬学研究科薬学専攻の大学院(定員3人)をそれぞれ開設する予定です。

来年度以降の薬学部入学に向けた情報収集の一助となれば幸いです。

マスクの多様化:便利な機能で付加価値を!

インフルエンザが早くも少しずつ広がってきている今

マスクの需要が拡大しています。

マスクといえば基本的には咳などの症状が出るときに飛散を予防したり、感染症から身を守るために使います。

しかし、最近では予防などの目的以外の使い道で付加価値をつけて、売り上げが伸びているようです。

マスクをする理由、予防以外の使い道で

インフルエンザの流行はまだですが、今年のマスクの売上が新型インフルエンザが流行した2009年を上回る規模になるようです。

今までの風邪や花粉の対策とは違った、新たな活用法が今注目を集めています。

マスクの売上があがるというのは、今まではあまりいい知らせではありませんでした。

2009年の新型インフルエンザの世界的流行で、その年はマスクの売上が前年の約2倍の340億円になりました。

医療機関でも冬などで感染症の流行が激しい時は、マスクの使用頻度が上がります。

新型インフルエンザ以降、マスクの売上はいったん落ち込みましたが、またじわじわと拡大して今年の予測は370億円となっています。

マスクがファッションの一部に

予防のためにマスクをつけるのではなく、ファッションの一部にすることも増えてきました。

本来の使い方ではない用途でマスクを求める人が多くなってきたようです。

あなたの周りにも、咳症状がなく具合も悪そうでないのにマスクをしている人がいませんか?

ユニチャームが2016年に発売した小顔にみえマスクは、あご先から耳にかけてのラインを丸くすることで顔を小さく見せる効果をねらったものです。

若い女性を中心に人気です。

特に夜間コンビ二など近場に少し出かけたいとき。

化粧を落とした後でもすっぴん顔を隠す用途として使われているようです。

マスクで喉に潤いを

夏場のエアコンの効いた室内で口元やのどを乾燥から守るために使うといった、インフルエンザ流行期ではない夏に使う人も増えています。

そもそもは冬の夜などに喉が乾燥するのを防ぐために販売されたこのマスク。

記録的な猛暑となった2018年は、通常暑くてマスクなんてしたくないと思いがちですが、室内で乾燥から喉を守るために買う人が増え、よく売れていたようです。

冬だけでなく、一年を通じて着用する人が増加傾向にあります。

色付きマスクでアクセントに

色つきマスクへの需要も多くなっています。

超快適マスクのシリーズにも、スタイリッシュな印象の黒や、女性に人気のある薄いピンク色が追加されました。

見た目の良さを気にかける人に向け、アピールされています。

色付きマスクは訪日の外国人にも人気のようです。

ちなみにこんなにも街中でマスクをしている人を見かけるのは、日本だけです。

マスク文化とでもいうのでしょうか。

海外ではほとんど見ません。

マスクで紫外線対策に

日傘や帽子などを販売する芦屋ロサブランは紫外線対策の布マスクを販売。

売上はうなぎ上りのようです。

仕組みとしては日傘と同じ生地を使って紫外線を含め、完全遮光するタイプのマスクを6年前から売っています。

日常生活で受ける紫外線から肌を守ることができ、シミなどを気にする人から支持を得ています。

毎年完売で生産が追いつかないほどと言われているので、今のうちに買う必要があるかもしれません。

児童虐待を予防するために:介入から支援へ

児童虐待が近年日本でも多く問題になっています。

児童虐待の防止等に関する法律は、平成12年に深刻化する児童虐待の予防と対応のために制定されました。

古くは、昭和8年に旧児童虐待防止法が制定されています。

虐待を発見したら、まずは親子を隔離することよりも支援が大切

日本よりも約30年早く、児童虐待防止法が制定されたアメリカ。

アメリカも児童虐待対策は介入から予防重視へ変わってきました。

児童虐待を防ぐには支援が重要

児童の虐待対策には、特効薬などは存在しません

虐待死が報じられるたびに世間は胸を痛めますが、リスクがあるなら子どもを保護しないといけない。
親子を分離する介入を早くすべきだったといわれることが多いのが現状です。

アメリカも子供を保護するという介入が第一との道を進んできました。

しかしアメリカの今は予防と早期の家族支援こそ重要で効果的という教訓に行きつきました。

アメリカでの虐待への支援体制

アメリカは1980年代までに通報・調査・保護の態勢が整いました。

しかし、親元に帰れない子の中には里親家庭を何十カ所も転々とする子もいることが問題になりました。

親との分離後も子どもの人生は続くという、当たり前で重い事実への解決策がありませんでした。

90年代になると、予防や親子の再統合のための親支援が重要視され始めました。

特に低所得・初産の家庭を看護師が妊娠期~2歳に定期訪問するNFPというプログラムは、虐待が半減するなどの効果が実証されました。

NFPは、5歳まで通うHFAという家庭訪問プログラムと合わせて全米で支持され、爆発的に広がりました。

妊娠期の支援

妊娠期は、女性にとって大きな変化の時です。

そのため妊娠していないときよりも助けを必要とし、信頼感の中でケアを提供できれば人生を変える機会になります。

育児だけでなくパートナーとの関わり方、メンタル、雇用や金銭管理など、幅広い問題に関わることができます。

このような問題が悪化してから親子を分離したり、家族を丸ごと支援したりするのはタイミングが遅く、コストもかさむ上に効果が得にくく、親子も支援者にも負担が大きいです。

予防に注目した、多様な支援が大切です。

支援と税金の問題

しかし支援が必要といっても支援するためにはお金が必要です。

2010年にオバマ政権が予防の柱である家庭訪問に連邦予算をつけるまでの道のりは、とても長いものでした。

子どもの命を救うことに異論を唱える人はいなくても、ダメ親に税金を使うのはおかしい、という意見が根強くあるためです。

多くの人にとって、虐待する親は別世界の人間で虐待するような親は子どもを持たない方がいいという考えがあります。

この壁を乗り越えるためには、社会を説得するための効果の検証が必要不可欠です。

さらに虐待の原因は必ずしも親だけではなく、環境にある場合もあります。

単純に親を再教育すればよいというものではなく、頼れる人やサービスなど家庭支援の多様な資源を地域に作ることも大切です。

支援とともに介入の継続も必要

どれだけ支援の体制を確立しても育てられない親もいるため、介入の継続も必要です。

その場合は、的確にリスク判断をして分離した後、子どものために永続的な家族を見つけてあげる態勢を整えることも不可欠です。

ただ日本はアメリカとは違い、低成長の時代に入ってから虐待対策を手厚くしなければならない難しい状況です。

財源が豊富にあるならまだしも、予防や介入、家族の再統合。
どこにどれだけ予算をつけるのか、効果的な手法は何か。よく考えて進むべき局面だと思います。

日本での虐待に対する取り組み

日本でもこれまでに紹介した米国の取り組みなどを参考に、より効果的な虐待予防を目指す動きが広がっています。

赤ちゃんが泣きやまないと悩んだ親が、子どもを強く揺さぶり、重い障害や死に至らせてしまうこともあります。

現在の日本では東京医科歯科大と連携して開発・導入したタブレット型端末のアプリを母親に操作してもらい、泣きやまない時の対処法を動画も交えて伝えることが始まっています。

乳児のいる世帯への家庭訪問は、かつて国内では自治体レベルの取り組みだったが、虐待の早期発見のため、09年度施行の児童福祉法で生後4カ月までに全戸を対象に行われることになりました。

ただ、区によっては訪問の主力を担う保健師が不足し、限られた時間で親たちの状態や悩みと向き合わざるを得なくなっています。

アプリ導入で虐待のリスクを軽減

2018度から試験的に導入されたアプリがあります。

親に質問に順に答えてもらうだけで心身の状態がわかり、虐待リスクを把握する助けになるというもの。

育児方法やDVの相談先など、様々な動画や情報も見ることができ、より細やかな支援が可能になっています。

子どものころ虐待された人が大人になった時に精神障害が現れ、生活保護を受けながら見守り対象になる場合も少なくありません。

このような負の連鎖を断ち切るには、予防的な早期支援が重要です。

さらに支援を届きやすくするためなら、経験で培った直感の上にアプリのようなツールも必要なのかもしれません。

そして、最も大事なことは介入ではなく、もっと国は予防に注力することが必要です。

家庭訪問の充実に加え、それにかかわる人も増やす必要があります。